深センは中国のNASDAQ、6月に関連ファンドのパフォーマンスが目立って好調
中国の深セン市場に上場している銘柄群が大きく値上がりしている。代表的な株価指数である深セン成分指数(時価総額上位500の中国A株で構成)は、ここ連日で年初来高値を更新し、コロナショックで付けた今年安値からの上昇率は約44%になった。史上最高値を更新し続けている米NASDAQ総合指数が今年安値からの上昇率が約60%になっていることには及ばないものの、中国本土市場(上海と深セン)において、深センは米NASDAQに相当し、中国におけるハイテク企業群の集積地になっている。国内公募投信6月の月間トータルリターン(残高10億円以上、SMA・DC専用とETF除く)で上位を占めた中国株ファンドのパフォーマンスにも深セン株式の上昇は大きく寄与した。
6月の月間トータルリターンのランキングでトップ10のうち、5銘柄が中国株式を主な投資対象とするアクティブファンドだった。ランキング第2位「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」、第3位「ダイワ・チャイナ・ファンド」、第4位「バリュー・パートナーズ・チャイナ・イノベーター」、第5位「JPMチャイナ・アクティブ・オープン」、第9位「JPMグレーター・チャイナ・オープン」は、月間騰落率が12.22%−19.65%だった。中でも、深セン上場銘柄に70%以上を投資している「深セン・イノベーション株式ファンド」が大きく値上がりした。
中国の深セン市場には、防犯カメラ世界トップの海康威視(HIKVISION)、音声・言語認識技術で中国トップクラスの科大訊飛(IFLYTEK)などAI(人工知能)で世界的な注目度が高いメーカーが上場している。また、スマートハードウエア「GoerTek」ブランドで知られる歌爾、中国国内でVRゴーグル「Glyph」の販売を担う聯絡互動、クラウドコンピューター「紫曇1000」の開発で知られる紫光、デジタルケーブルテレビの天威視訊など、ウィズコロナで成長が期待されるデジタル・トランスフォーメーション(DX)関連企業も多い。さらに、莱士血液製品、魚躍医療設備など、医薬品や医療機器メーカーなどヘルスケア関連企業も少なくない。DXやヘルスケア関連は、国内に大きな市場があり、世界的な活躍も期待され、個別企業の株価が大きく値上がりし、それらを選別投資したファンドが好調なパフォーマンスにつながった。
中国は、例年3月に開催される全国人民代表大会(全人代)の開催を2カ月遅らせて5月下旬に開催した。全人代では、コロナウイルスの蔓延で疲弊した国内経済を活性化するための大規模な景気対策を実施することが確認され、全人代の閉会後、時を置かずに中国全土で経済対策が動き始めている。自動車の買い替えを対象とした補助金、商品券の発行を通じた消費喚起、そして、5G(第5世代移動通信システム)などの大規模インフラ投資が対策の柱だ。6月に中国本土株式が大きく値上がりしたのは、大規模な景気刺激策への期待も背景にある。
中国の株式市場は、中国政府の経済対策に敏感に反応する性格がある。2008年のリーマンショック(世界金融危機)の際には、4兆元の大型景気刺激策が出され、中国経済がV字回復するとともに、世界の経済回復を主導した。この当時、深セン成分指数は半年足らずの間に2倍以上の値上がりとなった。2014年には、住宅ローン金利の引下げなど年後半に住宅関連投資の刺激策を立て続けに実施した。この時には、深セン成分指数は1年余りで約2.5倍に値上がりしている。
もっとも、大規模な経済対策は、インフレや過剰生産性などの副作用を生むリスクがある。リーマンショック後の経済対策で大きく株価が上昇した後、2014年に再び大規模な景気刺激策を実施するまで、中国株価は低迷した。そして、14年の不動産刺激策の後には「チャイナショック」による株価急落が起こった。
