分散投資でリスクを抑制し安定した運用を−「株式のみ」と「4資産分散」の値動きをシミュレーション

 日米株式市場の揺れが収まらない。米金融政策の正常化に対する警戒感や、ウクライナ・台湾を巡る地政学リスク、そして新型コロナウイルスの感染長期化による世界経済への影響など懸念材料を抱えており、今後も、大幅下落も含めて値動きが大きくなることが想定される。分散投資によるリスクの抑制と安定した運用を意識したい。

 国内株式もしくは先進国株式のみに投資した場合と、両者に国内債券と先進国債券を加えた4資産に均等に分散投資した場合をイメージして、シミュレーションを行った。2000年1月末を起点(=10000)とし、2021年12月末までの値動きを確認した。国内株式には、モーニングスターカテゴリー「国内大型ブレンド」に属するファンドのリターンを指数化した「モーニングスターインデックス 国内大型ブレンド(単純)」を使用し、先進国株式は「モーニングスターインデックス 国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)(単純)」国内債券は「モーニングスターインデックス 国内債券・中長期債(単純)」先進国債券は「モーニングスターインデックス 国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)(単純)」を使用した。

 国内株式と4資産分散を比較すると、2021年12月末までの累積リターンは国内株式の57.81%に対し、4資産分散は118.16%(約2.2倍)と大幅に上回った。この差の背景要因としては、国内株式が2003年4月、2009年2月にいずれも起点から5割超(55.4%、56.6%)下落した水準にまで沈んだのに対して、4資産分散がその際の下落率をいずれも11%台に抑制したことが大きい。なお、国内株式が大底を付けた2003年4月は、米国の対イラク戦争、SARS(重症急性呼吸器症候群)の流行、そして大手銀行の経営不安などが背景にあり、2009年2月はリーマンショックの影響がある。

 次に、先進国株式と4資産分散を比較すると、累積リターンは先進国株式が213.22%(約3.1倍)と4資産分散の118.16%(約2.2倍)を上回った。両者に大幅な差がついたのは、コロナショック後にデジタルトランスフォーメーション(DX)関連などハイテク株が人気化し、先進国株式をけん引する米国株式が大幅高となったことがある。コロナショック時の2020年3月末時点の累積リターンは、先進国株式が69.03%、4資産分散は62.31%であり、足元の比較よりも差は小さい。

 過去を見ると、2006年半ば−2008年半ば、2013年半ば−2015年半ば、2016年後半−2020年初めにかけて、先進国株式が4資産分散を大幅に上回ったが、いずれもその後、先進国株が下落し、同水準となった。

 米国株の先行きには不安がある。ここ数年の株価上昇を支えてきた米国の緩和的な金融政策は正常化に向かっている。ウクライナ、台湾を巡るロシア、中国との緊張も懸念される。秋に予定されている中間選挙の行方も気になるところだ。足元で大幅に開いている先進国株式と4資産分散の差が縮まることも想定される。

 シミュレーション上の2021年12月末までのリスク(標準偏差・年率)は、国内株式の17.99%、先進国株式の18.59%に対して、4資産分散は9.93%に留まる。先進国株式は上昇幅も大きいが、コロナショック後の急騰が示すようにリスクも大きい。4資産分散は、相対的にリスクを抑制して安定的に上昇している。日米株式の先行き懸念が高まる中、分散投資を改めて見直したい。
提供:モーニングスター社
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