バンガード・債券評価のプロはこう見る―米利上げのタイミング、注目の新興国は?

 インデックスファンド運用最大手バンガードで債券の評価やリスク分析を行うバンガード・タクサブル・クレジット・リサーチ・グループのシニア・アナリストであるジョナサン・レムコ博士はこのほどモーニングスターのインタビューに応じ、「新興国の財政は全般的に先進国より良好であり、格付けは引き上げ傾向にある」として新興国の債券に強気の見方を示した。新興国のなかでもチリとメキシコがマクロ経済の堅調さと債券の割安度の観点から投資妙味が大きいという。チリは経済成長や健全な財政に加え、政治的なリーダーシップが魅力。メキシコは輸出の8割が米国向けであり、米景気回復の恩恵を受けやすいほか、政府主導でエネルギーやインフラなどの改革を進めている点が注目だとした。

 マーケットで注目を集める米利上げのタイミングについて、レムコ博士は15年の終わりか16年の初めと予想し、その後0.25%ずつ引き上げ、最終的に2.0−2.5%にすると見ている。もっとも、「イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は利上げが事前に織り込まれるよう、市場と十分にコミュニケーションを取る」ことから、債券価格が大きく変動する事態は避けられる可能性が高い。ドルは今後3−6カ月上昇基調が続く見通し。ドルに対して新興国通貨が下落すれば、投資の呼び込みや輸出企業の競争力強化につながるため、新興国経済にプラスだという。

 一方、レムコ博士は欧州経済の先行きに懸念を示した。特に西欧諸国の多くはゼロ成長かマイナス成長になり、デフレに陥るリスクがあるとする。同氏は財政再建や景気回復に向けたEU(欧州連合)の団結力にも疑問を抱いており、「緊縮財政に対してドイツが前向きである半面、イタリアやフランスが反対するなど意見の食い違いが目立つ」と述べた。また、ウクライナ情勢をめぐるロシアの対応が不透明だとして、再び対立が深まった際の欧州への影響を警戒している。ECB(欧州中央銀行)の追加緩和は欧州債券の買い材料となったが、同博士は投資に非常に慎重だ。

 日本については、アベノミクスの財政・金融政策を評価する一方、「第3の矢」である成長戦略の成果を期待を持って見守りたいとした。IMF(国際通貨基金)のデータによると日本はGDP(国内総生産)に占める政府債務残高の比率が200%を大幅に超え、先進国でも際立って高い状況にあることから、レムコ博士は「現状の借入ペースは持続不能」と指摘。“債務の罠”から抜け出すためにも、人口減少への対応が課題となる中、さらなる投資により成長率を高めることが重要との考えを示した。

 レムコ博士は債券にかかわらず投資全般において、「長期・分散・低コスト」の3点を心掛けることが大切であるとアドバイスする。バンガードは10月、米国以外の主要な債券市場全体へ分散投資する米国上場ETF(上場投資信託)「バンガード・トータル・インターナショナル債券ETF(米ドルヘッジあり)(BNDX)」を国内で提供開始した。先進国のみならず、新興国も含め幅広い国・地域への分散投資が可能な商品として注目される。
提供:モーニングスター社
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