セゾン投信、フィデューシャリーはビジネスモデルの根幹、「お客さま全部主義」で公表したKPIを実践

 金融庁が今年3月に示した「顧客本位の業務運営に関する原則」に対し、主な金融機関は6月末までに原則を採択している。セゾン投信代表取締役社長の中野晴啓氏に同社の取り組みについて聞いた。

 ――15年8月に、いち早くフィデューシャリー・デューティー宣言を行い、今回も先駆けてKPI(客観的に評価できる成果目標)を公表するなど踏み込んだ対応だ。

 「顧客本位の業務運営」を純粋に言行一致で実施できるのは、独立系で直販を行っている会社のみだと考えている。「フィデューシャリー・デューティー」は、当社の経営理念であり、ビジネスモデルの根幹だ。当社は、その実践においてリーディングカンパニーでありたいと考えている。

 「顧客本位」をお客さまニーズに真摯にお応えすることと解釈しているところもあるが、それで十分だろうか? たとえば、「毎月分配型」は、お客さまのニーズがあるから是とするところがあるが、当社では、お客さまの資産形成には毎月分配型はふさわしくないと考えるので、毎月分配型を否定している。お客さまにとって最善と考えられることを提案することが、より重要だ。これを「お客さま全部主義」として業務運営の基本にしている。

 また、金融庁が示した原則でも「見える化」が重要だとされ、KPIを示すことが期待されている。当社では、業務の一つひとつについて、お客さまにその取り組みを見ていただけるように、社内でさまざまな角度から議論して、KPI項目をお示しした。

 KPIの公表で、より一層、やるべきことが明確になった。KPIが行動規範になっている。コールセンターで電話を取るといった1つひとつの行動にフィデューシャリーの精神が浸透していくと思う。

 ――利益相反の適切な管理については?

 独立系かつ直販というビジネスモデルは、そもそも利益相反の発生頻度が少ない。株主には、「株主利益は、お客さまの利益に劣後する」ということを明確にしている。また、販売手数料を一切認めない。お客さまのことを第1に考えれば、販売手数料に合理性はないと考えるのが当然だ。

 一方、信託報酬については、お客さまに長期的なパフォーマンスを提供するにあたって、それに必要な収益として認めていただきたい。これは、お客さまに説明を尽くしていく。赤字になるような低コストインデックスファンドでは、お客さまに健全なサービスを継続的に提供しえない。相互理解が大事だ。当然、当社が業務運営していく上で必要な手数料を超えた部分の報酬は、お客さまに恒常的に還元していく考えだ。17年3月にも「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」の信託報酬を引き下げた。設定から10年で3回目の引下げになる。

 ――スチュワードシップ活動は?

 「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」では、バンガード社は運用するインデックスファンドに組み入れている企業の活動を自らの責任と判断により監視している。ESG(環境・社会・ガバナンス)に問題があると判断される場合は、議決権行使によって株主としての意志を示している。

 アクティブファンドである「セゾン資産形成の達人ファンド」では、組み入れているファンドから権利行使に関する報告を受け、モニタリングを随時行っている。そこに当社が納得できない規律違反などがあれば、組み入れファンドから外すなどの措置をとる。

 ――分かりやすい情報提供についての取り組みは?

 運用部から情報発信する運用報告会を継続して行ってきている。全国8カ所で報告会を開催するようになった。ただ、運用報告会への参加者はファンドの受益者12.5万人の一部の方々なので、いつでも報告会の内容を見ていただけるよう、動画での情報発信も行っている。

 また、毎月のレポート「セゾン投信NEWS LETTER」は、長期投資の心構えから社会・経済の変化などまで幅広く真摯な内容のものを作っている。この他、定期的に発行しているメルマガは、開封率が35%になり、当社に対し、お客さまがシンパシーを感じてくださっている査証と心強く思っている。

 ――6月29日にKPIを公表した。

 公式ホームページにKPIを公表している。フィデューシャリー委員会の開催頻度、平均保有期間、定期積立プラン利用率、公式ホームページの投資教育にかかる動画の閲覧回数など、数値化できるものを45項目で挙げた。KPIは必要に応じて見直していくものの、定期的に数値を確認しキチンと向上していきたい。より多くの方々に、積立投資のメリットを知っていただくよう、引き続き努力を続けたいと考えている。
提供:モーニングスター社
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