2010年は特定の投資戦略組み込んだアクティブ型ETFに注目=バンガード・ジノーニ氏

 最近のETF(上場投資信託)は投資対象が従来の株式だけでなく債券やコモディティなど様々な資産クラスに広がり、分散投資のツールとして注目を集めている。「ETF先進国」である米国では09年にどのようなトレンドが顕著となったのか。このたび来日したインデックスファンド運用大手バンガード・グループ ETFプロダクト・マネジメント部門責任者のリック・ジノーニ氏にインタビューを実施。09年の米国ETF市場の動向や2010年の見通しについて聞いた。

 ――日本では国内上場ETFの本数が徐々に増え、個人投資家の間で普及しつつあるが、米国の状況はどうか。
 「米国では09年に新規上場の数が大幅に増えたほか、取引ボリュームでもETFの存在感は高まっている。米国市場における株式を含む全上場銘柄の売買代金のうちETFが占める割合は09年半ばに34%に達した(07年は23%、08年は32%)。資産残高は11月末時点で7577億ドル(約69兆3000億円)と08年末の5359億ドルから順調に増加している」

 「しかし、米国ETF市場の年初来(11月末まで)の純資金流入額は848億ドルとなり、08年1年間の純資金流入額(1754億ドル)から大きく減少した。背景には株式よりリスクが低い債券のニーズが高まり、債券を組み込んだファンドが人気になったにもかかわらず、ETF市場にその受け皿となる十分な商品がなかったことがある。投資家の資金の多くは債券を組み込んだ一般的な投資信託に向かった」

 「もっとも、ETF市場への資金流入が顕著だった3つのカテゴリーは債券、国際株式、コモディティであり、ETFでも債券型が資金を集めたことは明らかだ。バンガードでは11月に7本の新しい債券ETFを上場した。長期的な資産運用の視点から債券ETFのラインアップを拡充する必要があると判断したからだ」

 ――米国市場全体の純資金流入額が落ち込む中、バンガードのETFの状況はどうだったのか。
 「バンガードのETFの年初から11月末までの純資金流入額は251億ドルと昨年1年間と同水準を保っている。ETF市場の純資金流入額に占めるバンガードのシェアは29.6%と前年の14.3%から大幅に上昇した。バンガードのETFはエクスペンス・レシオ(日本の信託報酬にほぼ相当するもの)が低く、幅広い銘柄に分散投資を行い、ポートフォリオのコア(中心)として最適な商品だ。バンガードのシェアが拡大したのはこうした特徴がより多くの投資家に認められた結果だと考えている」

 ――2010年のETF市場についてはどのような見通しを持っているか。
 「連動指数に対して数倍の値動きをする『レバレッジ型』や指数と逆の値動きをする『インバース型』と呼ばれるETFに対して厳しい目が向けられるようになるだろう。これらのETFは個人投資家やヘッジファンドがデイトレーディングで頻繁に利用し、09年前半に多くの資金流入があった。しかし、商品性が複雑なため投資家の誤解を招きやすく、想定した以上に損失が膨らむケースが多かった。レバレッジ型やインバース型のETFを提供する運用会社は今後、投資家に対して十分な説明をすることが求められるようになるはずだ」

 「また、指数に連動するのではなく、特定の投資戦略を組み込んだ『アクティブ型』と呼ばれるETFが普及するだろう。特に、投資信託のターゲット・イヤー・ファンドのように退職時期にあわせて資産配分を変更するETFがベビーブーム世代向けにニーズが高まるとみている。株式や債券など複数の資産を1つのパッケージにしたETFとなるため、複数のETFを別々に購入する場合に比べて手数料を低く抑えられるメリットもある。401K(確定拠出年金)に適した商品と言える」
提供:モーニングスター社
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