シュローダーが機関投資家向けセミナー、「ボラティリティ」「ESG」「フィンテック」の3大テーマに注目

 シュローダー・インベストメント・マネジメントは12月7日、パレスホテル東京にて機関投資家向けに「シュローダー インベストメント・コンファレンス」を開催した。同社代表取締役社長の柏木茂介氏は、「当面の資産運用で関心が高まる『ボラティリティの高まり』『サステナブル投資』『フィンテック』という3つのテーマについて、掘り下げて伝えたい」とコンファレンスの内容を紹介した。3つのテーマを順に、シュローダー(ロンドン)チーフ・エコノミストのキース・ウエード氏、同スシュワードシップ グローバル・ヘッドのジェシカ・グランド氏、そして、京都大学公共政策大学院教授の岩下直行氏が講演した。

 キース・ウエイド氏は、「2019年世界経済展望」と題して講演し、「総じて堅調だった世界経済は、堅調を維持する米国と、その他の欧州や日本で国ごとに景気がまちまちになってくる。中国の減速傾向は明らか。世界貿易は米中摩擦で駆け込み需要で在庫を積み増した反動が2019年には出てくるだろう」と、世界経済の成長が減速することを受けた市場の変化を注意すべきだと見通した。

 そして、「特に、世界のサプライチェーンに大きな影響力がある中国が貿易戦争で成長鈍化する影響は大きい。台湾、マレーシア、シンガポールなど貿易で中国への依存度が大きな国への影響は注視する必要がある。一方で、中国が米国産の大豆に高い関税をかけることで、ブラジル産の大豆が中国で拡大したり、中国製品に変わってドイツや日本製品がマーケットシェアを拡大するなど、部分的には米中貿易戦争がプラスに働く要素もある。その見極めが重要だ」と語った。

 また、2018年10月末時点で米国市場は年初からの上昇分を失い、欧州や新興国市場は年初来で2ケタの下落となり、成長減速懸念からリスク資産が売られているが、先行して下落した新興国市場にとっては、米国の利上げに打ち止め感が出てドルがピークを付けてドル安方向に動くことは、「良い材料になる」と見通した。

 その上で、各資産クラスの見通しは、「株式は慎重ながらオーバーウエイトで、現在イーブンにしている新興国株式をオーバーウエイトにするかどうかを検討している。債券はアンダーウエイトながら、オポチュニティーがある新興国(現地通貨建て)はオーバーウエイト」と語った。

 「サステナビリティ(ESG)投資の最前線−ESGテーマリサーチと投資へのインプリケーション−」と題して講演したジェシカ・グランド氏は、「シュローダーが実施した650機関投資家向けのアンケートで、全体の3分の2以上が、今後5年間でESG投資の重要性はより高まると回答した。アジアも北米の機関投資家と同等にESG投資に対して重要視してきている」と、世界的にESGへの関心が高まっている現状を伝えた。

 そして、シュローダーが開発した様々な指標を活用し、「ESGへの取り組みが、企業利益に影響していることを投資家に分かる形で情報提供をすることが可能になった」と最新の事例を紹介。たとえば、今後、世界的に温室効果ガス排出量を価格制度でカバーする炭素価格が大幅に上昇することが考えられているが、「カーボンVaR」という指標は、炭素価格が1トン=100米ドルに上昇すると過程した場合、それが企業の利益にどの程度のインパクトがあるかを数値化して示すことができる。

 炭素価格上昇がEBITDAに与える影響は、業種によって大きな差があり、影響が大きい「建設資材」「鉄・鉄鋼」「基礎化学品」などに対し、「ソフトウエア」や投資顧問業、保険、銀行など金融業などは影響が小さい。また、「同じ化石燃料を生産する企業でも、白黒はっきりしている状態ではない。石炭はガスの2倍の炭素排出量だが、世界の人口が拡大してエネルギー需要が高まる中で石炭の需要はなくならない。企業の課題への対応状況によって企業のリスクは異なる。エンゲージメントをはじめ、リサーチの力でリスクを判断することが重要だ」と語った。

 「フィンテックが変える金融ビジネス」をテーマに講演した岩下直行氏は、日本の既存銀行は保有口座の18%しかインターネット・バンキング契約を結んでおらず、特に、地方銀行や信用金庫はネット比率が1ケタ台と指摘。「インターネットやスマホの普及率は、都心も地方も差がない。国が進める未来都市戦略で、キャッシュレス決済比率をKPI(重要な評価指標)に位置付けている。ところが、既存銀行は顧客のEメールアドレスも、フェイスブックのIDも知らない。このままで銀行として生き残っていけるのか? フィンテックについて銀行としての戦略が重要だ」と警鐘を鳴らした。
提供:モーニングスター社
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