ただ、今回の景気対策によって浮上した株価は40%程度であり、過去の株価上昇率と比較するとまだ余力が期待できる水準だ。また、過去の大規模経済対策の副作用を教訓として、中国の経済運営も進化している。今回の全人代で経済成長率の目標を示さなかったこともその1つ。また、中央政府が大々的に経済対策規模を発表するのではなく、地方政府による経済対策が小出しに出てきている。また、新型コロナウイルスの感染拡大は第2波が懸念され、V字型の経済回復も期待しづらい。これがかえって経済の持続的な成長期待につながり、株価上昇も緩やかに続くという見方につながっている。引き続き、中国株式ファンドに注目していきたい。
提供:モーニングスター社
6月の月間トータルリターンのランキングでトップ10のうち、5銘柄が中国株式を主な投資対象とするアクティブファンドだった。ランキング第2位「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」、第3位「ダイワ・チャイナ・ファンド」、第4位「バリュー・パートナーズ・チャイナ・イノベーター」、第5位「JPMチャイナ・アクティブ・オープン」、第9位「JPMグレーター・チャイナ・オープン」は、月間騰落率が12.22%−19.65%だった。中でも、深セン上場銘柄に70%以上を投資している「深セン・イノベーション株式ファンド」が大きく値上がりした。
中国の深セン市場には、防犯カメラ世界トップの海康威視(HIKVISION)、音声・言語認識技術で中国トップクラスの科大訊飛(IFLYTEK)などAI(人工知能)で世界的な注目度が高いメーカーが上場している。また、スマートハードウエア「GoerTek」ブランドで知られる歌爾、中国国内でVRゴーグル「Glyph」の販売を担う聯絡互動、クラウドコンピューター「紫曇1000」の開発で知られる紫光、デジタルケーブルテレビの天威視訊など、ウィズコロナで成長が期待されるデジタル・トランスフォーメーション(DX)関連企業も多い。さらに、莱士血液製品、魚躍医療設備など、医薬品や医療機器メーカーなどヘルスケア関連企業も少なくない。DXやヘルスケア関連は、国内に大きな市場があり、世界的な活躍も期待され、個別企業の株価が大きく値上がりし、それらを選別投資したファンドが好調なパフォーマンスにつながった。
中国は、例年3月に開催される全国人民代表大会(全人代)の開催を2カ月遅らせて5月下旬に開催した。全人代では、コロナウイルスの蔓延で疲弊した国内経済を活性化するための大規模な景気対策を実施することが確認され、全人代の閉会後、時を置かずに中国全土で経済対策が動き始めている。自動車の買い替えを対象とした補助金、商品券の発行を通じた消費喚起、そして、5G(第5世代移動通信システム)などの大規模インフラ投資が対策の柱だ。6月に中国本土株式が大きく値上がりしたのは、大規模な景気刺激策への期待も背景にある。
中国の株式市場は、中国政府の経済対策に敏感に反応する性格がある。2008年のリーマンショック(世界金融危機)の際には、4兆元の大型景気刺激策が出され、中国経済がV字回復するとともに、世界の経済回復を主導した。この当時、深セン成分指数は半年足らずの間に2倍以上の値上がりとなった。2014年には、住宅ローン金利の引下げなど年後半に住宅関連投資の刺激策を立て続けに実施した。この時には、深セン成分指数は1年余りで約2.5倍に値上がりしている。
もっとも、大規模な経済対策は、インフレや過剰生産性などの副作用を生むリスクがある。リーマンショック後の経済対策で大きく株価が上昇した後、2014年に再び大規模な景気刺激策を実施するまで、中国株価は低迷した。そして、14年の不動産刺激策の後には「チャイナショック」による株価急落が起こった。
ただ、今回の景気対策によって浮上した株価は40%程度であり、過去の株価上昇率と比較するとまだ余力が期待できる水準だ。また、過去の大規模経済対策の副作用を教訓として、中国の経済運営も進化している。今回の全人代で経済成長率の目標を示さなかったこともその1つ。また、中央政府が大々的に経済対策規模を発表するのではなく、地方政府による経済対策が小出しに出てきている。また、新型コロナウイルスの感染拡大は第2波が懸念され、V字型の経済回復も期待しづらい。これがかえって経済の持続的な成長期待につながり、株価上昇も緩やかに続くという見方につながっている。引き続き、中国株式ファンドに注目していきたい。
提供:モーニングスター社