米国株の先行き不安で意識される分散投資、連動性の低いカテゴリーに関心

 米国株式の先行き不安が高まっている。米国株式ファンドに投資している投資家にとっては、何とも落ち着かない状況にあるが、今後の投資継続を念頭に、分散投資を考えるきっかけとしたい。

 NYダウは8月30日時点で昨年末比12.51%、S&P500は同16.37%下落した水準にある。とはいえ、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引締めの長期化観測を背景に米景気減速懸念が深まっており、一段安のリスクがある。「慌てずに回復を待つ」、「積立投資であれば購入口数が増える」とは思っていても、投資先が米国株式一本である場合には、不安が募る。本来ならば、米国株式が上昇している心安らかなときにこそ腰を落ち着けて分散投資によるリスク抑制を考えるのが望ましいのだが、今後も長期にわたって投資を継続するのであれば、先行き懸念が深まっている今考えることにも、意味があろう。

 2022年7月までの10年間の月次リターン(2012年8月〜2022年7月)に基づいて、米国株式に投資するファンドからなるモーニングスターカテゴリー「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」と他カテゴリー(ブル・ベア型除く、本数10本未満のカテゴリー除く)との相関係数を調べた。相関係数とは、2つのデータ間の連動性を1〜−1までの範囲で示したもので、1に近いほど連動性が高く、0は無関係、−1に近いほど逆の動きをするとされる。米国株式ファンドとの分散投資効果を考えた場合には、−1に近いカテゴリーに属するファンドが望ましいということになる。

 「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」との相関係数の低いカテゴリーを3つ見ると、−0.08の「国内債券・中長期債」を始め、0.06の「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジあり)」、0.34の「国際債券・グローバル・含む日本(為替ヘッジあり)」となった。国内債券は、足元の10年債利回りが0.2%台と一時に比べると上昇したものの依然として低水準であり、金利低下(債券価格の上昇)余地は小さい。一方、先進国債券の足元の利回りは、米10年債が3%台、ドイツ10年債は1.5%近辺。金利上昇時には価格低下に見舞われたが、特に米国債において、金利低下(債券の価格上昇)の期待が可能な水準にある。

 参考までに、カテゴリー「国内大型ブレンド」との相関係数の低い3カテゴリーを見ると、「国内債券・中長期債」が−0.21、「国際債券・グローバル・除く日本(為替ヘッジあり)」が−0.02、「国際債券・グローバル・含む日本(為替ヘッジあり)」が0.21と、「国際株式・北米(為替ヘッジあり)」と同じ顔ぶれとなった。

 定石ではあるが、米景気減速懸念から日米株式の先行き不透明感が深まる中で、日本及び先進国の債券に投資するファンドに対する意識が高まりそうだ。
提供:モーニングスター社
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