ETFインタビュー:米国で進む個別株からETFへの資金シフト=楽天証券・新井氏

 米国など海外の取引所に上場するETF(上場投資信託)を、国内のネット証券を通じて取引する動きが個人投資家の間で広がっている。米国のETF市場の動向と日本の個人投資家に人気の商品について、楽天証券・外国株式事業部長の新井党氏に聞いた。

 ――08年の世界的な金融市場の混乱の中、海外ETFの売買動向はどのように変化したか。

 「リーマン・ショック以降、投資家は複雑な仕組みの金融商品を避け、よりシンプルで透明性が高く、低コストで分散投資ができるETFに注目した。米国ではすでに個別株からETFへの資金シフトがかなり進んでおり、個人投資家だけでなくヘッジファンドや年金基金など機関投資家の資金もETF市場に流入している」

 「08年10〜12月には米国市場全体の売買代金に占めるETFの割合が4割に達した。また、同年12月には米上場銘柄の売買高トップ10のうち8銘柄がETFとなった。相場が暴落した10月に当社では新規の口座開設が1年間で1番増えたが、その中には国内だけでなく、海外のETFを始めようとした個人投資家も多くいたようだ」

 ――楽天証券が扱っている海外ETFで最も人気があるのはどの商品か。

 「1月末時点での資産残高ベースでみると、1位は新興国の株式に幅広く投資する『iシェアーズ・MSCI・エマージング・マーケット・インデックス・ファンド(EEM)』だ。これは新興国の株式が売られすぎたとはいえ、個人投資家が今後の成長を期待していることの表れと言えるだろう」

 「2位は北米を除く先進国の株式に投資する『iシェアーズ・MSCI・EAFE・インデックス・ファンド(EFA)』となっている。このほかにも、EFAのように分散投資により安定的な運用を目指すポートフォリオの『コア(核)』となるETFが上位にランクインしている」

 「一方で、特定の投資分野を一本釣りする感覚で積極的なリターンを狙う『サテライト(衛星)』の役割を果たすETFも注目度が高い。ランキングの6位にはインド、7位にはブラジルの株価指数に連動するETFが入っている。また、米国にはテーマ型ETFと呼ばれる商品もあり、例えばオバマ米政権で注目される環境関連株に焦点を当てた『iシェアーズ・S&P・グローバル・クリーンエネルギー・インデックス・ファンド(ICLN)』というETFなどがある」

 ――今後ニーズがあると考えているのはどのようなETFか。

 「国際投信投資顧問のグローバル・ソブリン・オープン(通称:グロソブ)のように先進国の債券に幅広く投資するETFがあれば良いと思う。残念ながら、グロソブがベンチマークとしている『シティグループ世界国債インデックス』に連動するETFはまだ存在しない。ただ、『シティグループ世界国債インデックス』と同じような働きをする代替的な指数とこれに連動するようなETFができれば、検討する価値はあるだろう」
提供:モーニングスター社
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