三井住友アセットマネジメント、FD宣言で先駆けて新しいステージのアクションプラン「FD2.0」策定

 金融庁が今年3月に示した「顧客本位の業務運営に関する原則」に対し、主な金融機関は6月末までに原則を採択している。三井住友アセットマネジメントの企画部理事の新保一久氏に、同社の取り組みについて聞いた。

 ――業界に先駆けてフィデューシャリー・デューティー(FD)宣言を行い、アクションプランも示して積極的に取り組んできた。取り組みによる変化は?

 15年8月にFD宣言を行い、アクションプランの第1弾を公表した。FD宣言は当社の最上位規程として規程化し、FD宣言に反することはやってはいけないとした。アクションプランでは期日を設けた目標を掲げ、半年ごとに進ちょく状況を開示している。今回、KPI(客観的に評価できる成果目標)の開示が求められているが、当社では、これまでも取り組んできた、アクションプランの公表と進ちょく報告が金融庁の求めるKPIにも適っていると考えている。

 今回、新たなアクションプランをまとめた。第1弾のアクションプランが“最低限お客さまに満足いただける水準”を実現するため、ネガティブサイドの払しょくを重視した内容だったが、これにおおむね目途をつけたことから次のステップとして「FD2.0」(フィデューシャリー・デューティーの新しいステージ)に取り組む。

 「FD2.0」では、“最大限お客さまに満足いただける水準”をめざし、商品・サービスのクオリティを一段と高めていく。お客さまのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上に貢献し、単なる資産形成にとどまらないサービスのご提供を含めた、まったく新しい「預貯金より満足度の高い」商品の開発をめざす。また、海外を含めた機関投資家の皆さまには、よりご満足いただける運用サービスを提供し、このような商品・サービスのクオリティーアップを可能とする経営インフラの強化、充実に努めていく。

 たとえば、ステート・ストリート信託銀行に投信事業のミドル・バックオフィス業務をアウトソースする取り組みは、資産管理業務のコスト削減につながるだけでなく、アジア地域へのサービスを将来的に展開するうえでのグローバル・インフラの構築にもなる。効率化の成果は、運用商品の信託報酬の引き下げにつなげたい。

 ――スチュワードシップ・コードへの対応は?

 日本版スチュワードシップ・コードの改訂に合わせて、同コードに基づく方針を改定した。議決権行使結果の全件個別開示、パッシブ運用におけるエンゲージメント方針の策定、および、活動の実施状況に関する自己評価等に取り組んでいく。

 エンゲージメントは、専門の運用会社である「みさき投資」にトレーニーを派遣して学んだ後、16年4月に「エンゲージメント運用グループ」を新設。16年10月にはスチュワードシップ活動の方針や議決権行使の方針などを専門に推進する「スチュワードシップ推進室」をつくるなど、活動の高度化を進めている。

 このような活動に伴って、アナリストの作成するレポートの焦点が、企業の短期業績の予想から中・長期(3年−5年)の競争力評価にシフトしてきた。

 ――利益相反の適切な管理は?

 ガバナンスの仕組みとして、15年10月にCEOの諮問機関として「FD第三者委員会」を設置し、フィデューシャリー・デューティーの観点で自由にご意見をいただき、対応策を含めた内容を半年ごとに公表している。また、社外取締役・監査役を広く迎え入れ、株主会社からの役員は非常勤監査役に1人のみという体制にした。

 また、営業担当者のお客さま等との折衝記録を社内で共有し、営業以外の部署が内容をチェックし必要に応じて改善を促している。販売会社や年金基金等との折衝の記録について他者から検証されることで、緊張感を持った規律ある活動につなげている。

 ――わかりやすい情報提供についての取り組みは?

 目論見書ではユニバーサルデザインを使って見やすさに配慮するとともにピクトグラム(絵文字)を使って重要事項に注意を促すなど、様々に工夫しており、販売会社の方から「一番見やすい」という声もいただいている。現場のボトムアップで、気づいたことから改善する取り組みを継続しており、今後、手数料・分配金のしくみなどについて、資産形成初心者の皆さまが楽しみながら理解できるような資料も提供していきたい。

 当社では、どこよりも先駆けてFD宣言に伴うアクションプランを公表し、それを誠実に実行してきた。PDCAを回し続けることで、中期経営計画で掲げる「2020年に質・量ともに日本一の運用会社」という目標を実現したい。
提供:モーニングスター社
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