米株高値警戒で選好される「サイバーセキュリティー株式」、1年リターン52%の背景
国内公募投信(残高10億円以上、DC・SMA専用除く)の8月1カ月間のトータルリターンランキングで「国際株式型」の上位は、トップの3倍レバレッジ型のファンドを除くと、インドやベトナム、タイなどアジア株式を投資対象とするファンドが占めた。インドの「SENSEX30」指数は1カ月間で9.44%上昇し史上最高値を更新し、「タイSET」指数は7.68%高と好調だった。このアジア株式上昇が目立つトップ20リストの中で、米国株式を主な対象とした「サイバーセキュリティー株式オープン」(三菱UFJ国際投信)が13位に「為替ヘッジなし」、14位に「為替ヘッジなし・予想分配型」、20位に「為替ヘッジあり」と3本もランクインして異彩を放っている。
同ファンドは「為替ヘッジなし」コースが「ファンド オブ ザ イヤー2019」(2020年1月に発表)で優秀ファンド賞を受賞しているが、依然として高いパフォーマンスを維持しており、改めて注目したい。
コロナ禍で人との接触の削減が大きな課題となる中で、DX(デジタルトランスフォーメーション=データとデジタル技術の活用によって企業がビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること=テレワーク、eコマース、オンライン診療、オンライン授業など)が話題になったが、これからもデジタル社会が大きく進展していくと考えられ、その社会に不可欠なインフラとしてサイバーセキュリティーは長期的に成長していくことは間違いない。
サイバーセキュリティーは、社内ネットワークに入るまでの「ペリメーター(境界)」、「ネットワーク」そのもののセキュリティー、端末である「エンドポイント」、ソフトウエアなどの「アプリケーション」、そして、「データ」を守るという段階のそれぞれに対策が必要となり、同ファンドではそれぞれの段階でサイバー攻撃等に対するセキュリティー技術を持つ企業やそれらの技術を搭載した製品やサービスを提供する企業に投資している。
実質的な運用を担っているのはアリアンツ・グローバル・インベスターズで、テクノロジー株式の運用に豊富な経験を持っている。2020年12月末時点のポートフォリオに組み入れている銘柄の年間予想売上高成長率(組入比率に応じた加重平均)は25.0%となり、世界株式(MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス=ACWI採用銘柄)の7.3%と比較して成長魅力が大きなポートフォリオを実現している。同ファンドの7月末時点の組入れ銘柄数は46銘柄。投資対象は日本を含む世界の株式市場に上場する銘柄群となっているが、米国企業が88.2%を占め、実際には米国市場中心のポートフォリオになっている。
米国市場については、9月7日にゴールドマン・サックスが2021年の米国の成長率見通しを引き下げ、8日にはモルガン・スタンレーが米国株の投資判断を「アンダーウエート」に引き下げたことが市場に伝わって株価が下落した。
8日発表の米地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、「新型コロナ・デルタ株による感染拡大の影響でレストランや旅行関連の落ち込みが大きい」と指摘され、「全体的に経済成長ペースが鈍った」と報告された。「S&P500」が9月2日まで、「NASDAQ総合指数」が9月7日までは史上最高値を更新してきたが、今後もこれまでの上昇力を保ち得るのかどうかわからない状況といえる。8月下旬以降に同ファンドの基準価額が大きく値上がりしているが、市場全体に高値警戒感が強まり、先行きにも不透明感が台頭する中で、同ファンドが投資対象とするサイバーセキュリティー業界など確かな成長が見込まれる企業群が選り好まれて上伸する動きになってきているようにみえる。
同ファンド(為替ヘッジなし)の過去のパフォーマンスを振り返ると、2021年8月末時点でトータルリターン1年が52.53%となり、「S&P500」(配当込み、円ベース)の36.70%、「MSCI ACWI」(配当込み、円ベース)の34.30%を大きく上回る。3年トータルリターン(年率)でも同ファンドの29.21%に対して、「S&P500」は17.72%、「MSCI ACWI」が14.38%と同ファンドの優位性に変わりがない。
