モーニングスター年末特集=100万円でわずか200円のコスト負担に人気集中

<10月にはETF「除く」のパッシブ比率が史上初の2割越え>

 米国籍ファンドの月末時点のパッシブ比率(純資産額全体に占めるパッシブファンドの比率)は、ETF「含む」ではすでに14年12月末時点では3割を超えていたが、ETF「除く」でも15年10月には史上初の2割越えとなった。年初から10月末までの純資金流出入額が、アクティブは1090億ドル(約13兆円)の流出超過となる一方で、パッシブは1666億ドル(約20兆円)の流入超過となったのが主因だ。

 11月もアクティブから364億ドルの流出超過となるなど、年末にかけても「アクティブ売り・パッシブ買い」の傾向に変わりはなく、集計可能な1993年以降の年間純資金流出入額との比較では、15年はアクティブが史上2度目の流出超過(前回は08年の2078億ドル)となるのが確実な一方で、パッシブは過去最高の流入超過額(14年の1850億ドル)に迫る勢いだ。本数ベースでみても、アクティブは15年11月末時点で54%が流出超過と、08年12月末時点の59%には及ばないものの、幅広いファンドから資金が流出しているのも特徴的だ。

<米国株アクティブの資金流出は実は10年前から>

 ETF「含む」の年初来の純資金流出入額をあらためて大分類別でみると、アクティブは米国株が1545億ドルの流出超過となったほか、課税債券やアロケーションなども流出超過となる一方、パッシブは海外株が1666億ドル、米国株は713億ドルのいずれも流入超過となるなど、すべての大分類で流入超過となった。実は、米国株の「アクティブ離れ」は06年から9年連続となっており、15年も11月までですでに1545億ドルの流出超過と、10年連続は確実で、金額でも過去最高を更新する可能性が高い。また、過去5年間のアクティブの流出とパッシブの流入の超過額の差は年平均2000億ドル程度で、15年11月末時点における純資産額はアクティブが3.6兆ドル、パッシブが2.4兆ドルだ。つまり、この先も現在のペースで資金シフトが進むと仮定すると、20年から21年にかけて米国株ではパッシブとアクティブの比率が逆転することになる。

<純資産額上位20本でシェア7割と寡占化進む>

 こうした背景の一つとして、投資家のコスト意識の高まりが挙げられる。米国株パッシブのエクスペンスレシオ(日本の信託報酬に類似)の加重平均は、選択時に流動性なども考慮されるETFは0.17%程度での横ばいが続いているものの、ファンドは14年12月末時点では0.13%と、過去10年間で0.12%低下した。また、個別ファンドでは、同月末時点の526本のうち、純資産額上位20本のシェアは7割を超える。その20本中19本はエクスペンスレシオが低い方から上位20%内、さらに10本は同5%内と、投資家のコスト意識は相当に高い。

 ちなみに、米国株パッシブの中でも最も低いファンドのエクスペンスレシオは0.02%であり、1万ドル(1ドル=120円換算で120万円)を投資すると想定した場合、投資家のコスト負担は年間2ドル(同240円)となる。米国株アクティブの平均は、全ファンドの加重なら80ドル、単純なら全ファンドで123ドル、純資産額上位20本で59ドルだ。「2020年の逆転」は時期が早まることはあっても遅くなることはなさそうだ。さらに、米国ではETFのみを投資対象とし、アロケーションをAI(人口知能)で決定するサービスなども低額で提供されている。今後は米国株で進むパッシブ重視の流れが、海外株や債券にまで波及していくのかが、注目される。

 なお、米国籍ファンドを直接購入することはできないものの、海外ETFについては、国内からもネット証券を中心にエクスペンスレシオ0.05%の米国株など購入可能なものもかなり増加している。NISA(少額投資非課税制度)での購入については、買付時の手数料は無料といった場合もあり、検討に値する。(吉田誠)
提供:モーニングスター社
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