<米利上げの影響>「利上げ=債券安」は本当か? ハイイールド債、バンクローンに“落とし穴”

 FRB(米連邦準備制度理事会)は16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でリーマン・ショックがあった08年以降7年近く続いた実質的なゼロ金利政策を解除した。FRBによる超低金利政策の終焉は国内投信市場にも影響を与える可能性が高い。米利上げによる金利上昇は債券価格の下落要因となることから、特に注目されるのは海外債券ファンドへの影響だ。国内公募追加型株式投資信託(確定拠出年金向けおよびラップ口座専用、ETF等除く)のうち、国際債券型ファンドは15年11月末時点で1300本以上あるほか、純資産総額は約17兆円とモーニングスターの大分類別では最大。個人投資家にとって海外債券はポートフォリオの“コア(中核)”資産となっており、米金融政策転換後の市場動向への関心は高い。米モーニングスターアナリストの見解をQ&A形式で紹介する。

 Q:今回の利上げは米国債ファンドのパフォーマンス悪化につながるか?

 A:必ずしもそうではない。米国債には3カ月の短期国債から30年の超長期国債までさまざまな種類がある。FRBは利上げにより短期債の金利上昇を促すが、長期債は利上げに対して素直に金利上昇で反応するとは限らない。過去の利上げ局面を見ると、94−95年は短期金利だけでなく長期金利も並行して上昇したものの、04−06年は長期金利が小幅な上昇にとどまり、長期債ファンドのパフォーマンスがそれほど悪化したわけではなかった。長期金利の先行きを予想する上では、FRBが利上げを決定したという事実よりも、今後の利上げペースに対する市場の見通しを考慮することが重要だ。

 Q:ハイイールド債券は利上げ局面に強いと言われるが?

 A:ハイイールド債券は堅調に推移するだろう。利上げの前提となる米国経済の回復によって、ハイイールド債券を発行する企業の業績も堅調に推移するとみられるためだ。ただし、利上げペースが急激な場合は企業の資金調達コスト上昇により財務状況の悪化懸念が高まるため、注意が必要だ。

 Q:バンクローン(銀行などの金融機関が投資適格未満の企業に行う融資)は利上げ局面では有望か?

 A:バンクローンは変動金利商品であるため、金利上昇に強いと考えられている。多くの場合、3カ月物LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)を基準金利として上乗せ金利が設定される。しかし、注意したいのは08年の金融危機後に多くの企業が最低限の利回りを提供できるよう、LIBORフロアと呼ばれる下限を設定した点だ。バンクローンが変動金利商品として機能するには、基準金利の3カ月物LIBORがLIBORフロアを上回る必要があるが、現状は大きく下回っている。利上げによって基準金利が大幅に上昇しなければ、利上げの初期段階では期待されているほどのパフォーマンスをあげられない。

 Q:米国の中期国債に社債を組み合わせて利回りを高めるファンドも人気だが、どうみるか?

 A:投資家はファンドの中身を精査すべきだ。金利上昇の影響を受けやすい国債中心のファンドよりも社債中心のファンドの方が金利上昇局面では持ちこたえるだろう。米国の投資適格債券市場全体のパフォーマンスを測る指標である「バークレイズ米国総合インデックス」とポーフォリオの中身が似たファンドは要注意だ。こうしたファンドは国債や不動産担保証券が中心で、社債は少なめとなっており、利上げ局面では低迷する傾向がある。
提供:モーニングスター社
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