モーニングスター年末特集=ハイイールド債券“逆襲”なるか、米に勝ち組のセオリー(1)
FRB(米連邦準備制度理事会)が16日、2008年以降続いた実質的なゼロ金利政策を解除し、利上げ局面に強いと言われるハイイールド債券への注目が改めて高まりそうだ。足元ではパフォーマンスが低下傾向にあるものの、難局を切り抜けたファンドも少なくない。「勝ち組」と「負け組」、何が分かれ目だったのか。
<2015年はリーマン・ショック以来の本格的な下落相場>
2015年は海外債券に投資するファンドにとって厳しい運用環境となった。国内投信の国際債券型ファンドの年初来リターンをモーニングスターカテゴリー別に見ると、21カテゴリーのうち「転換社債(為替ヘッジあり)」「欧州(為替ヘッジあり)」がかろうじてプラスのリターンを達成したものの、残りはすべてマイナスのリターンとなった。特に、為替ヘッジありの中では「ハイイールド債(為替ヘッジあり)」がマイナス3.22%と最もマイナス幅が大きく、為替ヘッジなしの中でも「ハイイールド債(為替ヘッジなし)」がマイナス10.40%と相対的に下げ幅が大きい。暦年ベースで「ハイイールド債(為替ヘッジあり)」がマイナスのリターンとなるのはリーマン・ショックがあった2008年以来、「ハイイールド債(為替ヘッジなし)」が10%を超えるマイナスのリターンとなったのも同じく2008年以来と、7年ぶりの本格的な下落相場となった。
<ハイイールド債は“全面安”ではない、年初来でプラスリターンのセクターも>
今後、ハイイールド債券に投資するうえではセクターや銘柄の“選別”がいっそう求められそうだ。ハイイールド債券のパフォーマンスが低迷している最大の要因として挙げられるのが、原油価格急落によるエネルギーセクターへの影響。ハイイールド債券の中でもエネルギーセクターの年初来リターン(ドルベース)はマイナス24.97%と、ハイイールド債券全体のマイナス5.60%を大幅に下回る。一方、景気動向の影響を受けにくいディフェンシブセクターである食品・飲料・タバコは6.61%とプラスのリターンになるなど決してハイイールド債券の“全面安”ではなく、選別投資の余地は残されている。
もう1つ注意すべきは、低格付け債への投資。12月にハイイールド債券の下げが加速したきっかけの一つが、米国籍のオープンエンドファンド「サード・アベニュー・フォーカスト・クレジット・ファンド」が清算すると発表し、ハイイールド債券市場全体に不安が広がったことだった。同ファンドは経営破たん後の再建途上にある企業が発行するいわゆる「ディストレス債」への集中投資を特徴とするファンドであり、過度な信用リスクが今回の事態につながった。
同ファンドのポートフォリオの格付け別内訳(2015年7月末時点)は投機的格の中でも格付けが低い「B格以下」と「未格付」を合わせて約9割と極めて高く、「ハイイールド債券」のカテゴリー平均約17%(同年9月末時点)を大きく上回る。同ファンドほどではないものの、ハイイールド債券ファンドの中でも信用リスクが高めのファンドは相場下落時に低迷しやすいため、注意が必要だ。格付け別にハイイールド債券の年初来リターンを見ると、投機的格の中でも相対的に格付けが高いBB−B格はマイナス3.82%と、低格付けのCCC格のマイナス15.97%より下落を大幅に抑制しており、信用リスクをどの程度取るかがパフォーマンスを左右している。(坂本浩明)
(2)へ続く
提供:モーニングスター社
<2015年はリーマン・ショック以来の本格的な下落相場>
2015年は海外債券に投資するファンドにとって厳しい運用環境となった。国内投信の国際債券型ファンドの年初来リターンをモーニングスターカテゴリー別に見ると、21カテゴリーのうち「転換社債(為替ヘッジあり)」「欧州(為替ヘッジあり)」がかろうじてプラスのリターンを達成したものの、残りはすべてマイナスのリターンとなった。特に、為替ヘッジありの中では「ハイイールド債(為替ヘッジあり)」がマイナス3.22%と最もマイナス幅が大きく、為替ヘッジなしの中でも「ハイイールド債(為替ヘッジなし)」がマイナス10.40%と相対的に下げ幅が大きい。暦年ベースで「ハイイールド債(為替ヘッジあり)」がマイナスのリターンとなるのはリーマン・ショックがあった2008年以来、「ハイイールド債(為替ヘッジなし)」が10%を超えるマイナスのリターンとなったのも同じく2008年以来と、7年ぶりの本格的な下落相場となった。
<ハイイールド債は“全面安”ではない、年初来でプラスリターンのセクターも>
今後、ハイイールド債券に投資するうえではセクターや銘柄の“選別”がいっそう求められそうだ。ハイイールド債券のパフォーマンスが低迷している最大の要因として挙げられるのが、原油価格急落によるエネルギーセクターへの影響。ハイイールド債券の中でもエネルギーセクターの年初来リターン(ドルベース)はマイナス24.97%と、ハイイールド債券全体のマイナス5.60%を大幅に下回る。一方、景気動向の影響を受けにくいディフェンシブセクターである食品・飲料・タバコは6.61%とプラスのリターンになるなど決してハイイールド債券の“全面安”ではなく、選別投資の余地は残されている。
もう1つ注意すべきは、低格付け債への投資。12月にハイイールド債券の下げが加速したきっかけの一つが、米国籍のオープンエンドファンド「サード・アベニュー・フォーカスト・クレジット・ファンド」が清算すると発表し、ハイイールド債券市場全体に不安が広がったことだった。同ファンドは経営破たん後の再建途上にある企業が発行するいわゆる「ディストレス債」への集中投資を特徴とするファンドであり、過度な信用リスクが今回の事態につながった。
同ファンドのポートフォリオの格付け別内訳(2015年7月末時点)は投機的格の中でも格付けが低い「B格以下」と「未格付」を合わせて約9割と極めて高く、「ハイイールド債券」のカテゴリー平均約17%(同年9月末時点)を大きく上回る。同ファンドほどではないものの、ハイイールド債券ファンドの中でも信用リスクが高めのファンドは相場下落時に低迷しやすいため、注意が必要だ。格付け別にハイイールド債券の年初来リターンを見ると、投機的格の中でも相対的に格付けが高いBB−B格はマイナス3.82%と、低格付けのCCC格のマイナス15.97%より下落を大幅に抑制しており、信用リスクをどの程度取るかがパフォーマンスを左右している。(坂本浩明)
(2)へ続く
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