新設ファンド数が急減・小粒化、金融環境の悪化や投資家の意識変化が要因か

 投資信託協会のデータによると、今月(2022年5月)に国内で設定される公募追加型株式ファンドの数は8本と、直近10年間で3番目の少なさとなる見込みだ。インフレの高進、各国の金融引き締め、ウクライナ問題など金融市場を取り巻く環境が悪化していることが影響していると見られる。

 今月の設定予定本数8本は、直近10年間では、2019年8月と2020年4月の7本に次ぐ少なさとなる。2019年8月は米中貿易摩擦が再燃し、2020年4月は前月のコロナショックの余波が残り、ともに金融市場の混乱に見舞われていた時期。今月も、金融市場の先行き不透明感を受けて、4月の26本から大幅に減少する。2022年1月から5月までの合計設定本数は130本と、前年同期の143本と比べて、それ程大きく減少してはいない。今月の急減が一過性であるのか、来月以降の推移を確認したい。

 現時点で、2022年の新設ファンドは設定日残高が“小粒”である。5月26日までに設定された108本(限定追加型及びETF除く)の中で設定日残高が100億円を超えたファンドは1本もない。設定日残高100億円超のファンドは、2019年は10本、2020年は14本、2021年は9本あった。

 設定日残高が1000億円を超える大型設定となったファンドも、2019年は「グローバル・プロスペクティブ・ファンド(愛称:イノベーティブ・フューチャー)」(設定日残高1135億円)と「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド(愛称:アメリカン・ロイヤルロード)」(同1482億円)の2本、2020年は「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:未来の世界(ESG))」(同3832億円)の1本、2021年は「グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド」(同2860億円)と「ファンドスミス・グローバル・エクイティ・ファンド」(同1185億円)の2本を数えた。

 2022年の“小粒化”の背景には、年初からの金融市場の不安定な動きを受けて、投資家がそれまでのリスク選好から一転して慎重姿勢を強めていることがあると考えられる。また、これまでは、話題のテーマに関連したファンドに投資家の資金が集中することがあったのに対して、今年は『ESG』や『メタバース』といったテーマ関連ファンドが設定されているにも関わらず、投資家の動きは鈍い。各国が利上げに動くなど、ここ数年来の株高を支えてきた金融環境が変化する中で、ファンドの中身を冷静に見極めようとする投資家の意識変化の表れと見ることもできる。今後もこの傾向が続くのか、注目したい。
提供:モーニングスター社
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