「ガーナやカザフスタン、イラクに注目」――T.ロウプライスのマイク・コネリアス氏
米大手運用会社T.ロウ・プライス・グループで新興国債券運用チームのリード・ポートフォリオ・マネジャーを務めるマイク・コネリアス氏がこのほど来日。今後の新興国債券市場の見通しについて聞いた。同氏は数週間ほど前にも東欧などの新興国各国を訪問したばかりと、積極的に現地に出向き情報収集に努めている。また、T.ロウ社の新興国債券関連の運用資産は08年12月末の17億ドルから、09年12月末の57億ドルへ拡大している。(聞き手は辻哲)
―新興国債券に対する現状の見方は
コネリアス氏「08年の金融危機時には、新興国債券のスプレッド(米国債との利回りの差)は急拡大したが、新興国のファンダメンタルズは大きく悪化したわけではない。現状では新興国債券のスプレッドは縮小傾向にある。また、新興国の政府債務はGDP(国内総生産)に対する比率が低下しているが、先進国は景気悪化の影響で上昇している」
「新興国の債券は自国の経済成長によって格付が引き上げられる可能性があるが、先進国はギリシャやスペインのように格付が引き下げられた国々が出ており、今後も引き下げられる可能性の高い国がいくつかある。米国でさえ、最高格付のAAAを維持できるか疑問視する見方があるくらいだ」
―新興国に対する懸念材料は
「インフレが一番大きい懸念材料だ。代表的な総合商品指数のCRB指数や原油価格が再度上昇してきており、新興国では再度インフレ圧力が高まる可能性がある。ブラジルは10年の前半にも利上げする見通しがある」
―今後、投資機会が期待できる国、地域は?
「小規模で、未開拓なフロンティア市場の国々は債券スプレッドにまだ開きがあり、より大きな投資魅力があると考えている。特に、ガーナやカザフスタン、イラクなどは注目されるだろう。一方、09年前半と比較して、ロシア、ブラジル、メキシコなどの主要な新興国各国のソブリン債のスプレッドは縮小傾向にある。これらの国々は『JPMorgan EMBI Global』(代表的な新興国債券インデックス)のスプレッドよりも縮小している。(これらの国々の)今後の債券価格の上昇は緩やかなものになるだろう」
―債券の種別ではどのような見方を持っているか
「新興国債券市場における社債の魅力は今後大きく高まるものと考えている。新興国市場におけるソブリン債と社債のスプレッドの過去の推移を比較すると、2000年代前半は社債がソブリン債券を下回っていた。しかし、サブプライムローン問題以降は逆転し、現在は社債がソブリン債を上回っている。今後は再度社債のスプレッドがソブリン債のスプレッドを下回るのではないだろうか」
「また、新興国の社債は先進国の同業種の社債と比較しても魅力的だ。メキシコの情報・通信業『アメリカ・モービル』とAT&Tを比較すると格付けはAT&Tのほうが高い。しかし、負債EBITDA比率(税引前、利払前の償却前利益と有利子負債の比率)は『アメリカ・モービル』のほうが良い。米国の総合石油会社マラソンオイルとロシアのルクオイルを比較しても同様のことが言える。また、一般的に新興国の銀行セクターは先進国の金融グループと比較して、伝統的なビジネスモデルを維持しており、資本基盤が強い。JPモルガン、HSBCなどとロシアのズベルバンク、ブラジルのバンコ・ブラデスコを比較するとTier1(中核的自己資本)比率が新興国の銀行のほうが高い」
―注目している個別銘柄は
「新興国における中間層の消費を取り込める企業や資源分野などで世界的なリーダー企業となっている銘柄に注目している。世界最大手のパルプメーカー『フィブリア』やメキシコの白物家電メーカーの『マーベー』、国際的な食品会社『JBS』、ロシアのパイプライン会社『TMK』などにも注目している。主要新興国のスプレッドは縮小したが、こうした個別の社債への投資は魅力がある」
「また、現地通貨建て債券は利回りが高く注目している。インフレ期待がイールドカーブに織り込まれつつある国々の債券は投資妙味がありそうだ」
― 一方で、新興国の社債市場には流動性について懸念が残る。
「(流動性については)確かにまだ低い面があるが、エマージング社債市場は過去10年以上にわたり年率13.5%(平均)の成長を続けている。市場規模でも、徐々に米国のハイ・イールド債券市場と肩を並べるくらいの規模に近づいてきている」
