モーニングスター年末特集=資金流入が止まらない国内REIT―日銀の爆買いに要注意(2)
<なぜ落ちないREIT人気? >
安定して国内REIT型へ資金が入り続けている1つの理由は、足元で日本の不動産が堅調に回復していることだ。不動産部門の実体経済の動きをとらえる経済指標の1つに「建築着工統計(国土交通省)」がある。これは国内建築物の建設が着工されるときの床面積を集計したもので、実体経済の動きに近い動きをすることが特徴となっている。そこで不動産部門の建築着工統計の動きをを見てみると、2014年には消費増税の影響もあり建築物着工が減少するものの、その後顕著な増加傾向を示していており、右肩上がりのトレンドが確認できる。2015年の東証REIT指数は下落基調もかかわらず、不動産経済は着実に成長していることが、不自然ともいえる国内REIT型への資金流入が途絶えない1つの背景と考えられる。
<急増する日銀のJ−REIT買い入れ>
国内REIT型へ資金が流れるもう1つの理由は日銀の金融政策にあると考えられる。もっとも注目されるのは日銀の“J−REIT買い入れ”だ。直接REIT価格に影響することから日銀の動向から目を離せない。通常、日銀のJ−REIT買い入れは不定期に行われるが、その残高を見ることで金融政策の方向性が確認できる。
日銀によるJ−REIT買い入れ残高の推移を見てみると、2014年まではその残高が緩やかに増加してきた。しかし、欧州経済危機や原油安などのマクロ経済環境が変化するなかで、2014年12月に日銀はその買い入れ枠の拡大を決定し、年間約300億円から3倍の約900億円に増やした。2015年に東証REIT指数(配当込み)が下落トレンドに転じるかたわら、日銀によるJ−REIT買い入れ残高が急増していることが分かる。日銀によるJ−REITの買い入れ残高が“一定”のペースで急増していることに注目したい。それは、不自然とも見られる国内REIT型への安定した資金流入につながっていると推察される。
以上、実体経済が着実に回復していることはREIT市場には追い風となるものの、金融当局の市場への影響力が無視できない市場環境であることには間違いない。そのような状況で日銀は12月に金融政策決定会合で量的・質的金融緩和の補完措置の導入を決定し、J−REITでの銘柄別の買い入れ限度を発行残高全体の5%以内から10%以内へ引き上げた。そのことから、今後日銀は買い入れペースを維持、あるいは引き上げる可能性もあり、日銀の動向に細心の注意が必要となる。
提供:モーニングスター社
安定して国内REIT型へ資金が入り続けている1つの理由は、足元で日本の不動産が堅調に回復していることだ。不動産部門の実体経済の動きをとらえる経済指標の1つに「建築着工統計(国土交通省)」がある。これは国内建築物の建設が着工されるときの床面積を集計したもので、実体経済の動きに近い動きをすることが特徴となっている。そこで不動産部門の建築着工統計の動きをを見てみると、2014年には消費増税の影響もあり建築物着工が減少するものの、その後顕著な増加傾向を示していており、右肩上がりのトレンドが確認できる。2015年の東証REIT指数は下落基調もかかわらず、不動産経済は着実に成長していることが、不自然ともいえる国内REIT型への資金流入が途絶えない1つの背景と考えられる。
<急増する日銀のJ−REIT買い入れ>
国内REIT型へ資金が流れるもう1つの理由は日銀の金融政策にあると考えられる。もっとも注目されるのは日銀の“J−REIT買い入れ”だ。直接REIT価格に影響することから日銀の動向から目を離せない。通常、日銀のJ−REIT買い入れは不定期に行われるが、その残高を見ることで金融政策の方向性が確認できる。
日銀によるJ−REIT買い入れ残高の推移を見てみると、2014年まではその残高が緩やかに増加してきた。しかし、欧州経済危機や原油安などのマクロ経済環境が変化するなかで、2014年12月に日銀はその買い入れ枠の拡大を決定し、年間約300億円から3倍の約900億円に増やした。2015年に東証REIT指数(配当込み)が下落トレンドに転じるかたわら、日銀によるJ−REIT買い入れ残高が急増していることが分かる。日銀によるJ−REITの買い入れ残高が“一定”のペースで急増していることに注目したい。それは、不自然とも見られる国内REIT型への安定した資金流入につながっていると推察される。
以上、実体経済が着実に回復していることはREIT市場には追い風となるものの、金融当局の市場への影響力が無視できない市場環境であることには間違いない。そのような状況で日銀は12月に金融政策決定会合で量的・質的金融緩和の補完措置の導入を決定し、J−REITでの銘柄別の買い入れ限度を発行残高全体の5%以内から10%以内へ引き上げた。そのことから、今後日銀は買い入れペースを維持、あるいは引き上げる可能性もあり、日銀の動向に細心の注意が必要となる。
提供:モーニングスター社