「海外資産を対象としたETF」に期待――東証・上場部商品部企画担当課長・紙谷氏

 個人投資家の間では、ETF(上場投資信託)の人気が高くなってきている。また、今年は東京証券取引所にすでに10本、大阪証券取引所で2本上場しており、上場するETFの銘柄数も増加傾向にある。現在、最も多くのETF銘柄が上場している東京証券取引所の上場部商品企画担当課長の紙谷俊明氏に東証のETFに対する取り組み、足元の売買動向などについて聞いた。

 ――2008年度下半期(2008年10月−2009年3月)と比べて、2009年度上半期(2009年4月−9月)の東京証券取引所に上場するETFの売買動向はどのような状況だったか
 紙谷氏「2008年度下半期は、リーマン・ショックなどでTOPIXなどが大きく変動し、個人投資家の間でETFへの関心が高まったようだ。ETF市場全体の1日の平均売買代金(ToSTNetを除く)は、2008年度下半期の約80億円に対して、2009年度上半期は約70億円と小幅ながら低下しているものの、売買代金で個人投資家の占める割合は引き続き高い水準で推移している」

 ――個別銘柄ではどういったETFの売買高が多いか
 紙谷氏「全般的な傾向として、TOPIXや日経平均に連動するETFが、個別銘柄の売買代金上位に来ることに変わりはない。今年前半は『上場インデックスファンド中国株A(パンダ)CSI300』や『NEXT FUNDS ブラジル株価指数・ボベスパ連動型上場投信』『上場インデックスファンドFTSE 日本グリーンチップ35』など、個人投資家にもコンセプトが分かりやすい銘柄に注目が集まったようだ」

 ――東証では2010年度中にETFの上場銘柄数を100銘柄にする目標を掲げている。今後、どのような分野の銘柄を増やしていきたいか
 紙谷氏「海外資産を対象としたETFを増やしていきたいと思っている。幅広い種類・地域のETFを上場することで、分散投資の選択肢を広げることができればと考えている」

 ――現在、外国法人や個人投資家と比較して、日本の機関投資家の売買高が少ないようだが
 紙谷氏「是非、国内の機関投資家にも積極的に利用してもらいたいと考えている。コモディティETFや外国ETFを分散投資の一つの手法として着目してもらえたらと考えている」

 ――市場価格と純資産額とのカイ離に関して、どのような対応を講じているか?
 紙谷氏「当取引所では、外国籍のETFの上場に際して、マーケットメーカー的な役割を担う『外国ETFサポート・メンバー』と、貸借取引として選定されることを義務づけている。また、投資家に向けてWEBサイト上でカイ離率を日々公表しているので、参考にしていただきたい」

 ――今後のETFに関する展望などを
 紙谷氏「現状はまだ、欧米の証券市場と比較してETFの銘柄数が少ないと考えている。国内の投資家がETFで十分なポートフォリオを構築できるように、幅広い地域、アセットクラスのETFをそろえていきたいと考えている。そのために、欧米市場に習うべきところは習い、環境整備を推し進めていきたいと考えている」
提供:モーニングスター社
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