松井証券が18年ぶりに投信販売を再開、低コストの国際分散投資を促すロボアド「投信工房」を投入

 松井証券は11月28日から投資信託の取り扱いを開始した。1998年に投信販売から撤退して以来、18年ぶりの再開となった。投信再開にあたって品ぞろえしたのは、低コストのインデックスファンドのみという独特の販売戦略を展開する。同社営業推進部 課長代理の佐々木健吾氏に聞いた。

――18年ぶりに投資信託の販売を再開した理由は?

 当社が投信販売から撤退した理由は、当時、販売額の2−3%だった販売手数料を、一律1%に引き下げると発表したところ、運用会社から商品供給がストップしたということがあったためだ。再開タイミングを図っていたが、近年になって投信販売に起こっている変化が、再開のきっかけになった。

 まず1点目はビジネス環境の変化。回転売買の禁止や顧客本位の業務運営「フィデューシャリー・デューティー」の徹底など、金融行政が消費者主体へ向かっていることがある。2点目としては、投信の低コスト化が進展したこと。ノーロード(販売手数料無料)のファンドが増え、信託報酬の水準も下がった。また、新興国やコモディティーなどさまざまな資産クラスのファンドがそろっており、低コストで資産運用を行える環境が整いつつある。

 3点目は、ロボ・アドバイザーが普及してきたこと。個人投資家はほとんどネット証券を通じて株式の売買注文を出しているが、投信は、依然として対面チャネルが使われている。それだけ、投信にはアドバイスの要素が求められていると考える。そのため、人を使わずにアドバイスを提供できる「ロボ・アドバイザー」の普及はチャンスだと考えた。

 今回の投信販売再開にあたって、具体的に意識したのは、投信の対面販売からネット販売への移行促進だ。第1弾として、ロボ・アドバイザーを使えば大幅な低コストでファンドラップサービスとほぼ同等のサービスが実現できることを示したかった。

――ロボ・アドバイザー「投信工房」のサービス内容は?

 ポートフォリオ提案から、資産運用開始後のサポートまで、一連のサービスを利用料無料で提供する。また、提案するポートフォリオは、販売手数料無料で信託報酬が低いインデックスファンドのみなので、トータルコストは平均して年0.37%程度である。対面証券などのファンドラップでは、トータルコストが年2.0%を超えるところが少なくないなか、投信工房であれば大幅に低コストでポートフォリオ運用が可能になる。

 ファンドラップは投資一任運用であり、運用開始後のモニタリングや運用経過報告なども受けられるが、その分運用・管理に手数料がかかる。投信工房は、投資一任運用ではなく「提案型」としたことで、手数料を取らないようにした。リバランスやポートフォリオの見直しといったメンテナンスを簡単にできるなど、運用開始後のサポート機能も充実させている。

――「投信工房」で提案するのは5つのモデルポートフォリオの中の1つということになるが、5つだけで様々なニーズのある個人投資家のニーズに応えられる?

 モデルポートフォリオは多ければ良いというものでもなく、当社では5つが最適と判断しており、十分に期待に添う内容だと考えている。ポートフォリオは一般的に用いられている投資理論を使って組み立てているので、ファンドラップと比べてそん色のない提案ができる。このモデルポートフォリオの配分比率は、定期的に見直し、お客さまに通知する。

 もし、ある程度経験や知識のある方が、「投信工房」の提案するポートフォリオの内容に物足りなさを感じたり、あるいは、自分の既に保有している投信等と合算して全体を最適化したいと感じる場合には、カスタマイズ機能を使って、ご自身の方針に合うように、ポートフォリオの内容を変更することもできる。

 さらに、特許申請をしている「リバランス積立」は、運用状況によってポートフォリオのバランスが変わった時に、目標の資産配分比率に近付けるよう自動的に金額配分を調節して積立する機能だ。積立の頻度について、時間分散のタイミングを幅広く選択できるよう、毎月だけではなく、毎週、毎日でも実行することを可能にした。かなり自由度の高い運用ができると考えている。

――ファンドの追加など、今後の展望は?

 当初は、インデックスファンドのみ90本でスタートしたが、アクティブファンドの取扱いも検討している。また、スマートフォンで「投資工房」を操作しやすいように、バージョンアップを予定している。「投信工房」を使って、ポートフォリオ運用で資産形成をするという考え方を広めたい。特に、若い世代の方々に広く知っていただきたいと思っている。「投信工房」の最低投資単位は1万円、また、積立は500円から可能になっている。手軽に始められる身近なサービスとして普及させたい。
提供:モーニングスター社
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