米国株式は「割安とは言えない」、割安さなら「米国以外の先進国や新興国の小型株」

 資産運用大手ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSgA)のダン・ファーリー氏が9月16日、17日にシカゴで開催された米モーニングスターの「ETF・インベスト・カンファレンス」で講演し、米国株式の現状と見通し、海外の株式を含めた有望な投資対象について語った。同氏はSSgAの「マルチ・アセット・クラス・ソリューション」チームのグローバル・ヘッド・オブ・インベストメントとして、1900億ドル(約15兆9000億円)以上の資産の運用にかかわっている。

 ファーリー氏は今後1年から1年半の株式のリターンを1ケタ(%)台半ばから後半、投資適格債のリターンを1ケタ台前半と予想している。デフレ懸念で米国債の利回りは歴史的に低い水準まで押し下げられ、企業が保有する現金残高は過去50年間で最高の水準に達したとされるが、株式には上昇余地があるとみている。

 現金に比べて株式や社債は利回りの面で魅力があると分析。特に配当利回りに注目している。企業は積み上げたキャッシュを増配やM&A(企業の合併・買収)に使うと予想。無配だった企業が配当の支払いを始める可能性があるといい、シスコシステムズが最近、初の配当実施計画を発表したことに言及した。M&Aでは中型株や小型株がターゲットになる可能性が高いと述べた。

<「バリュー・トラップ」に陥らないよう注意>

 一方、米国株式は割高感がなくなってきているものの、「割安とは言えない」と指摘。景気の先行きが不透明なため、前四半期(4−6月期)の利益に基づいて将来の業績を予想してはならないとアドバイスした。株価の下落だけをみて割安株と誤って判断してしまう「バリュー・トラップ」に陥らないように注意すべきだと警鐘を鳴らした。

 同氏は長い間、割安さの面で米国の小型株に魅力はないとみていたが、米国以外の先進国や新興国の小型株については話がかなり異なるという。米国以外の小型株の中には予想PER(株価収益率)が低く、高いリターンが見込める銘柄があるほか、新興国株式の予想PERは過去平均に比べて割安な水準に近づきつつあると説明した。

<人口動態に着目なら新興国の小型株が有望>

 ファーリー氏によると、SSgAは現在、配当収入と利子収入を非常に重視している。株式では配当面で妙味がある大型株、債券では投資適格債とハイイールド債への投資比率を増やした。新興国市場への投資は気をつけるべき点があると説明。新興国の人口動態に注目した投資家は多国籍企業の株式が多く組み入れられたETF(上場投資信託)を購入することが多いが、人口動態に着目するのであれば新興国の小型株の方が魅力的だという。REIT(不動産投資信託)は各国の景気回復が力強いものでないうちはオフィスや店舗の空室リスクがあるため、投資比率を下げている。

<「炭鉱のカナリア」の役割果たす指標をチェック>

 ファーリー氏は、今後注意すべき4つの点があるとした。最初に、欧州諸国の財政危機について投資家は今もなお危機の再燃をリスクとして意識していると述べた。また、一部の国についてはインフレと中央銀行の行動にも警戒する必要があるとした。米国および欧州ではインフレのリスクは低く、金融政策は緩和的だが、豪州やインド、中国はインフレ抑制のために金融引き締めに動いている。

 同氏は規制強化の動きも重要とみている。いくつかの調査で企業のCEO(最高経営責任者)が最も懸念しているのは規制強化であることが明らかになった。規制をめぐる不確実性が意思決定を妨げる要因になっている。最後に挙げたポイントは先進国の構造的な財政赤字の問題。増税により成長率は低下することが見込まれる。足元の金価格の上昇は、各国の緊縮財政が十分ではないとマーケットが判断していることの表れだとしている。

 これらのリスク要因は今後1年から1年半かけて注視すべきものだが、短期的には投資家の行動がリスク回避的になっているかどうかを示すいくつかの指標をチェックした方がよいと指摘した。例えば、米財務省短期証券とロンドン銀行間市場金利(LIBOR)の金利差である「TEDスプレッド」は足元で比較的落ち着いているが、危機をいち早く察知する「炭鉱のカナリア」のような役割を果たすので要注目だという。
提供:モーニングスター社
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