「バランス(8資産均等型)」がトップ10入り=ネット証券の投信積立契約件数ランキング21年9月

 大手ネット証券3社の投信積立契約件数ランキング(月次、21年9月)では、トップ3に大きな変動はなかった。第1位から第3位までは、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」「sMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックス」と変わらず、3位に同点で前月5位だった「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」が入った。その中で、トップ10内に圏外から「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」が入ってきたことが目立った。先月から、先進国株価指数であるMSCIコクサイに連動するファンドが上位を占めるようになるなど、株式ファンドの長期積立というオーソドックスな「積立投資の王道」に流れが戻ったような印象だったが、バランス型ファンドへの関心は、株式市場の先行きへの不安感の表れといえるのだろうか?

 ランキングは、定期的に月次の投信積立契約件数トップ10を公表しているSBI証券、楽天証券、マネックス証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、3社のランキング10位までのファンドの点数を集計した。

 「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、国内・先進国・新興国の株式と債券に加え、国内REITと日本を除く先進国REITの8つの資産に均等に投資するバランス型ポートフォリオで運用する。バランス型の中で比較すると、株式やREITといったリスク資産への配分比率が大きいことから、バランス型の中で比較的リスクが高い「バランス」に区分されている。直近の運用成績も8月末時点で、過去3年間のトータルリターン(年率)が8.11%、リスク(標準偏差)が11.83%になっている。トータルリターンの水準が「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」の15.30%に比べて低くなっているが、その分、リスクも先進国株式の19.44%と比較して低くなっている。安定的な運用を考える投資家に選ばれるファンドといえるだろう。

 「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」が投資する8つの資産のそれぞれの過去10年間のパフォーマンスを代表的なインデックスの動きで見てみると、先進国株式(MSCIコクサイ・配当込み・円ベース)が8資産の中で一貫して高いパフォーマンスをあげ、特に2020年3月のコロナショック後の高いリターンが目立っている。20年3月末を起点とすると21年9月末時点で先進国株式はプラス73.73%で、新興国株式(MSCIエマージング・マーケッツ・配当込み・円ベース)のプラス61.03%、国内株式(TOPIX配当込み)のプラス49.20%より頭一つ抜け出ている。この上昇率の大きさが、先進国株式の割高感につながっている。

 実際に、先進国株式は9月の月次では、インデックスがマイナス2.31%と下落している。これに対して、国内株式はプラス4.36%と出遅れた分を取り戻すような動きになっている。また、株式に比べて出遅れ感のあったREITも、国内外ともに出直り機運を強くしている。

 このように、先進国株式だけでなく、国内株式、新興国株式、REITなど出遅れていた資産への見直し買いといえるような動きが強まってきていた。従来の投信積立契約件数ランキングは、米国のS&P500連動型インデックスファンドや先進国株式インデックスファンドがランキング上位を席巻していたので、その集中を是正する動きが出てきたのかもしれない。9月の動きは、まだ1銘柄だけがトップ10に入ってきたという限られた動きだが、これが、今後広がりを見せるのか注目したい。
提供:モーニングスター社
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