<J−REIT>「J−REIT・リサーチ・オープン」、信託銀行系のノウハウで見たREITの価値(下)
「J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」<2005011701>(★★★★、評価基準日=2月29日)の運用を担当する三井住友トラスト・アセットマネジメント リサーチ運用部リート室 チーフファンドマネジャーの太田素資氏に、ファンド運用の実際と今後の運用の見通しについて聞いた。
(上)からつづく
――ファンドの運用方針は?
投資スタイルとしては、評価価値よりも割安なREITにウエートを置くバリュー投資を貫いています。運用の基本方針として、安定したインカムゲインの獲得を掲げていることも背景ですが、まずは、保有物件のクオリティーをチェックし、その上で割安銘柄に投資することによってより良いパフォーマンスをめざしています。
ポートフォリオの組み入れ上位銘柄に住宅REITが並ぶということにもバリュー投資に徹している姿勢が一部表れています。ホテルやオフィスなどグロース銘柄が活躍する局面では、東証REIT指数にパフォーマンスで劣後することもありますが、2014年のように指数が約25%上昇した時は割安銘柄が勝ち、長期でみるとバリュー投資に軍配が上がると思います。
――当面のJ−REIT市場の見通しは?
J−REITの上昇余地は大きいと思います。ここ数年で、随分値上がりしてきたことも事実ですが、日銀がマイナス金利政策を取り入れ、「金利ゼロ」の制約を取り払った金融緩和の流れに逆らう必要はないと思います。すでに国債利回りは10年物でもマイナスになっています。10年以上の期間のある債券は生命保険会社くらいしか買えないのですが、その生保ですら、国債で運用することが困難になってきています。円建てで利回りを求めるのであれば、社債、株式の高配当銘柄、あるいは、J−REITしかないのです。社債は発行量が減少しています。そうなると、投資する先は自ずと株式かJ−REITになり、業績予想の確度という点を考えればJ−REITに軍配があがると思います。
J−REITの配当予想は、賃貸借契約期間が2−3年で交わされているために読みやすいという特徴があります。株式の配当は業績が確定しないと見えてきませんが、J−REITは2年先の配当予想がほぼ予測できます。それによると、2016年、2017年ともに約5%の増益の見通しです。ここに賃料の上昇という追い風と、マイナス金利導入による資金借り入れコストの低減という効果がさらに見込めますので、増益率が一段と高まる期待があります。
当面、東証REIT指数で2200ポイントをめざす展開になると考えています。J−REITのリスクプレミアムは現在3.3%程度ですが、リーマン・ショック前は1.7%程度でした。現在の業績水準でリスクプレミアムが2.7%の水準が、東証REIT指数で2200ポイントとなり、その水準でも米国REITより割安です。
また、J−REITのNAV倍率(1口当たりの純資産総額とREIT価格の比率)は現在1.3倍程度で、海外と比較して高いといわれますが、2005−07年には1.5−1.6倍でした。日本の鑑定価格はコンサバティブな評価をしますので、実勢を後追いする性格がありNAV倍率が高めに出ます。現在の不動産価格で計算したNAV倍率1.6倍程度が東証REIT指数の2200ポイントです。不動産価格が上昇トレンドにあるため、現在の価格で計算したNAV倍率1.6倍が高い目標だとはいえないと思います。
J−REITの市場規模が時価総額11兆円超という水準ですから、株式などと比較して十分に大きいとはいえません。リスクオフ等で市場心理が冷え込むと、下押す価格変動リスクは抱えています。ただ、現状の不動産ファンダメンタルズの良さと、日本の金融市場の状況を考えると、円建てで高利回りのJ−REIT市場が依然として魅力的な資産クラスであると思います。
提供:モーニングスター社
(上)からつづく
――ファンドの運用方針は?
投資スタイルとしては、評価価値よりも割安なREITにウエートを置くバリュー投資を貫いています。運用の基本方針として、安定したインカムゲインの獲得を掲げていることも背景ですが、まずは、保有物件のクオリティーをチェックし、その上で割安銘柄に投資することによってより良いパフォーマンスをめざしています。
ポートフォリオの組み入れ上位銘柄に住宅REITが並ぶということにもバリュー投資に徹している姿勢が一部表れています。ホテルやオフィスなどグロース銘柄が活躍する局面では、東証REIT指数にパフォーマンスで劣後することもありますが、2014年のように指数が約25%上昇した時は割安銘柄が勝ち、長期でみるとバリュー投資に軍配が上がると思います。
――当面のJ−REIT市場の見通しは?
J−REITの上昇余地は大きいと思います。ここ数年で、随分値上がりしてきたことも事実ですが、日銀がマイナス金利政策を取り入れ、「金利ゼロ」の制約を取り払った金融緩和の流れに逆らう必要はないと思います。すでに国債利回りは10年物でもマイナスになっています。10年以上の期間のある債券は生命保険会社くらいしか買えないのですが、その生保ですら、国債で運用することが困難になってきています。円建てで利回りを求めるのであれば、社債、株式の高配当銘柄、あるいは、J−REITしかないのです。社債は発行量が減少しています。そうなると、投資する先は自ずと株式かJ−REITになり、業績予想の確度という点を考えればJ−REITに軍配があがると思います。
J−REITの配当予想は、賃貸借契約期間が2−3年で交わされているために読みやすいという特徴があります。株式の配当は業績が確定しないと見えてきませんが、J−REITは2年先の配当予想がほぼ予測できます。それによると、2016年、2017年ともに約5%の増益の見通しです。ここに賃料の上昇という追い風と、マイナス金利導入による資金借り入れコストの低減という効果がさらに見込めますので、増益率が一段と高まる期待があります。
当面、東証REIT指数で2200ポイントをめざす展開になると考えています。J−REITのリスクプレミアムは現在3.3%程度ですが、リーマン・ショック前は1.7%程度でした。現在の業績水準でリスクプレミアムが2.7%の水準が、東証REIT指数で2200ポイントとなり、その水準でも米国REITより割安です。
また、J−REITのNAV倍率(1口当たりの純資産総額とREIT価格の比率)は現在1.3倍程度で、海外と比較して高いといわれますが、2005−07年には1.5−1.6倍でした。日本の鑑定価格はコンサバティブな評価をしますので、実勢を後追いする性格がありNAV倍率が高めに出ます。現在の不動産価格で計算したNAV倍率1.6倍程度が東証REIT指数の2200ポイントです。不動産価格が上昇トレンドにあるため、現在の価格で計算したNAV倍率1.6倍が高い目標だとはいえないと思います。
J−REITの市場規模が時価総額11兆円超という水準ですから、株式などと比較して十分に大きいとはいえません。リスクオフ等で市場心理が冷え込むと、下押す価格変動リスクは抱えています。ただ、現状の不動産ファンダメンタルズの良さと、日本の金融市場の状況を考えると、円建てで高利回りのJ−REIT市場が依然として魅力的な資産クラスであると思います。
提供:モーニングスター社