ESGは投資リターンの向上に寄与―NNインベストメント・パートナーズがECCEと共同研究で明らかに
NNインベストメント・パートナーズは、オランダのマーストリヒト大学にある研究機関、欧州企業エンゲージメント研究センター(ECCE)と共同で、株式の投資判断における環境・社会・ガバナンス(ESG)ファクターの重要性に関する報告書をまとめた。日本でもESG投資に関心が高まっているが、投資家の間では「ESGを重視した投資はリターンの犠牲を伴う」という認識があることも事実。この疑念に対し、今回の報告書は「ESGファクターと経済的リターンの両立は可能である」という結論を導き出している。調査報告について、NNインベストメント・パートナーズ株式会社のリテール営業部長、松岡博敏氏に聞いた。
共同研究は、2010年1月から2014年9月を対象期間として、さまざまなESG基準を用いて構築されたグローバル株式ポートフォリオのパフォーマンスを評価した。従来の研究はおもに米国株式のみを対象としていることと比較し、調査対象が大幅に広がった。先進国の3000社以上を分析対象としている。また、今回は企業規模や投資スタイル(バリュー、グロース、モメンタム)、産業セクターのバイアスに対する調整を行い、実務に近いポートフォリオを分析した。
さらに、これまでは、ESGスコアの高い銘柄を選択し、場合によってはスコアが低い銘柄をショートすることで基本的なポートフォリオを構築し比較していたが、新しい試みとして今回は、ESGスコアの変化(モメンタム)を考慮した分析も行った。そして、サスティナリティクス社やガバナンス・メトリクス・インターナショナル(GMI)という第三者が提供するデータを使ったことなども調査の特徴だ。
分析の結果、大きくは2点が確認されたとしている。1つは、「ESGスコアの水準が高い銘柄より、ESGスコアの改善が進んでいる銘柄の方が、将来のリターンが高い傾向がある」。また、「ESGに関して物議を醸す行為が見られる企業への投資を避けることで、ポートフォリオのリスク/リターンが改善する」という点だ。
まず、ESGスコアの水準が高い銘柄で構成されたポートフォリオは、ESGスコアが低い銘柄で構成されたポートフォリオをアンダーパフォームしたが、ESGスコアの水準が中位の銘柄群の中で、ESGスコアの改善のモメンタムが強い銘柄で構成したポートフォリオのパフォーマンスは、モメンタムの弱い銘柄群を最もアウトパフォームすることが明らかになった。このことによって、ESGスコアの水準と変化の両方を検討することが効果的ということがわかった。
そして、ESGスコアを要因別に環境(E)社会(S)ガバナンス(G)で分けてパフォーマンスへの影響度を調べると、ガバナンススコアの水準と変化の両方を用いて構築されたポートフォリオでシャープレシオが一段と高くなるという傾向が明らかだった。
一方、サスティナリティクス社が特定しているESGに関して物議を醸す行為について、行為の程度を「5(深刻)」「4(高度)」など5段階で評価し、「5」と「4」の物議を醸す行為がある企業を除外した場合はパフォーマンスが改善し、「5」から「3(有意)」までの3段階に物議を醸す行為がある企業を除外した場合、一段とリスク・リターンが向上するという結果が得られた。
松岡氏は、「NNグループはESG先進国といえるオランダを本拠とする金融グループとして、ESGについては踏み込んだ対応をしている。調査アナリストによるレポートには、財務分析に加え、全ての企業・債券調査にESG評価項目が盛り込まれている。オランダでは、今回の共同研究で得た知見も、運用プロセスに取り入れてパフォーマンスの向上に役立ていく考えだ。物議を醸す行為のある企業について投資対象から除外することは、すでに当グループの運用プロセスに組み込まれていることの有効性が示された形だが、ESGスコアの水準と変化の両方を使って銘柄選定に役立てることについても実践が進められている」と語っている。
