プロが明かす機関投資家のETF投資最新トレンド、QE2や日銀のETF購入で「変化」(2)

 セミナーでは、日米の年金運用におけるETF(上場投資信託)利用の現状についても報告された。米国の事例として、米化学大手ダウ・ケミカルの年金基金運用担当者へのビデオインタビューの映像を紹介。同基金は運用額が190億ドル(約1兆4600億円)超で、米国最大規模のETF投資家として知られる。

 同基金は幅広いETFを利用し、株式ポートフォリオの4分の3以上をETFが占める。ETFを重視する理由の1つが「機動性」だ。年金の運用では、どのような資産にどの程度の割合で投資するかという「戦略的資産配分」だけでなく、資産構成をどれだけ迅速に変更できるかという「動的資産配分」も重要になるとされる。このため、同基金では十分なパフォーマンスを上げることができない運用マネジャーがいれば、その部分をETFなどを利用して指数への連動を目指す「パッシブ」運用に即座に切り替える。こうした機動性は特に、最近のようなボラティリティ(変動性)が高い市場環境において求められるという。

<年金のETF利用、日本ではまだ進まず>

 一方、日本アイ・ビー・エム 財務副部長・年金担当の大輪秋彦氏は、「日本の年金運用ではETFはまだそれほど使われていない印象だ」と指摘。同氏によると、日本の年金はこれまで、伝統的な4資産(国内外の株式・債券)への分散に縛られる傾向があった。このため、「信託銀行や投資顧問が組み立てた商品を年金の運用で使用することができ、さらに相当安いフィー(手数料)で使えるのであれば、なぜあえて新たにETFを使うのかといった疑問があり、それが普及の障害になっている」(大輪氏)。

 ただ、「これからは日本の年金も変わっていく」と同氏は予想する。日本アイ・ビー・エムでも98年からS&P500指数に連動する代表的なETF「SPDR S&P 500」を使用。ポートフォリオのリバランスを行う際に同ETFを利用している。最近では、ヘッジファンドの投資戦略を組み込んだ「ヘッジファンド型ETF」に投資するなど、先進的な取り組みをしている年金もあるとされる。今後は、先進国株式を対象とした指数に連動するファンドを保有している年金が、米国市場に弱気の場合に米国株式のETFをショート(カラ売り)するなど、「運用の『味付け』としてETFが利用されるようになるのではないか」と同氏はみている。

 さらに、大輪氏によると、ETFには会計上の利点もある。例えばプライベート・エクイティのような価格が公表されていない商品については、「会計士が認めなければ、年金資産として認められない可能性も極端なことを言えばあり得る」(同)。一方、ETFには伝統的な資産以外のオルタナティブ(代替)資産を対象としたものも含め多種多様な商品があるうえに、これらは上場株と見なされるため、会計上の扱いについて心配する必要がないのは大きいという。

 なお、DC(確定拠出年金)については、「日本ではまだ市場が非常に小さく、商品が少ない。ETFがDCで取り扱われるようになれば、制度加入者にとって選択肢が広がり、DCの発展につながる」(同)とした。

<ニューヨーク証取、ETFの流動性供給に奨励金提供>

 ETF市場の拡大に向けた日米の証券取引所の取り組みも紹介された。ニューヨーク証券取引所 ETP部門責任者のローラ・モリソン氏は、同証券取引所では「LMM(リード・マーケット・メーカー)プログラム」という制度が重要な役割を果たしていると説明。同制度は、LMMとして参加する機関投資家に対して一定のスプレッドとボリュームでETF市場への流動性供給を求めるもので、こうした要件を満たしたLMMに見返りとしてリベート(奨励金)を提供する。これにより、ETF市場における流動性を改善できるほか、スプレッドの縮小といった取引の「質」を高めることが可能という。

 一方、東京証券取引所ではこれまでETFラインアップの多様化に力を入れ、08−10年度(11年3月末までの3カ年)の中期経営計画で掲げていた「ETFの商品数を100本にする」という目標を今年3月に達成した。東京証券取引所 執行役員の小沼泰之氏は引き続きETFの品ぞろえを拡充するとして、相場の下落局面でも利益を上げられるショート型のETFなど機関投資家の関心が高いと思われる商品を増やすことも検討する必要があると述べた。また、ETF取引の流動性の厚みを増すことにいっそう注力すると指摘。具体的には、11−13年度(14年3月末までの3カ年)の中期経営計画の目標に言及し、現在1%未満にとどまっている株式に対するETFの売買代金比率を13年度に5%まで拡大するとした。(坂本浩明)
提供:モーニングスター社
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