―最後に新興国通貨の見通しは
「新興国通貨は商品価格の上昇、資本流入によって安定した推移となると思われる。ただ、個別国の見通しではブラジルで10年に選挙が予定されていることから、ブラジル・レアルのボラティリティが高まる可能性がある」
提供:モーニングスター社
―新興国債券に対する現状の見方は
コネリアス氏「08年の金融危機時には、新興国債券のスプレッド(米国債との利回りの差)は急拡大したが、新興国のファンダメンタルズは大きく悪化したわけではない。現状では新興国債券のスプレッドは縮小傾向にある。また、新興国の政府債務はGDP(国内総生産)に対する比率が低下しているが、先進国は景気悪化の影響で上昇している」
「新興国の債券は自国の経済成長によって格付が引き上げられる可能性があるが、先進国はギリシャやスペインのように格付が引き下げられた国々が出ており、今後も引き下げられる可能性の高い国がいくつかある。米国でさえ、最高格付のAAAを維持できるか疑問視する見方があるくらいだ」
―新興国に対する懸念材料は
「インフレが一番大きい懸念材料だ。代表的な総合商品指数のCRB指数や原油価格が再度上昇してきており、新興国では再度インフレ圧力が高まる可能性がある。ブラジルは10年の前半にも利上げする見通しがある」
―今後、投資機会が期待できる国、地域は?
「小規模で、未開拓なフロンティア市場の国々は債券スプレッドにまだ開きがあり、より大きな投資魅力があると考えている。特に、ガーナやカザフスタン、イラクなどは注目されるだろう。一方、09年前半と比較して、ロシア、ブラジル、メキシコなどの主要な新興国各国のソブリン債のスプレッドは縮小傾向にある。これらの国々は『JPMorgan EMBI Global』(代表的な新興国債券インデックス)のスプレッドよりも縮小している。(これらの国々の)今後の債券価格の上昇は緩やかなものになるだろう」
―債券の種別ではどのような見方を持っているか
「新興国債券市場における社債の魅力は今後大きく高まるものと考えている。新興国市場におけるソブリン債と社債のスプレッドの過去の推移を比較すると、2000年代前半は社債がソブリン債券を下回っていた。しかし、サブプライムローン問題以降は逆転し、現在は社債がソブリン債を上回っている。今後は再度社債のスプレッドがソブリン債のスプレッドを下回るのではないだろうか」
「また、新興国の社債は先進国の同業種の社債と比較しても魅力的だ。メキシコの情報・通信業『アメリカ・モービル』とAT&Tを比較すると格付けはAT&Tのほうが高い。しかし、負債EBITDA比率(税引前、利払前の償却前利益と有利子負債の比率)は『アメリカ・モービル』のほうが良い。米国の総合石油会社マラソンオイルとロシアのルクオイルを比較しても同様のことが言える。また、一般的に新興国の銀行セクターは先進国の金融グループと比較して、伝統的なビジネスモデルを維持しており、資本基盤が強い。JPモルガン、HSBCなどとロシアのズベルバンク、ブラジルのバンコ・ブラデスコを比較するとTier1(中核的自己資本)比率が新興国の銀行のほうが高い」
―注目している個別銘柄は
「新興国における中間層の消費を取り込める企業や資源分野などで世界的なリーダー企業となっている銘柄に注目している。世界最大手のパルプメーカー『フィブリア』やメキシコの白物家電メーカーの『マーベー』、国際的な食品会社『JBS』、ロシアのパイプライン会社『TMK』などにも注目している。主要新興国のスプレッドは縮小したが、こうした個別の社債への投資は魅力がある」
「また、現地通貨建て債券は利回りが高く注目している。インフレ期待がイールドカーブに織り込まれつつある国々の債券は投資妙味がありそうだ」
― 一方で、新興国の社債市場には流動性について懸念が残る。
「(流動性については)確かにまだ低い面があるが、エマージング社債市場は過去10年以上にわたり年率13.5%(平均)の成長を続けている。市場規模でも、徐々に米国のハイ・イールド債券市場と肩を並べるくらいの規模に近づいてきている」
―最後に新興国通貨の見通しは
「新興国通貨は商品価格の上昇、資本流入によって安定した推移となると思われる。ただ、個別国の見通しではブラジルで10年に選挙が予定されていることから、ブラジル・レアルのボラティリティが高まる可能性がある」
提供:モーニングスター社