投資対象を調査分析するアクティブマネージャーの力量が試される=ティー・ロウ・プライスの下期市場展望

 ティー・ロウ・プライス・ジャパンは7月8日、2021年下期グローバル株式・債券市場見通しレポートを発表したことを受けて、メディア向けの説明会をオンラインで開催した。新型コロナウイルス感染症からの脱却をめざす世界経済が、コロナワクチン接種の進展による景気回復と、ワクチン不足や対応の遅れによるまん延再拡大との間で、「コロナのオン/オフ」が繰り返されるような“移行期”にある現在、「個別に投資対象を見極めることが何より重要」と強調した。説明会には、ティー・ロウ・プライス・ジャパンから株式運用戦略部長の中満剛氏と債券運用戦略部長の花井ゆき子氏が参加し、これからの株式、および、債券での運用における注目ポイントを解説した。

 米国を中心とした世界の株式市場の現在の水準については、「社内でも意見が分かれる難しい状況にあるが、株価を押し上げるドライバーとしての企業業績の回復と、バリュエーションの高さから来るリスクについて、それぞれに目配りをしながらバランスを取った投資をすることが大事」(中満氏)とした。ただ、米国株式のPERが高過ぎて買えないという見方に対しては、「例えば、『株式益回り−10年国債利回り』は、過去ITバブルの崩壊前などにはマイナス水準になるほど株価が買い進められていたものの、現在は2.5%程度の水準であり、巷間いわれるほどには株価に割高感があるとは思えない」(同)という。

 同じように、「過去10年間にわたってバリュー株をグロース株がアウトパフォームしてきたが、今後は逆転してバリュー株優位な相場が続くのではないかという見方があるが、現在のバリュー株優位の状況は、業績見通しの上方修正がバリュー株式に圧倒的に多くなっていることが背景にある。過去の企業業績の比較では、売上高やEPS(1株当たり利益)、キャッシュフローなどでバリュー株に対してグロース株が圧倒的に好成績を上げてきた。これが株価の格差になったととらえることができる。今後、バリュー株がグロース株を数年にわたってアウトパフォームし続けるという考えには賛同できない」という。「ポストコロナのニューノーマルで生き残る企業、景気回復に伴って業績が向上する企業、そして、独自のビジネスモデルで高い成長が実現できる企業など、個別銘柄のファンダメンタルズをしっかり分析し、個々に評価することが重要」(中満氏)とした。

 一方、債券市場については、世界経済の回復が債券の利回りの上昇につながり、これが債券にとってマイナスに働き、債券投資家にとっては厳しい市場環境になるものの、「金利上昇に抵抗力のあるバンクローンやデュレーションの短いハイイールド戦略、高い利回りが金利上昇時のクッションとなる新興国債などに魅力がある」(花井氏)と、アクティブに債券市場を捉えて戦略を構築することが重要と語った。「投資家自身がどのリスクを許容できるか・できないのかということを整理し、戦略やマネジャーを選択する、創造性・独創性が重要」と、債券運用においてもアクティブにボトムアップで銘柄を選別する投資が現状の市場にはマッチしているとした。

 ティー・ロウ・プライスは、米国ボルティモアを本拠とするグローバル投資運用会社。国内公募投信では、2019年5月に設定した「ティー・ロウ・プライス 世界厳選成長株式ファンド」Aコース(資産成長型・為替ヘッジあり)/Bコース(資産成長型・為替ヘッジなし)/Cコース(分配重視型・為替ヘッジあり)/Dコース(分配重視型・為替ヘジなし)と、2019年12月に設定した「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド(愛称:アメリカン・ロイヤルロード)」、そして、2020年9月に設定した「ティー・ロウ・プライス グローバルテクノロジー株式ファンド」Aコース(為替ヘッジあり)/Bコース(為替ヘッジなし)がある。

 いずれも株式のアクティブファンドで、設定来のパフォーマンスは、それぞれの投資対象の代表的な株価指数を上回る成績を残している。コロナからの脱却をめざす世界経済を背景に、今後の世界経済の見通しに不透明感が強まっている中だけに、独自のリサーチチームが世界の拠点で調査を実施し、ボトムアップで有望な投資対象をピックアップしている同社のようなアクティブファンドマネージャーの活躍が期待されるところだ。
提供:モーニングスター社
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