史上最高値にもかかわらず資金流出が加速するインド株投信、復活の日は近い?
新型コロナウイルス感染症のワクチンの製造拠点としてインドが注目されているが、インド経済もコロナ禍による最悪期を脱して回復しつつある。好調な経済指標を受けてインド株式市場は代表的な株価指数であるMSCIインド指数が2月に史上最高値を更新するほどに好調だ。しかし、株価の上伸にもかかわらずインド株ファンドからの資金流出が止まらない。2月の月間資金流出入金額は、インド株ファンド全体で約402億円と、2020年2月の最大流出額である約470億円に迫る勢いだった。2018年8月以降、20年6月にわずか0.66億円の資金流入になった以外は、31カ月中30カ月で資金流出が続く状況が続いている。
インドの2020年10−12月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比プラス0.4%と、7−9月期のマイナス7.3%から急回復し、経済復調を感じさせた。また、民間企業の景況感を測るPMI(購買担当者景気指数)は、2月の製造業は57.5、サービス業も55.3と、景気判断の節目とされる50を引き続き上回り、景況感の改善が続いている。インド企業の1株当たり利益成長率は、市場予想の平均で2021年にはプラス39.3%と大幅な改善が予想されてもいる。インドの株価指数が最高値を更新しているのは、インド経済の復調や企業業績の伸長を評価した動きといえる。
しかし、インド株ファンドに対する投資家の目は厳しい。2月の資金流出入の状況では、流出額ランキング(ETFを除く国内公募投信)は、74分類中で第3位の流出額になっている。第1位の国内大型グロースは、純資産総額が22兆3682億円もあって流出額が1040億円だが、インド株ファンド(「国際株式・インド・為替ヘッジなし」、為替ヘッジありのファンドはない)は、純資産総額が8822億円しかないにもかかわらず、流出額は402億円と資産残高に対する流出額の比率が異常に大きい。
インド株ファンドについて投資家が解約したくなってしまう理由は、ここ数年間のパフォーマンスが低調だったことが大きいと考えられる。「MSCIインド(配当込、円ベース)」の2020年の1年トータルリターンはプラス7.50%、3年は年率1.99%となっている。「MSCI米国(配当込、円ベース)」では1年がプラス12.88%、3年は同11.34%。「MSCI中国(配当込、円ベース)」では1年が18.12%、3年で4.90%。「MSCI日本(配当込、円ベース)」でも1年9.22%、3年3.56%だった。インドに投資しなくても、米国や中国、あるいは、自国の株式に投資した方が、よほど良い運用成績を残せたのだ。特に、3年間投資した場合の年率リターンが他の地域と比較して低い。
インド株投信は、2017年に資金流入が加速するブームがあった。2017年12月には単月で874億円の資金流入になったこともある。この当時にインド株ファンドに投資した人たちが、3年経過しても期待するほどの運用成績があげられなかったことに失望してファンドの解約に動いていると考えられる。このように見ると、現在の不人気は、期待の裏返しということができよう。インドの将来に期待して投資したにもかかわらず、期待ほどには成長しなかったのであきらめて解約してしまっているということだろう。
ただ、インドの人口が現在トップの中国を抜いて世界一になるのは2027年頃と目されている。そして、インドのGDPは2030年までに世界第3位(1位が中国、2位がアメリカ)になるとみられている。インド経済が世界で注目を高めてくるのは、これから5年先、10年先のことになる。にもかかわらず、インドは既にコロナワクチンの世界的な製造拠点として注目されているように産業の技術力は高く、電子決済やインターネットを通じたフードデリバリーの成長などデジタル経済が発展していることも知られている。
また、インド株式市場への外国人投資家の資金流入額は2020年1月からの累計で2020年8月以降にどんどん積み上がり、2021年2月時点で累計300億ドル(約3兆2700億円)を突破したというデータもある。世界の投資家は、インド株投資に前向きだ。国内のインド株ファンドへの資金流出の状況もそろそろ転換点を迎えているのかもしれない。
提供:モーニングスター社
インドの2020年10−12月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比プラス0.4%と、7−9月期のマイナス7.3%から急回復し、経済復調を感じさせた。また、民間企業の景況感を測るPMI(購買担当者景気指数)は、2月の製造業は57.5、サービス業も55.3と、景気判断の節目とされる50を引き続き上回り、景況感の改善が続いている。インド企業の1株当たり利益成長率は、市場予想の平均で2021年にはプラス39.3%と大幅な改善が予想されてもいる。インドの株価指数が最高値を更新しているのは、インド経済の復調や企業業績の伸長を評価した動きといえる。
しかし、インド株ファンドに対する投資家の目は厳しい。2月の資金流出入の状況では、流出額ランキング(ETFを除く国内公募投信)は、74分類中で第3位の流出額になっている。第1位の国内大型グロースは、純資産総額が22兆3682億円もあって流出額が1040億円だが、インド株ファンド(「国際株式・インド・為替ヘッジなし」、為替ヘッジありのファンドはない)は、純資産総額が8822億円しかないにもかかわらず、流出額は402億円と資産残高に対する流出額の比率が異常に大きい。
インド株ファンドについて投資家が解約したくなってしまう理由は、ここ数年間のパフォーマンスが低調だったことが大きいと考えられる。「MSCIインド(配当込、円ベース)」の2020年の1年トータルリターンはプラス7.50%、3年は年率1.99%となっている。「MSCI米国(配当込、円ベース)」では1年がプラス12.88%、3年は同11.34%。「MSCI中国(配当込、円ベース)」では1年が18.12%、3年で4.90%。「MSCI日本(配当込、円ベース)」でも1年9.22%、3年3.56%だった。インドに投資しなくても、米国や中国、あるいは、自国の株式に投資した方が、よほど良い運用成績を残せたのだ。特に、3年間投資した場合の年率リターンが他の地域と比較して低い。
インド株投信は、2017年に資金流入が加速するブームがあった。2017年12月には単月で874億円の資金流入になったこともある。この当時にインド株ファンドに投資した人たちが、3年経過しても期待するほどの運用成績があげられなかったことに失望してファンドの解約に動いていると考えられる。このように見ると、現在の不人気は、期待の裏返しということができよう。インドの将来に期待して投資したにもかかわらず、期待ほどには成長しなかったのであきらめて解約してしまっているということだろう。
ただ、インドの人口が現在トップの中国を抜いて世界一になるのは2027年頃と目されている。そして、インドのGDPは2030年までに世界第3位(1位が中国、2位がアメリカ)になるとみられている。インド経済が世界で注目を高めてくるのは、これから5年先、10年先のことになる。にもかかわらず、インドは既にコロナワクチンの世界的な製造拠点として注目されているように産業の技術力は高く、電子決済やインターネットを通じたフードデリバリーの成長などデジタル経済が発展していることも知られている。
また、インド株式市場への外国人投資家の資金流入額は2020年1月からの累計で2020年8月以降にどんどん積み上がり、2021年2月時点で累計300億ドル(約3兆2700億円)を突破したというデータもある。世界の投資家は、インド株投資に前向きだ。国内のインド株ファンドへの資金流出の状況もそろそろ転換点を迎えているのかもしれない。
提供:モーニングスター社