確定拠出年金、ラップにも広がる「ESG」−公募投信で設定相次ぐ、長期リターンにも期待

 ESG(環境・社会・企業統治)関連ファンドが一般的な国内公募投信だけでなく、確定拠出年金やファンドラップにも広がってきた。アムンディ・ジャパンは22日、確定拠出年金での利用が可能なファンドとして、世界の気候変動対応に取り組む企業への株式に投資する「アムンディDCファンド 世界株式・気候変動対応」を設定する。

 同ファンドは、環境評価を行う国際的なNGOであるCDPが公表する気候変動問題への取り組み度合いの評価とアムンディのESG評価を用いて銘柄を選定する。一般的な公募投信として、同一の運用プロセスを用いる「SMBC・アムンディ クライメート・アクション」を19年6月に設定済み。組入上位は、社内的な炭素税を設定する『マイクロソフト』、クラウドサーバーの温室効果ガスゼロを目指す『セールスフォース』、2018年から2050年までにCO2排出量半減を目標とする『ホーム・デポ』などとなる。

 確定拠出年金専用ファンドとしてはこのほかに、5月に野村アセットマネジメントの国内株式ファンド「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資) (確定拠出年金向け)」、6月にアセットマネジメントOneの外国株式ファンド「One グローバルESG厳選株ファンド<DC年金>」が設定されている。それ以前に設定された確定拠出年金専用のESGファンドが7本にとどまっていたことを考えるとハイペースでの設定が続く。

 また、ファンドラップ専用ファンドは昨年末までESG関連ファンドは該当がなかったが、今年1月にインベスコ・アセット・マネジメントが運用する外国株式ファンドとして「ESG米国株式オープン(ラップ向け)」「ESG欧州株式オープン(ラップ向け)」が設定されている。

 ESGへの注目度が高まる背景としては環境やガバナンスへの意識の高まりに加えて、良好なパフォーマンスへの期待もある。グローバル株式の指数であるモーニングスター・グローバル・マーケット指数のリターン(米ドルベース・5月末時点)に基づき比較すると、同指数のESG型はコロナ危機を含む過去1年間が4.20%と、ESGを考慮しない一般型指数の1.80%を上回っている。さらに、3年、5年、10年でもESG型が一般型を上回っており、中長期でも優位性が見られる。

 日本でのESG投資は、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG指数を採用し、パッシブ運用を始めるなど積極的な取り組みを見せることで認知が高まった。証券市場への投資においては長期的に見た場合に環境・社会問題の影響が避けられず、ESG投資を通じてその影響を軽減することが持続的な収益を追求する上で必要との認識がある。

 確定拠出年金やファンドラップに関しても長期での運用が前提となる。社会の持続可能性と安定的なリターンの獲得を両立させる手段としてESGが一層注目を集めそうだ。
提供:モーニングスター社
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