フィデリティのポートフォリオ・マネージャーによる2019年の米国リート、ハイ・イールド債券市場見通し
フィデリティ投信が設定・運用する「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」は、それぞれ純資産総額が6750億円に達し、日本で最大級のアクティブファンドになった。両ファンドを担当する米フィデリティ・インベスメンツのポートフォリオ・マネージャーが来日し、2019年の市場見通しを語った。2018年に米国長期金利は年3%台に乗せてきた。米国リートやハイ・イールド債券のパフォーマンスに金利上昇は影響するのか? 両ポートフォリオ・マネージャーの見通しは以下の通り。
<USリートはセクター間でパフォーマンスに格差も>
「フィデリティ・USリート・ファンド」を運用するスティーブ・ビューラー氏は、「米国リートは、人件費、資材費の上昇などによって建設コストが上がり、不動産物件の供給が絞られている。一方、既存物件の稼働率は94%−95%という、ほぼ満室の状態が続いている。米国リートへの投資環境は良好な状態だ」と語った。
ただ、NOI(Net Operating Income)成長率は低下傾向にある。12年−15年は年率4%−5%程度だったが、現在は3%台に下がった。これは、「空室率が低いため空室改善など内部成長の余地が限られていること。また、小売り事業のNOIが減少傾向にあることが要因」とした。一方、バリュエーションの面では、1990年以来、米国リートとNAV(Net Asset Value)とのカイ離率が平均でプラス2.2%のところ、現在はマイナス5.4%と割安水準にある。「米国リートの経営環境が良好である一方で、価格には割高感がなく、投資対象としては魅力的」とした。
金利上昇とリートの関係について、過去25年間の米国リートと米長期金利の相関係数はほぼゼロで、相関がほとんどないことが確認できる。ビューラー氏は、「金利上昇は、資金調達コストの上昇などリートの経営を圧迫するが、一方で、金利が上昇するほど景気が良い時期には賃料の引き上げが可能なため不動産にとってプラス。プラス・マイナスが綱引きをして、結果的に金利がリート市場に与える影響をなくしている。なお、IT関連株式などのグロース系の株式が大きく値上がりするような局面では、高配当ディフェンシブ株と見なされるリートへの資金流入が減少してパフォーマンスが悪くなるということもある」と現状を解説した。
「小売部門で立地の良い店舗では販売成績も良く、立地が悪く販売不振の店舗が統廃合などで閉鎖されるなど、小売リートで2極化が鮮明だ。リートの種類や経営戦略によって、パフォーマンスにばらつきが出ている。個々のリートの見極めが重要になってきた。米国リートは他の資産クラスと比較して長期で優位な実績を示している。中・長期の投資対象として米国リートに引き続き注目していただきたい」と語った。
<デフォルト率の低下を追い風に良好な投資環境が続くUSハイ・イールド>
「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」を運用するハーリー・ランク氏は、「過去20年(1998年−2018年)の主要な投資資産のシャープ・レシオを比較すると、米国ハイ・イールド債券は0.56と、S&P500(0.39)や米国国債(0.28)などよりも良いリスク調整後リターンをあげている。他の資産との相関が低いという特徴もある。過去30年間を振り返ると、2年連続でマイナスリターンになった年がない。そして、2年に1度は2ケタのリターンを残している。投資資産の一部に米国ハイ・イールド債券を加えてほしい」と米国ハイ・イールド債券の魅力を語った。
現在の市場環境については、「米国ハイ・イールド債券の大きなリスクのひとつであるデフォルト率は、過去平均の5%よりも現在は低く抑えられている。また、米国10年国債との利回り格差は、過去30年平均で5%程度のところ、現在は3.75%程度に縮まっている。過去に、長期金利との金利差が長期平均を下回って推移する局面が3度あったが、その際の米国ハイ・イールド債の年率リターンは7%を超える好調な結果になった。米国の利上げ局面は、良好な経済環境を背景としており、基本的に米国ハイ・イールド債券にとってはポジティブな要素といえる」と語った。