日本の投資家に向けて松岡氏は、「NISAやジュニアNISAなど、中・長期の投資口座が浸透したことで、持続的な成長の条件の1つといえるESGを投資判断の基準に組み入れていくことは、ますます重要になる。当社は、日本におけるESG概念の浸透をめざし、積極的に情報発信していきたい」としている。また、さまざまな投資手法が開発されている責任投資について、ESGファクターを考慮した投資に加え、環境と人々の健康・生活水準の向上に貢献する企業に投資する「インパクト投資」の設定なども計画しているという。商品提供の面でも、ESG投資を始めとした責任投資のすそ野拡大を推し進める考えだ。
提供:モーニングスター社
共同研究は、2010年1月から2014年9月を対象期間として、さまざまなESG基準を用いて構築されたグローバル株式ポートフォリオのパフォーマンスを評価した。従来の研究はおもに米国株式のみを対象としていることと比較し、調査対象が大幅に広がった。先進国の3000社以上を分析対象としている。また、今回は企業規模や投資スタイル(バリュー、グロース、モメンタム)、産業セクターのバイアスに対する調整を行い、実務に近いポートフォリオを分析した。
さらに、これまでは、ESGスコアの高い銘柄を選択し、場合によってはスコアが低い銘柄をショートすることで基本的なポートフォリオを構築し比較していたが、新しい試みとして今回は、ESGスコアの変化(モメンタム)を考慮した分析も行った。そして、サスティナリティクス社やガバナンス・メトリクス・インターナショナル(GMI)という第三者が提供するデータを使ったことなども調査の特徴だ。
分析の結果、大きくは2点が確認されたとしている。1つは、「ESGスコアの水準が高い銘柄より、ESGスコアの改善が進んでいる銘柄の方が、将来のリターンが高い傾向がある」。また、「ESGに関して物議を醸す行為が見られる企業への投資を避けることで、ポートフォリオのリスク/リターンが改善する」という点だ。
まず、ESGスコアの水準が高い銘柄で構成されたポートフォリオは、ESGスコアが低い銘柄で構成されたポートフォリオをアンダーパフォームしたが、ESGスコアの水準が中位の銘柄群の中で、ESGスコアの改善のモメンタムが強い銘柄で構成したポートフォリオのパフォーマンスは、モメンタムの弱い銘柄群を最もアウトパフォームすることが明らかになった。このことによって、ESGスコアの水準と変化の両方を検討することが効果的ということがわかった。
そして、ESGスコアを要因別に環境(E)社会(S)ガバナンス(G)で分けてパフォーマンスへの影響度を調べると、ガバナンススコアの水準と変化の両方を用いて構築されたポートフォリオでシャープレシオが一段と高くなるという傾向が明らかだった。
一方、サスティナリティクス社が特定しているESGに関して物議を醸す行為について、行為の程度を「5(深刻)」「4(高度)」など5段階で評価し、「5」と「4」の物議を醸す行為がある企業を除外した場合はパフォーマンスが改善し、「5」から「3(有意)」までの3段階に物議を醸す行為がある企業を除外した場合、一段とリスク・リターンが向上するという結果が得られた。
松岡氏は、「NNグループはESG先進国といえるオランダを本拠とする金融グループとして、ESGについては踏み込んだ対応をしている。調査アナリストによるレポートには、財務分析に加え、全ての企業・債券調査にESG評価項目が盛り込まれている。オランダでは、今回の共同研究で得た知見も、運用プロセスに取り入れてパフォーマンスの向上に役立ていく考えだ。物議を醸す行為のある企業について投資対象から除外することは、すでに当グループの運用プロセスに組み込まれていることの有効性が示された形だが、ESGスコアの水準と変化の両方を使って銘柄選定に役立てることについても実践が進められている」と語っている。
日本の投資家に向けて松岡氏は、「NISAやジュニアNISAなど、中・長期の投資口座が浸透したことで、持続的な成長の条件の1つといえるESGを投資判断の基準に組み入れていくことは、ますます重要になる。当社は、日本におけるESG概念の浸透をめざし、積極的に情報発信していきたい」としている。また、さまざまな投資手法が開発されている責任投資について、ESGファクターを考慮した投資に加え、環境と人々の健康・生活水準の向上に貢献する企業に投資する「インパクト投資」の設定なども計画しているという。商品提供の面でも、ESG投資を始めとした責任投資のすそ野拡大を推し進める考えだ。
提供:モーニングスター社