フィデリティ投信が日本版ISAセミナー開催、ポイントは恒久化とスイッチング、そして「アイサ」
資産運用世界最大手のフィデリティ投信は6日、14年から導入予定の日本版ISA(少額投資非課税制度)について、英国ISAとの比較を交え都内でセミナーを開催した。
日本版ISAは上場株式や投資信託の配当や譲渡益について非課税とする制度。日本版ISAと呼ばれるのは「Individual Saving Accounts」の頭文字をとった英国の制度を参考としているからだ。現行の配当・譲渡益に係る10%の軽減税率が14年1月から20%に戻ることの激変緩和措置として位置付けられている。
政府がまとめた14年導入予定の現行スキームによれば、非課税投資額の上限を毎年100万円とし、口座開設可能な3年間で投資総額の上限は300万円。非課税の維持期間は最長10年。途中での資産売却は可能だが、売却した部分の枠は再利用できない。口座は年間1人1口座で毎年新たな口座を開設することなどとなっている。
セミナーで講演したフィデリティ退職・投資教育研究所・所長の野尻哲史氏は現行スキームについて、「総額上限が少ないことや、年間1人1口座という管理の複雑さ、多大なシステム投資の割に金融機関へのメリットが少ないなど課題は多い」と指摘。その上で、金融庁はISAを老後の備えや教育支援など国民の自助努力の本格支援とするため期限を設けない恒久化を要望していることから、「本気度が伝わってくる」(野尻氏)とした。金融庁は要望スキームとして、投資総額を500万円以上とすることや、毎年新たな口座開設を不要とする原則一口座などを要望として挙げている。
次に野尻氏は日本版ISAとの比較として本場英国ISAの制度を紹介。大きな相違点として、英国ISAはその枠内であれば投資商品の乗り換え(スイッチング)ができる点、年間拠出上限額が1万1280ポンド(約149万円)となっている点を挙げた。年間拠出額は12で割り切れる数値に設定してあることから、「毎月積み立てにも向いている(日本は100万円)」(野尻氏)という。
英国ISAは広く普及している。ISAへの投資が可能となる16歳以上(日本は20歳以上)で45%が利用。そのポジションは11年度時点で3850億ポンド(50兆円)と英国個人金融資産の9.2%を占める。
日本証券業協会がまとめた英国ISAの状況によれば、年収が2万ポンド(約264万円)未満の低所得者層の口座開設者が全体の約6割を占め、1口座当たりの年間平均拠出額(11−12年度)は株式型ISAの拠出上限の半分である5500ポンド(約73万円)で止まっている。野尻氏は「所得が相対的に低い、特に若い世代の加入者が多い」点を指摘。また傾向として35歳以上でISAの利用者が急速に増加する点や約7割が投資信託で運用されていることも特徴として紹介した。
日本ではISAがどのような層に活用されるのか。野尻氏によれば、「統計から日本で一般的なISA認知度は低いものの、所得別で見ると年収700万円−1500万円の層が日本版ISAに前向き。また、投資家の4割がISAを積極的に利用したいと回答している」という。日本では制度を知っている人は利用してみたいと考えている人が多い。現在のスキームでは金融機関に大きなメリットはないとの見方が一般的だが、野尻氏によると、「金融機関はメリットがないからといってやらないわけにはいかない。今後金融機関による『陣取り合戦』が始まるだろうが、ISAは目的ではなく、投資を呼び込むためのツールとして位置付けられることになる」とした。
最後に野尻氏は、「ISAを『アイ・エス・エー』と呼ぶ人がいるが、英国では『アイサ』。制度とともにこの呼び方を浸透させてもらいたい」とセミナーを締めくくった。
提供:モーニングスター社
日本版ISAは上場株式や投資信託の配当や譲渡益について非課税とする制度。日本版ISAと呼ばれるのは「Individual Saving Accounts」の頭文字をとった英国の制度を参考としているからだ。現行の配当・譲渡益に係る10%の軽減税率が14年1月から20%に戻ることの激変緩和措置として位置付けられている。
政府がまとめた14年導入予定の現行スキームによれば、非課税投資額の上限を毎年100万円とし、口座開設可能な3年間で投資総額の上限は300万円。非課税の維持期間は最長10年。途中での資産売却は可能だが、売却した部分の枠は再利用できない。口座は年間1人1口座で毎年新たな口座を開設することなどとなっている。
セミナーで講演したフィデリティ退職・投資教育研究所・所長の野尻哲史氏は現行スキームについて、「総額上限が少ないことや、年間1人1口座という管理の複雑さ、多大なシステム投資の割に金融機関へのメリットが少ないなど課題は多い」と指摘。その上で、金融庁はISAを老後の備えや教育支援など国民の自助努力の本格支援とするため期限を設けない恒久化を要望していることから、「本気度が伝わってくる」(野尻氏)とした。金融庁は要望スキームとして、投資総額を500万円以上とすることや、毎年新たな口座開設を不要とする原則一口座などを要望として挙げている。
次に野尻氏は日本版ISAとの比較として本場英国ISAの制度を紹介。大きな相違点として、英国ISAはその枠内であれば投資商品の乗り換え(スイッチング)ができる点、年間拠出上限額が1万1280ポンド(約149万円)となっている点を挙げた。年間拠出額は12で割り切れる数値に設定してあることから、「毎月積み立てにも向いている(日本は100万円)」(野尻氏)という。
英国ISAは広く普及している。ISAへの投資が可能となる16歳以上(日本は20歳以上)で45%が利用。そのポジションは11年度時点で3850億ポンド(50兆円)と英国個人金融資産の9.2%を占める。
日本証券業協会がまとめた英国ISAの状況によれば、年収が2万ポンド(約264万円)未満の低所得者層の口座開設者が全体の約6割を占め、1口座当たりの年間平均拠出額(11−12年度)は株式型ISAの拠出上限の半分である5500ポンド(約73万円)で止まっている。野尻氏は「所得が相対的に低い、特に若い世代の加入者が多い」点を指摘。また傾向として35歳以上でISAの利用者が急速に増加する点や約7割が投資信託で運用されていることも特徴として紹介した。
日本ではISAがどのような層に活用されるのか。野尻氏によれば、「統計から日本で一般的なISA認知度は低いものの、所得別で見ると年収700万円−1500万円の層が日本版ISAに前向き。また、投資家の4割がISAを積極的に利用したいと回答している」という。日本では制度を知っている人は利用してみたいと考えている人が多い。現在のスキームでは金融機関に大きなメリットはないとの見方が一般的だが、野尻氏によると、「金融機関はメリットがないからといってやらないわけにはいかない。今後金融機関による『陣取り合戦』が始まるだろうが、ISAは目的ではなく、投資を呼び込むためのツールとして位置付けられることになる」とした。
最後に野尻氏は、「ISAを『アイ・エス・エー』と呼ぶ人がいるが、英国では『アイサ』。制度とともにこの呼び方を浸透させてもらいたい」とセミナーを締めくくった。
提供:モーニングスター社