フロンティア不動産投資法人の安定した分配金戦略=三井不動産フロンティアリートマネジメント

 三井不動産フロンティアリートマネジメント代表取締役社長の田中浩氏は、同社が運用するフロンティア不動産投資法人(フロンティア)<8964.T>の運用の実際と今後の見通しについて、以下のように語った。

 フロンティアは、04年8月に上場した。当初のスポンサーはJTで、08年にスポンサーが三井不動産に代わり、その後、三井不動産が開発した商業施設を中心にポートフォリオに組み入れ、資産規模を拡大してきた。現在は32物件に投資し、資産規模は2890億円の規模になっている。フロンティアは以下のような特徴を持っている。

 まずは、上場以来の安定的な分配金実績だ。08年12月期以来、16期連続で1口当たり9000円以上の分配金を実施してきている。リーマン・ショック時においても、分配金を下げることなく高水準を維持してきた。これは、オフィスビルや住宅などと比較して商業施設は賃貸契約期間が長いことに因る。さらに、フロンティアは、固定賃料の比率が高いという特徴もある。分配金の安定性では、J−REITの中でナンバー1だと自負している。

 スポンサーのパイプラインを活用した優良物件の取得と運営サポートも大きな特徴だ。スポンサーである三井不動産は「ららぽーと」「三井アウトレットパーク」などの大型商業施設の開発で知られ、豊富な商業施設の運営ノウハウがある。現在の保有物件のうち、三井不動産から取得した物件は資産規模全体の48%の14物件1387億円、そして、旧スポンサーのJTからの取得が10物件1028億円、外部からの取得が8物件474億円という内訳だ。

 そして、地域分散などバランスのとれたポートフォリオと、長期契約による安定した収益基盤を持っている。現在、地域的には首都圏に51.8%と約半分、残りを、中部14.3%、関西13.7%、中国10.5%、九州・沖縄9.7%と、リスク分散のため意図的に地域を分散して保有している。オフィスや住宅などのJ−REITでは、首都圏に80−90%集中していることも珍しくないが、商業施設は全国に良い物件があり、地域分散しやすいメリットがある。また、多くの物件は、テナントと20年以上の賃貸借契約を結び、物件の平均契約期間は18.8年、固定賃料の比率は95%を超え、安定した収益基盤となっている。

 大規模ショッピングセンターはフロンティアの旗艦物件であり、その一つである「イオンモール茨木」で、フロンティアも投資して実施した大規模なリニューアルを契機に、立地や規模、クオリティを評価いただき、新たに20年の契約を結び直したという実績もある。

 また、都心型商業施設も保有している。東京・銀座の「ギンザ・グラッセ」や福岡・天神の「VIORO(ヴィオロ)」などの物件だ。都心の一等地にある物件は、希少性が高く、また換金性が高い点も評価して保有している。

 そして、駅近の中規模ショッピングセンターや食品スーパーも保有している。これらは根強い需要があるが、一方で競合が出やすい物件タイプでもあるため、いつでも住宅などに転用できる代替性も考慮して取得をしている。それぞれの物件に役割を持たせて保有している。

 近年、個人消費が弱く、インバウンド消費も沈静化するなど、小売市場の勢いが衰えている印象を持たれているかもしれない。『コト消費』と言われるように、商業施設も「体験型」「時間消費型」「生活提案型」といった施設が求められてきている。フロンティアは、物件のバリューアップを図り、運営のノウハウを駆使して、リニューアルや増築などを計画・実施し、1つ1つ手間をかけて運営している。

<J−REITトップクラスの低い有利子負債比率と多額の含み益>

 そして、強固な財務体質とAA格付を取得しているのも特徴の一つ。負債比率を表すLTV(ローン・トゥー・バリュー)は16年6月末現在で39.1%、J−REIT平均の47.8%を大きく下回る。また、AA格付を持ち日銀の購入対象銘柄となっている。さらに、多額の含み益がある。6月末時点の帳簿価格2477億円に対し、鑑定評価額は2969億円で、約492億円の含み益がある。

 過去の投資口価格(株価)は、リーマン・ショック前の高値67万円が1年余りで21.4万円へと約3分の1の水準になったこともあり、大きな変動がある。しかし一方で、分配金(配当)は9000円以上の水準を維持し、安定している。私ども運用会社は、株価をコントロールすることはできないが、分配金を安定させるよう運用している。これからも長期で安定した分配金が出せるようにしていく。
提供:モーニングスター社
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