コロナでも変わらぬ投資マインド、日本は長期投資への理解が高い=フィデリティがアジアの投資家調査

 フィデリティ・インターナショナルは、新型コロナウイルス感染症が投資家の投資マインドや行動にどのような変化をもたらしたのかを知るため、アジア各地(日本、シンガポール、中国本土、香港)の投資家2434人を対象とした調査を行った。その結果、全体の半数以上(57%)がパンデミックのためにお金に関する心配が増したと回答しているものの、投資活動については感染拡大以降もほとんどの投資家(82%)が投資を継続していることも分かった。同調査結果について、フィデリティ投信のフィデリティ・インスティテュート マクロストラテジストの重見吉徳氏は、「日本の調査結果には、『資産運用をしないといけない』という考えの高まりが感じられます。いよいよ重い腰を上げたのかもしれません」と分析している。

 調査は、今年7月29日から8月3日に、インターネットを通じて実施された。新型コロナの影響でお金の心配が増したという回答を地域別にみると、中国本土(59%)と香港(57%)は平均並みの回答だったが、シンガポール(66%)が高く、日本(49%)が低くなっている。また、この金銭面のマイナスの影響を最小化するために、半数以上が裁量支出を減らしている。支出の削減では日本が68%と最も削減者の割合が高く、香港(50%)、シンガポール(57%)などと比較しても、その割合の高さが目立つ。また、日本では、59%が貯蓄額を減らし始めていると回答し、さらに、副業を探し始めたという回答者比率も45%と他のアジア地域よりも高い結果になった。

 そして、「将来の目標を達成するための貯蓄が不足している」という回答は、全体が65%で、日本(71%)と中国本土(75%)が比較的高く、香港(63%)とシンガポール(52%)が比較的低くなった。

 このようにお金に関する不安の高まりから消費習慣を変えようとしていることが明らかな一方で、投資に関する態度は、さほど変化がない。新型コロナ感染拡大後も投資を続けているという回答は、中国本土75%、日本82%、香港85%、シンガポール86%と総じて高い。また、パンデミックを経ても「何も変えることなく投資を続けている」と答えた投資家の割合は、中国本土26%、香港34%、シンガポール40%に対し、日本は52%と相対的に高い割合になっている。これは、日本では「つみたてNISA」などを通じて積立投資が浸透し始めており、長期の目線で投資を考える人の比率が高いということの表れと見ることができそうだ。

 また、「投資額を増やすとすればどのアセットクラスに投資するか」という質問に対して、日本では株式(84%)という回答が高く、債券(22%)が極端に低くなった。これは、中国本土の株式(58%)と債券(54%)という回答と対照的だった。日本と中国の投資対象に対する見方の違いは、金利水準の違いも影響しているだろう。日本の長期国債利回りは0.03%程度だが、中国は3%超の水準を維持している。なお、日本も中国も不動産については、中国が13%、日本が12%といずれも新規投資意欲が低い結果になった。

 この調査結果に対し、フィデリティ投信の重見氏は、「(日本の投資家は)将来の国内経済や年金に不安があり、現在も貯蓄が十分でないからこそ、日々のお金の心配をしたり、副業を考えたり、切り詰めたりしているということだと思います。そうした不安があるからこそ、『将来に備えて資産運用は続けるべき』という自助努力に対する意識の高まりや、『資産運用は、短期目線にならず、長期目線』という資産運用の基本に対する認識の高まりが、少しずつ表れている可能性があると考えています。言い換えれば、足りないからこそ、資産運用をしないといけない、いよいよ重い腰を上げたのかもしれないということです」と分析している。

 一般的に、個人金融資産に対する投信や株式等の保有比率の低さから、「日本人の金融リテラシーは低い」と評されることがあるが、今回の調査では、日本の投資家は資産運用について、アジアの中では長期目線で考えている人の割合が高く、また、比較的アグレッシブに取り組んでいるという傾向が見えた。
提供:モーニングスター社
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