脱炭素(カーボンニュートラル)が新設ファンドの潮流、2050年の目標達成に向け技術革新に期待

 5月21日に「脱炭素関連 世界株式戦略(資産成長型)/(予想分配金提示型)」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)「UBS 気候変動関連グローバル成長株(年4回・予想分配型)」(UBSアセット・マネジメント)の新規設定があった。5月28日には「アジアGX関連株式ファンド」「グローバルGX関連株式ファンド」(いずれも三井住友DSアセットマネジメント)、6月1日には「グリーン・テクノロジー株式ファンド(為替ヘッジあり)/(為替ヘッジなし)」(三菱UFJ国際投信)の設定を控えるなど、現在の投信市場は「2050年カーボンニュートラル」をテーマに掲げたファンドの新設ラッシュだ。この中から、大型ファンドに成長するファンドが現れるか注目したい。

 「脱炭素」「クリーンエネルギー」「グリーン・テクノロジー」「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」などは、「2050年カーボンニュートラル(温暖化ガス排出の実質ゼロ)」という国際的な目標を達成するために関連する様々な産業やテクノロジーを意味している。2050年カーボンニュートラルについては、国内では2020年10月に菅首相が国会の所信表明演説で表明し、米国のバイデン大統領も2021年1月に大統領に就任すると早々にパリ協定へ復帰する大統領令に署名し「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。

 経済産業省資源エネルギー庁のまとめでは、2021年4月末時点で世界125カ国・1地域が「2050年カーボンニュートラル」を表明している。さらに、中国は2020年9月に「2060年カーボンニュートラル」を目指すと表明していて、2060年までに、世界のCO2排出量の3分の2(2017年実績)の温暖化ガスの排出が止まる計算だ。

 カーボンニュートラルを実現するために、様々な取り組みが期待されている。日本では「グリーン成長戦略『実行計画』の14分野」をピックアップしている。エネルギー関連産業として(1)洋上風力(2)燃料アンモニア(3)水素(4)原子力を、輸送・製造関連産業として(5)自動車・蓄電池(6)半導体・情報通信(7)船舶(8)物流・人流・土木インフラ(9)食料・農林水産業(10)航空機(11)カーボンリサイクルを、家庭・オフィス関連産業として(12)住宅・建築物/次世代型太陽光(13)資源循環(14)ライフスタイルを選んでいる。関連産業が幅広く、かつ、現在の技術だけでは2050年の目標には届かないといわれ、何らかの技術革新が期待され、投資も積極的に行われる見通しだ。

 投信業界では昨年までは、「ESG(環境・社会・企業統治)」、または、「SDGs(持続可能な開発目標)」が大きなテーマとして意識され、関連ファンドの設定も活発に行われてきた。その中で、2020年7月に設定されたアセットマネジメントOneの「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)<愛称:未来の世界(ESG)>」は残高が1兆円を超える巨大ファンドに成長した。

 脱炭素に焦点をあてたファンドとしては、2020年の新規設定では、2月設定の「クリーンテック株式&グリーンボンド(資産成長)/(予想分配金)」(大和アセットマネジメント)、7月設定の「クリーンテック株式ファンド(資産成長型)」(大和)くらいだった。2021年になると状況は大きく変わり、3月に森林関連に投資する「iTrustティンバー」(ピクテ投信投資顧問)「グローバルX クリーンテックESG−日本株式」(Global X Japan)、4月に「アムンディ 環境・気候変動対策ファンド」(アムンディ・ジャパン)「ニッセイ気候変動関連グローバル株式(予想分配型)/(資産成長型)」(ニッセイアセットマネジメント)が設定され、5月になって「eMAXIS Neoクリーンテック」「eMAXIS Neo電気自動車」(いずれも三菱UFJ国際投信)が設定され、現在の状況にいたっている。

 設定日の純資産総額としては、「アムンディ 環境・気候変動対策ファンド」の60.29億円が最大で、同ファンドは現在、純資産総額が210億円を突破している。また、昨年7月設定の「クリーンテック株式ファンド(資産成長型)」が147億円超に成長してきている。現在のところは、まだまだ、成長途上といった水準にとどまっている。今後に期待したい。
提供:モーニングスター社
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