<J−REIT>内部成長力で格差が出る局面、配当成長率で銘柄を厳しく選別=みずほ投信投資顧問(下)

 「みずほ J−REITファンド」<2003121803>(★★★★、評価基準日=2月29日)の特徴や当面の運用方針について、みずほ投信投資顧問 株式運用部 REITチーム チーフファンドマネジャーの伊藤昌哉氏に聞いた。

 (上)からつづく

 ――「みずほ J−REITファンド」は、2003年12月の設定で、設定来(年率)、過去10年(年率)、5年(年率)、3年(年率)、1年、どの期間をとってもカテゴリー平均を上回るトータルリターンを記録し、リスクもカテゴリー平均を下回るなど大変優れた運用成績を残しています。どのような運用をしているのですか?

 REIT運用チームは3人の体制で上場53銘柄を分担し、すべての銘柄に主担当をつけ、責任を明確にしています。担当する銘柄には年2回の決算を中心に合計6回程度は経営陣との面談の機会を設け、物件の取得や資金調達などの発表があると、その都度内容をチェックし、細かい点でも不明点があれば直接内容を確認することにしています。昨年度は合計385回、コンタクトをとりました。

 また、不動産会社に対しても、当社の不動産株のアナリストとともに調査活動を実施し、J−REITのスポンサー企業の状況も確認するなど、多面的に収益の方向性を見極める努力を続けています。

 個別銘柄の投資判断で重要視しているのは、配当の成長性です。J−REITの投資口価格(時価)を1口当たりNAV(純資産価値)で割ったNAV倍率で割安・割高を判断するという手法もありますが、当ファンドにおいてはNAV倍率などを使ったバリュー投資よりも、配当成長率がどの程度伸びるのかという配当グロースを重視して銘柄選定を行っています。

 ――当面のJ−REITの運用環境を、どのように見ていますか?

 オフィスの市況が改善し、オフィス系のREITには成長期待が高まっています。また、ホテルの客単価も上昇傾向にありますので、ホテル系のREITの収益環境も良好です。セクターとして注目できるのは、オフィスやホテルといえます。

 昨年までは、主としてREITは物件を取得して規模の拡大をめざす「外部成長」を指向していましたが、今年は既存物件の賃料水準の引き上げなどにより収益率を高める「内部成長」力が問われる局面になったとみています。物件の新規取得については、物件価格が上がっていることを考え、取得した物件の価格や調達した資金の状況など、個々の案件ごとに適正な条件で取得できているかどうかをこれまで以上にきめ細かくチェックしていく必要があります。

 J−REIT全体の収益環境は良い状況が続くと思いますが、個別REITの収益力について的確に判断できたところがリターンを獲得できる、個別銘柄の選別力が問われる1年になってくると感じています。マイナス金利という経験したことのない環境下にあって、各REITがどのような投資戦略をとり、それが収益にどのように結びついてくるのか。一つひとつの案件をシビアにチェックし、これまで同様に市場平均を上回るリターンが残せるように努めていきたいと思います。
提供:モーニングスター社
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