<マイナス金利の影響>国内債券ファンドでは基準価額上昇、公社債投信では購入停止相次ぐ

 日銀は1月29日の金融政策決定会合において、予想外のマイナス金利政策(金融機関が日銀に預ける日銀当座預金の金利をマイナスにする政策)導入を決定した。これを受けて大手銀行などでは定期預金や住宅ローンの金利を引き下げる動きが見られたほか、投資信託の世界でも、MMF(マネー・マネージメント・ファンド)や中期国債ファンドなど償還までの期限が短い国債で運用する公社債投信では、安定的な運用に支障が出る可能性があるとして、多くが販売停止や繰り上げ償還に追い込まれている。そして、2月9日にはついに長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時−0.035%まで低下した。

 モーニングスターが分析対象とする国内公募追加型株式投信においても、多くの国内債券ファンドで基準価額の上昇(金利低下による債券価格の上昇)が見られた。マイナス金利が導入された1月29日と翌営業日(2月1日)の基準価額を比較すると、モーニングスターカテゴリー「国内債券・中長期債」に属する61本(注1)中60本で基準価額が上昇し、その平均は0.34%に及んだ。これは国内債券ファンドにおいて異常な水準だ。

 日本国債を主要投資対象とするファンドでは、組み入れた国債が償還を迎えたり、投資家からの新たな資金の流入があると、市場から国債を購入しファンドに組み入れる。しかし、足もとでは10年程度までの広い年限ゾーンで日本国債はマイナス金利に陥っており、運用難に直面している。こうした理由から、三井住友トラストでは「日本債券ファンド(毎月分配型)」<2010081603>の販売停止を発表した。

 潜在的なリスクとして為替ヘッジコストの上昇にも触れておきたい。例えば、米ドル建ての資産に投資をしつつ、ファンド内で円売り・米ドル買いの為替予約取引を行うことで為替変動リスクを抑制するファンドでは、おおむね日米の短期金利差分をヘッジコストとして負担している。リーマン・ショック以降は日米の金利差がほとんどゼロに近づいたため、為替ヘッジコストが意識されることはあまりなかった。しかし、昨年末の米国の利上げもあって、足もとでは日米の短期金利差が約0.6%(注2)まで拡大しており、為替ヘッジ付きファンドの収益を押し下げる要因となりそうだ。

 (注1)確定拠出年金向け、ファンドラップ専用、ETF等除くが対象
 (注2)日米の短期金利:3カ月LIBOR(ロンドン・インターバンク・オファード・レート=ロンドン銀行間貸し手金利)を参照した。
提供:モーニングスター社
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