制度発足20周年を迎えたDC制度、iDeCoの8月の新規加入者は4.4万人で4万人以上が7カ月継続

 国民年金基金連合会が10月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると、8月の新規加入者数は4万3998人で加入者総数は214万313人になった。月間の新規加入者は、今年2月以来、7カ月連続で4万人を超える高水準の新規加入が継続している。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は3326事業所、対象従業員数は2万1111人になった。DC(確定拠出年金)制度は、この10月1日で制度発足からちょうど20周年を迎えた。

 8月の新規加入者の内訳は、第2号加入者は3万6011人(前月3万9734人)、第3号加入者は2228人(前月2669人)となった。なお、第2号加入者の中では、企業年金なしの新規加入者が2万1277人(前月2万4356人)、共済組合員(公務員)の新規加入者は9331人(前月9441人)となった。

 8月の新規加入者数は全体では前年同期比20.1%増で7月の48.9%増より伸び率が鈍化したが、2020年11月に15.0%増と前年同月比2ケタの伸び率になって以来、2ケタ台が定着している。月間新規加入者数も21年2月以来4万人以上を連続しているが、2017年5月以来、長らく3万人前後の月間新規加入者数で推移していたことから比較すると、新規加入の水準が上積みされている。

 iDeCoの新規加入が増大している背景は、コロナ禍など従来にない世界規模な環境変化が発生し、将来生活への不安感が高まったことなどがあると考えられる。国民全体に外出の自粛が呼び掛けられる中、ホテルや観光施設、小売店など接客する店舗等での営業自粛や営業時間の短縮など、コロナ禍によって突然、職を失った人や、収入が激減した人が多かった。戦争などの大きな事変と異なり、コロナ・パンデミックや気候変動に伴う風水害などによる生活環境の変化では、安心して生活を続けるためには、日ごろの蓄えの重要性を考えさせられた人が多かったと考えられる。

 加えて、昨今のiDeCoへのニーズの高まりは、過去数年間の「株高の時代」ために、iDeCoを含めたDC制度での資産運用が非常にうまくいっているということが広まってきた効果も小さくないと考えられる。たとえば、フィデリティ投信が9月28日に発表した「フィデリティ1万2000人調査結果」によると、企業型も含めたDC加入者の約4割(39%)がDCの運用は「うまくいっている」と成功体験を獲得していることが分かったという。この運用で成功している人の回答を掘り下げると、「投資信託のみで運用している人」で運用がうまくいっている人は企業型で47%、個人型で50%を占めた。元本確保型のみで「運用がうまくいっている」と回答した人は企業型で24%、個人型で32%という結果だった。投信の活用を積極的に行った人が満足度の高い運用ができているということになる。

 また、近年では、スマートフォンのアプリなどで、企業型や個人型を問わず、DCの資産状況が簡単に確認できるようなツールの普及もあって、以前に比べると、DCが身近な存在になってきていることも制度の普及を後押ししていると考えられる。

 一方で、iDeCoへの関心の高まりは、iDeCoの内容充実へのインセンティブにもなり、iDeCoを提供する運営管理機関が競うように商品内容をブラッシュアップすることによって、より加入者増につながるという好循環になっている。この10月1日付で、みずほ銀行が運営管理機関を務める「JAバンクのiDeCo<みずほプラン>」の運用商品が6商品追加され「One国際分散投資戦略ファンド(目標リスク6%)<DC年金>(愛称:THE GRIPS 6%<DC年金>)」や「グローバルESGハイクオリティ成長株ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:未来の世界(ESG))」、「農林中金<パートナーズ>おおぶねグローバル(長期厳選)」など、最新の運用機能を備え、また、公募投信の市場での人気が高いファンドが追加されている。

 同じく、1日には、損保ジャパンDC証券のiDeCoでは、運用商品を16商品追加する大幅な拡充も実施された。こちらも、「投資のソムリエ(ターゲット・イヤー)」、「投資のソムリエ<DC年金>リスク抑制型」や「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」など話題のファンドを多く採用している。
提供:モーニングスター社
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