「リスク要因としては、貿易摩擦の激化によって中国や欧州の景気が大きく減速することなどがあるが、米国ハイ・イールド債の発行体は、外的要因を受けにくい国内事業が中心なので、世界経済の減速というリスクは受けにくい。2019年も良好な投資環境が続くとみている」と語っていた。
提供:モーニングスター社
<USリートはセクター間でパフォーマンスに格差も>
「フィデリティ・USリート・ファンド」を運用するスティーブ・ビューラー氏は、「米国リートは、人件費、資材費の上昇などによって建設コストが上がり、不動産物件の供給が絞られている。一方、既存物件の稼働率は94%−95%という、ほぼ満室の状態が続いている。米国リートへの投資環境は良好な状態だ」と語った。
ただ、NOI(Net Operating Income)成長率は低下傾向にある。12年−15年は年率4%−5%程度だったが、現在は3%台に下がった。これは、「空室率が低いため空室改善など内部成長の余地が限られていること。また、小売り事業のNOIが減少傾向にあることが要因」とした。一方、バリュエーションの面では、1990年以来、米国リートとNAV(Net Asset Value)とのカイ離率が平均でプラス2.2%のところ、現在はマイナス5.4%と割安水準にある。「米国リートの経営環境が良好である一方で、価格には割高感がなく、投資対象としては魅力的」とした。
金利上昇とリートの関係について、過去25年間の米国リートと米長期金利の相関係数はほぼゼロで、相関がほとんどないことが確認できる。ビューラー氏は、「金利上昇は、資金調達コストの上昇などリートの経営を圧迫するが、一方で、金利が上昇するほど景気が良い時期には賃料の引き上げが可能なため不動産にとってプラス。プラス・マイナスが綱引きをして、結果的に金利がリート市場に与える影響をなくしている。なお、IT関連株式などのグロース系の株式が大きく値上がりするような局面では、高配当ディフェンシブ株と見なされるリートへの資金流入が減少してパフォーマンスが悪くなるということもある」と現状を解説した。
「小売部門で立地の良い店舗では販売成績も良く、立地が悪く販売不振の店舗が統廃合などで閉鎖されるなど、小売リートで2極化が鮮明だ。リートの種類や経営戦略によって、パフォーマンスにばらつきが出ている。個々のリートの見極めが重要になってきた。米国リートは他の資産クラスと比較して長期で優位な実績を示している。中・長期の投資対象として米国リートに引き続き注目していただきたい」と語った。
<デフォルト率の低下を追い風に良好な投資環境が続くUSハイ・イールド>
「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」を運用するハーリー・ランク氏は、「過去20年(1998年−2018年)の主要な投資資産のシャープ・レシオを比較すると、米国ハイ・イールド債券は0.56と、S&P500(0.39)や米国国債(0.28)などよりも良いリスク調整後リターンをあげている。他の資産との相関が低いという特徴もある。過去30年間を振り返ると、2年連続でマイナスリターンになった年がない。そして、2年に1度は2ケタのリターンを残している。投資資産の一部に米国ハイ・イールド債券を加えてほしい」と米国ハイ・イールド債券の魅力を語った。
現在の市場環境については、「米国ハイ・イールド債券の大きなリスクのひとつであるデフォルト率は、過去平均の5%よりも現在は低く抑えられている。また、米国10年国債との利回り格差は、過去30年平均で5%程度のところ、現在は3.75%程度に縮まっている。過去に、長期金利との金利差が長期平均を下回って推移する局面が3度あったが、その際の米国ハイ・イールド債の年率リターンは7%を超える好調な結果になった。米国の利上げ局面は、良好な経済環境を背景としており、基本的に米国ハイ・イールド債券にとってはポジティブな要素といえる」と語った。
「リスク要因としては、貿易摩擦の激化によって中国や欧州の景気が大きく減速することなどがあるが、米国ハイ・イールド債の発行体は、外的要因を受けにくい国内事業が中心なので、世界経済の減速というリスクは受けにくい。2019年も良好な投資環境が続くとみている」と語っていた。
提供:モーニングスター社