<J−REIT>「J−REIT・リサーチ・オープン」、信託銀行系のノウハウで見たREITの価値(上)

 三井住友トラスト・アセットマネジメントが運用する「J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」<2005011701>(★★★★、評価基準日=2月29日)は、純資産総額が4250億円を超え、J−REITを対象としたアクティブファンドの中で最大規模を誇る。パフォーマンスは、2016年2月末現在の10年(年率)トータルリターンで6.45%と、カテゴリー平均(5.88%)を上回り、リスク(標準偏差)は20.62とカテゴリー平均(20.95%)より低く抑えている。規模だけではなく、運用の効率性においても優れた成績を残しているファンドと評価できる。

 同ファンドの運用を担当する三井住友トラスト・アセットマネジメント リサーチ運用部リート室 チーフファンドマネジャーの太田素資氏に、ファンド運用の実際と今後の運用の見通しについて聞いた。

 ――「J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」は大規模なファンドでありながら、運用の効率性においてカテゴリー平均を上回る成績を中・長期にわたって実現してきています。この成績を支える運用体制とは?

 ファンドマネジャーが不動産の実務に明るいことも大切な要素のひとつだと思います。信託銀行が不動産を取り扱う銀行ですから、わたし自身も不動産運用にかかわる実務経験を積んでいます。また、銀行が不動産への貸し出しを行う際の、不動産の価格査定も行っていました。一般の運用会社では、不動産運用に直接かかわる経験はできないと思いますが、信託銀行出身であるだけに、不動産の実務に明るいメンバーで運用体制を作ることができる強みがあります。

 REITの運用において不動産の実務を経験していることのメリットを、感じることが少なくありません。REITは不動産の証券化商品ですが、不動産の売買が行われ、不動産を担保にした資金調達(債券発行や銀行の融資など)も行われます。その過程をイメージできることは、個別J−REITの運用状況について深く理解が行き届くことにつながると思います。

 また、不動産専門のシンクタンクである三井住友トラスト基礎研究所から、J−REITの財務分析資料や各種不動産データを得ています。その専門性の高さに加え、J−REIT専門のアナリストが5名という圧倒的なリサーチ力があります。これまで10年以上にわたって情報提供を受けてきていますが、その分析力の的確さは、他社では真似ができない水準です。

 的確なデータがあり、不動産について経験を積んだ運用チームが的確な投資判断を行うことによって、長期にわたって平均を上回る成績を残せていると思います。

 ――ファンドの運用方針は?

 徹底したリサーチに基づく、バリュー運用を行っています。不動産運用の実務に携わった経験から、不動産は現地を自分で見ない限り、正しい価値判断は難しいと考えています。J−REITが購入した物件は、北海道から沖縄まで1件1件可能な限り現地に訪ねて状態を確認しています。現在、J−REITが保有する全物件の金額ベースで80%超の物件について現地調査を行っています。

 実際に、個人で住宅を購入することを考えると分かりやすいと思うのですが、図面や資料だけで購入を決める人はいません。現地に行き、周辺を歩いて立地を確認すると思います。住宅REITが取得したマンションであれば、近隣の駅から物件までに、どのような施設があるのか、周辺の環境はどうかなどを確認します。オフィスビルであれば、エントランスやトイレのグレードのチェックは欠かせません。商業施設であれば、テナント構成、駐車場の車の出入りのしやすさなどをチェックします。

 私はファンドを設定した2005年1月から担当し、設定当初から物件の現地調査を続けています。過去11年の変化が分かります。そのことによって、個々の物件の競争力の変化を把握できます。この足で稼いだ情報が、小さいながらも確実なパフォーマンスの差になって長期的には表れてくる、と信じています。

 (下)へつづく
提供:モーニングスター社
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