予想分配金の大幅減額で業績見通しに戦々恐々のJ−REIT、優れたアクティブファンドの運用力に光明

 コロナショックの下落から国内株価はおおむね回復してきたものの、国内リートの戻りは鈍い。東証REIT指数は2月末2017.05ポイントが10月14日には1719.42ポイントと、約15%下回る水準にある。同期間にTOPIX(東証株価指数)が8.8%上昇していることと比較すると、その低迷ぶりが際立つ。この低迷の背景には、ホテル特化型リートの業績の大幅な下方修正をはじめ、国内リートの業績の不透明感が払しょくされないという背景がある。特に、国内リートの分配金利回りを評価して購入していた投資家には、業績の下方修正に伴う予想分配額の大幅な減額修正は大きなショックとして記憶されそうだ。

 国内リートの投資魅力の一つとして、高い分配金利回りがある。10月14日時点の上場リートの平均分配金利回り(当期予想分配金)は4.13%、個別リートには5%台や6%台という分配金利回りがあるリートもある。しかし、分配金利回りをランキングしてみると、下位には1.0%を下回るリートが出てくる。コロナショックの影響が直撃したホテル系のリートだ。分配金利回りが高いはずのリートが、株式の配当利回りよりも低い分配金利回りになってしまっている。

 これらリートの過去の分配金利回りを振り返ると、今年になって大幅に利回り水準を落としている。たとえば、ホテル特化型のジャパン・ホテル・リートは8月25日に中間決算を発表するとともに、通期業績予想を下方修正した。この時、1口当たり分配金を3750円から126円に下方修正した。業績発表の直前までは8%台の分配金利回りを付けていたが、予想分配金の大幅下方修正で分配金利回りは0.2%台に落ちてしまった。

 同様のことは、ホテルをメインの運用対象にしているインヴィンシブル投資法人でも起きている。5月11日に業績予想を公表した際に、1812円としていた予想分配金を30円に大幅減額。発表前まで11%台だった分配金利回りは発表を受けて0.2%台に急落した。いちごホテルリート投資法人は業績の下方修正の複数回の発表によって予想分配金の金額を下方修正。4月までは7%台だった分配金利回りは、業績修正のたびに段階的に下落し、現在2%台に落ちた。

 このように個別の国内リートには、今年に入って大きな業績変動が見られたが、国内リートを主要投資対象とするリート・ファンドでは、これほど大きな変化には見舞われていない。特に、銘柄を分析の上で選別して投資しているアクティブファンドは、このような個別リートの変調から直接的な影響を受けないように運用している。

 たとえば、国内リートのアクティブファンドで残高が3450億円と大きく、モーニングスターレーティングで5ツ★を獲得している「J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)は、昨年12月時点でホテルリートへの投資比率は1.57%に過ぎず、今年9月末時点でも1.24%だ。ファンドの保有ポートフォリオの予想配当利回りは9月末現在で4.27%。また、ファンドの毎月分配金も1万口当たり65円を継続している。

 同様に、5ツ★評価の「J−REITオープン(年4回決算型)」(野村アセットマネジメント)も、組み入れ銘柄にホテル主体型はほとんど保有していない(7月の運用報告書で1.7%程度)。9月末現在のポートフォリオの予想配当利回りは4.3%になっている。3カ月ごとの分配金は1万口当たり120円を継続している。

 一方、東証REIT指数に連動するリートのインデックスファンドでは、ホテルリートへの配分比率は3%−4%台になっている。分散投資効果によってポートフォリオの予想配当利回りは4%台をキープしている。

 世界的に超低金利時代を迎え、リートの持っている高い分配金利回りは魅力的だ。国内金利ゼロ%の今、年5%を超える国内リートの高い分配金利回りには飛びつきたくもなる。ただし、コロナショックのような予測できない大きな市場変化があると、個別のリートでは業績の大幅な変動が生じることがある。ただ利回り水準だけを手掛かりに投資していては痛い目にあってしまうことは、今年のホテル系リートの業績修正でも明らかだ。

 その点では、やはり業界の動向を専門にウオッチし、経営環境や業績の変化に目を光らせている優れたファンドマネージャーやアナリストチームがサポートする投資信託に、一段の安心感があるといえよう。インデックスファンドでも分散投資の安心感はあるが、特に環境変化が大きい時には、個別に優れたリートに選別投資するアクティブファンドに優位性があるといえそうだ。
提供:モーニングスター社
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