日米株式は依然波乱含み、逆風あるも「有事の金」に注目

 28日の日経平均株価は4営業日ぶりに大幅反発したものの、日米株式市場の年初からの不安定な動きが収まったと考えるのはまだ早い。直近の下落要因である米金融政策の引き締めスタンスの強まりのほか、インフレ懸念や地政学リスクも抱えており、依然として波乱含みである。「有事の金」に注目したい。

 「金」は現物資産であるため、株や債券のような信用リスクがなく、リスクオフ局面で買われやすい。ここ数年の株式市場の急落局面においても「有事の金」の特性を発揮してきた。2021年12月末時点で、国内公募追加型株式投信のうちモーニングスターカテゴリー「コモディティ」に属する金に投資するファンドは19本ある。この19ファンドの月次リターンの平均に基づいて指数化したものを「金関連ファンド」とし、国内株式、米国株式ファンドとリターンの推移を比較した。「国内株式ファンド」は、カテゴリー「国内大型ブレンド」に属するファンドのリターンを指数化した「モーニングスターインデックス 国内大型ブレンド(単純)」「米国株式ファンド」は「モーニングスターインデックス 国際株式・北米(為替ヘッジなし)(単純)」を使用した。期間は2017年12月末から2021年12月末とした。

 対象期間において株式市場の大幅下落は2回あった。米中貿易摩擦に揺れた2018年12月とコロナショック時の2020年2−3月であるが、金はいずれも堅調に推移した。2018年12月は「国内株式ファンド」が前月比−10.68%、「米国株式ファンド」が同−10.92%となる一方で、「金関連ファンド」は同+2.66%。2020年2−3月は、「国内株式ファンド」が2月に同−9.33%、3月に同−8.93%、「米国株式ファンド」が2月に同−7.85%、3月に同−16.76%となる中で、「金関連ファンド」は2月に同+4.00%となり、3月はマイナスとなったものの同−1.51%に留まった。大幅下落時における金の優位性が際立つ。

 「金」はまた、インフレに強みを持つとされる。利息や配当がないというデメリットもあるが、インフレによる預貯金の価値目減りへの対策として現物資産の金の保有が有効とされるためだ。

 その点で考えると、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ抑制に向けて引き締め的な金融スタンスを強めていることは、金にとってマイナス材料である。米金利上昇によりドル高となる可能性がある点も、ドルと逆の動きをするとされる金にとってはマイナスとなる。

 これらの逆風もあるが、米金融政策を巡る思惑やインフレ高進に対する懸念、緊迫の度を増すウクライナ情勢、終息の兆しの見えない新型コロナウイルスの感染拡大など日米株式市場を取り巻く環境を考えると、「金」に対する関心が高まる局面もありそうだ。
提供:モーニングスター社
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