バフェット嘲笑う航空株の「離陸」、景気敏感息吹き返す

 米国株式市場で「JETS」のティッカーで知られるETF(上場投資信託)が話題だ。世界の航空関連株に投資する「US Global Jets ETF」という名前のETFで、組入上位にはサウスウエスト航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空など米国の大手航空会社が並ぶ。

 2月までほとんど商いのない注目度の低いETFだったがコロナ危機が深刻化し始めた3月から状況が一変。危機下で航空株の株価が急降下する中で逆張りと見られる資金が殺到し、直近6月4日も1日で4000万ドル(約44億円)以上の流入超を記録した。

 株価に相当する市場価格も足元急速に反発しており、5月15日に付けた年初来安値12ドルから6月4日まで60%上昇。同じ期間のダウ工業株30種平均の上昇率11%を大きく上回っている。

 航空業界の回復をいち早く見込んだ投機的なマネーの動きである可能性も高いが、実際にアメリカン航空が4日に7月の国内線便数を前年同月比で45%減と、5月の8割減から大幅に改善させると発表するなど、需要の持ち直しを見込んだ動きも見られる。

 航空株に限らず、いわゆる景気敏感株が息を吹き返しているのが足元のマーケットの特徴だ。景気動向を表しやすいと言われる米国の輸送関連株で構成されるNYダウ輸送株20種は5月15日以降のリターン(3日まで)が22%と、NYダウを10%以上も上回っている。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格も4月末から2倍に急反発した。

 長期的な景気の見通しを織り込むと言われる米長期金利が4日に0.83%と、約2カ月ぶりの高水準となったことも楽観的な見通しの表れだ。本来金利の上昇がマイナス要因となるはずのREIT(不動産投資信託)でも、商業モールREIT大手のサイモン・プロパティの投資口価格が6月に入り30%以上も上昇するなど、消費活動再開への期待は大きい。

 5月には、著名投資家のウォーレン・バフェット氏がコロナ危機を受けて航空株を全売却したと発表したことが注目された。同氏を嘲笑うかのような足元の航空株の上昇だが、売られ過ぎの自立反発に過ぎない可能性も高い。

 第2波への警戒感も根強く、景気敏感株の騰勢が続くかは不透明。長期保有を前提とする「投資の神」が正しかったのか、検証するにはまだ早すぎるだろう。
提供:モーニングスター社
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