<J−REIT>日銀のマイナス金利政策の効果がプラスに働き、下値の堅いジリ高相場に=新光投信(下)

 新光投信の運用調査本部運用二部 外国株式・REITチーム ファンドマネージャーの片桐健太氏に、J−REIT市場の現状分析と見通しなどを聞いた。

 (上)からつづく

 ――J−REIT市場の現状をどのように見ていますか?

 J−REITの経営環境をみると、オフィスについては、2016年−17年は新規供給量が限定的であり、現時点で、新築ビルに入居する主要テナントの多くが決定している状況です。物件のフリーレント期間や、テナント退去から次のテナントが入居するまでの期間を示すダウンタイムは短期化の傾向にあり、オフィスは明確に貸し手が優位な市場になっています。空室率の低下傾向と合わせて、賃料の引き上げが実施しやすいポジティブな状態が続きそうです。

 ホテルもインバウンド需要の急拡大を受けて好調です。日本円での宿泊料は20−30%上がっているのですが、ここ数年の円安の進行によって、海外からやってくる宿泊客の視点で見ると宿泊費は上がっておらず、需要が減退していません。そもそも東京を中心とした日本の宿泊料金は、世界の主要都市と比較して割安な水準だったこともあり、現在はそのギャップを解消する動きになっています。このことは、ホテルREITの収益力強化に直結します。

 さらに、ディフェンシブなセクターに分類される住宅においても、内部成長が徐々に顕在化しており、これまでは難しかった賃料の引き上げが、一部で実現できるようになっています。

 マイナス金利によって負債の利払い負担の低減が期待できます。また、原油安を受け光熱費が低下傾向にあることも短期的に業績のプラス要因に効いてきます。このようなプラス要因の積み重ねによって、J−REIT全般に業績改善セクターとしての評価が高まっています。

 このJ−REITに対する評価の高さは、市場平均のNAV(純資産総額)倍率が2月末現在で約1.4倍にまで高まってきたことにも表れています。金融危機後には0.6倍を下回る水準にまで低下したNAV倍率が、この水準まで上昇しているのは不動産への成長期待の表れといえると思います。

 ――「りそなJリート・アクティブ・オープン(愛称:日本のツボ)」<2010062402>(★★★、評価基準日=2月29日)の特徴は?

 相対的に高水準の配当金の確保を図りつつ、長期的な値上がり益の獲得をめざしています。2月22日現在のポートフォリオの予想配当利回りは3.5%です。東証REIT指数の予想配当利回りと比較すると、おおむね0.1−0.2%程度高い利回り水準を維持しています。

 また、マザーファンドの運用においては、りそな銀行から投資助言、および、情報提供を受けています。りそな銀行では、J−REIT担当者が不動産セクターのアナリストも兼務していることから、J−REITのスポンサーサポート動向なども含めた多面的な分析が可能であり、総合的な不動産市況を把握するうえで貴重な情報になっています。

 ――当面のJ−REIT市場の見通しは?

 日銀の量的質的金融緩和が始まって以来、追加緩和が発表されるタイミングで、過去2回、NAV倍率が約1.6倍をつける場面がありました。現在、NAV倍率1.5倍で東証REIT指数は約2000ポイントの水準ですが、オフィスを中心とした良好な不動産ファンダメンタルズのもと、ここをクリアすることはそう難しくないとみています。

 そもそも不動産の鑑定価格は取引価格を後追いする傾向があるため、不動産価格が上昇傾向にある現状では、REIT価格が変わらなければNAV倍率は時間の経過とともに低下することになります。不動産市況の好調やJ−REITの業績改善を徐々に確認していく過程で、東証REIT指数も徐々に切り上がっていく展開を予測しています。

 日銀のマイナス金利政策が、J−REITに与えるプラス効果は大きく、日銀による追加緩和に対する期待は残っているといえます。また、下落局面では日銀が継続的に買い入れを実施していることも買い安心感に繋がるため、J−REIT市場は全般に下値が堅い展開が続くでしょう。
提供:モーニングスター社
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