ただ、価格のブレを表すリスク(標準偏差)は高くなる傾向がある。設定来の最大下落率は1カ月間でマイナス15.92%(2018年10月)ということもあった。短期間の下落が気になる場合は、毎月一定額を購入する「投信積立サービス」を活用するなど、購入方法を検討する必要はあるだろうが、高い成長が期待されるサイバーセキュリティー業界は、長期に魅力的な投資対象といえるのではないだろうか。
提供:モーニングスター社
同ファンドは「為替ヘッジなし」コースが「ファンド オブ ザ イヤー2019」(2020年1月に発表)で優秀ファンド賞を受賞しているが、依然として高いパフォーマンスを維持しており、改めて注目したい。
コロナ禍で人との接触の削減が大きな課題となる中で、DX(デジタルトランスフォーメーション=データとデジタル技術の活用によって企業がビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること=テレワーク、eコマース、オンライン診療、オンライン授業など)が話題になったが、これからもデジタル社会が大きく進展していくと考えられ、その社会に不可欠なインフラとしてサイバーセキュリティーは長期的に成長していくことは間違いない。
サイバーセキュリティーは、社内ネットワークに入るまでの「ペリメーター(境界)」、「ネットワーク」そのもののセキュリティー、端末である「エンドポイント」、ソフトウエアなどの「アプリケーション」、そして、「データ」を守るという段階のそれぞれに対策が必要となり、同ファンドではそれぞれの段階でサイバー攻撃等に対するセキュリティー技術を持つ企業やそれらの技術を搭載した製品やサービスを提供する企業に投資している。
実質的な運用を担っているのはアリアンツ・グローバル・インベスターズで、テクノロジー株式の運用に豊富な経験を持っている。2020年12月末時点のポートフォリオに組み入れている銘柄の年間予想売上高成長率(組入比率に応じた加重平均)は25.0%となり、世界株式(MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス=ACWI採用銘柄)の7.3%と比較して成長魅力が大きなポートフォリオを実現している。同ファンドの7月末時点の組入れ銘柄数は46銘柄。投資対象は日本を含む世界の株式市場に上場する銘柄群となっているが、米国企業が88.2%を占め、実際には米国市場中心のポートフォリオになっている。
米国市場については、9月7日にゴールドマン・サックスが2021年の米国の成長率見通しを引き下げ、8日にはモルガン・スタンレーが米国株の投資判断を「アンダーウエート」に引き下げたことが市場に伝わって株価が下落した。
8日発表の米地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、「新型コロナ・デルタ株による感染拡大の影響でレストランや旅行関連の落ち込みが大きい」と指摘され、「全体的に経済成長ペースが鈍った」と報告された。「S&P500」が9月2日まで、「NASDAQ総合指数」が9月7日までは史上最高値を更新してきたが、今後もこれまでの上昇力を保ち得るのかどうかわからない状況といえる。8月下旬以降に同ファンドの基準価額が大きく値上がりしているが、市場全体に高値警戒感が強まり、先行きにも不透明感が台頭する中で、同ファンドが投資対象とするサイバーセキュリティー業界など確かな成長が見込まれる企業群が選り好まれて上伸する動きになってきているようにみえる。
同ファンド(為替ヘッジなし)の過去のパフォーマンスを振り返ると、2021年8月末時点でトータルリターン1年が52.53%となり、「S&P500」(配当込み、円ベース)の36.70%、「MSCI ACWI」(配当込み、円ベース)の34.30%を大きく上回る。3年トータルリターン(年率)でも同ファンドの29.21%に対して、「S&P500」は17.72%、「MSCI ACWI」が14.38%と同ファンドの優位性に変わりがない。
ただ、価格のブレを表すリスク(標準偏差)は高くなる傾向がある。設定来の最大下落率は1カ月間でマイナス15.92%(2018年10月)ということもあった。短期間の下落が気になる場合は、毎月一定額を購入する「投信積立サービス」を活用するなど、購入方法を検討する必要はあるだろうが、高い成長が期待されるサイバーセキュリティー業界は、長期に魅力的な投資対象といえるのではないだろうか。
提供:モーニングスター社