ターゲット・デート・ファンド、今後10年で確定拠出年金の“主流”に=バンガードのアトゥカス氏

 バンガード・リタイヤメントリサーチセンター所長のステファン P アトゥカス氏はこのほどモーニングスターの取材に対し、米国では多くの企業の確定拠出年金のデフォルト商品としてターゲット・デート・ファンドが採用されていると述べ、「今後10年でデフォルト商品の大半がターゲット・デート・ファンドになる」と予想した。米投資信託協会によると、米国の確定拠出年金全体に占めるターゲット・デート・ファンドの割合は残高ベースで13年末に15%と、06年末時点の5%から急拡大しており、今後もシェア拡大が予想されている。

 ターゲット・デート・ファンドは退職年に向けてリスク資産の比率が低下するように運用される。デフォルト商品とは確定拠出年金の加入者が運用を開始した際、最初に投資対象となる商品だが、日本では元本割れリスクのない定期預金が主流だ。バンガードでグローバルな老後資金に関する方針や戦略策定について法務面から取り組むデニス シモンズ氏は、米国で確定拠出年金の投資先としてターゲット・デート・ファンドが普及している背景として、「政府がターゲット・デート・ファンドを非常に合理的な運用手法と推奨していることが、加入者に安心感を与えている」とみる。

 例えば、米国では06年にセーフハーバーと呼ばれる事業主の免責ルールが定められた。これにより、デフォルト商品としてターゲット・デート・ファンドを設定した場合でも、一定の要件を満たせば仮に運用で加入者が損失を被っても損害賠償責任を請求されることがなくなり、導入に弾みがついたという。

 アトゥカス氏は、「米国人は日本人と比較してリスク志向が強いと言われるが、米国においても確定拠出年金が導入された当初は、元本確保型へ資金を振り向ける加入者が大半であった」とする。その後、ターゲット・デート・ファンドの普及に加え、分散投資の効果が知られるようになったことで、株式などリスク資産への投資が一般的になったとされる。シモンズ氏は、退職後もインフレへの対応などを考えると「株式を一定比率組み入れるべき」と指摘。米国では株式への長期投資が有効であると認識されており、日本でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株式への投資比率を引き上げたことは評価できるとした。

 なお、モーニングスターの調べでは、15年4月末時点における日本の確定拠出型年金専用ファンドにおけるターゲット・デート・ファンドの残高ベースのシェアはわずか0.52%と、普及が進んでいないのが現状。確定拠出型年金は主婦や公務員を加入者に含めるなど制度面での改革が検討されるなか、運用商品のラインアップにも変化が現れるか注目される。
提供:モーニングスター社
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