相場低迷時も利益上げる米投信に脚光、ユーロ下落でリターン倍増のETFに投資するファンドも

 欧州財政不安で株安リスクがくすぶるなか、相場低迷時でも利益を上げることができる投資手法に注目が集まっている。米国では、証券のロング(買い)とショート(売り)のポジションを両方持つことで相場変動の影響を抑えつつ、リターンを上げる「ロング・ショート」のファンドの設定が過去1年で相次いだ。ロング・ショート以外でも、一部のファンドがユーロの下落や新興国株式の調整に投資チャンスを見いだしている。

 ロング・ショートのファンドが特に人気を集めたのは08年の金融危機のときだった。米モーニングスターのディレクター・オブ・ミューチュアル・ファンド・リサーチのラッセル・キンネル氏はモーニングスターの7日付コラムで、「ロングポジションの損失をショートポジションの利益でカバーできるファンドには魅力があった。過去の弱気相場とは異なり、(リーマン・ショック後の)株式市場には逃げ場が全くなかったからだ」と説明。最近は再びロング・ショートのファンドへの関心が高まっているといい、「1年前にはロング・ショートのカテゴリーの投資信託は78本しかなかったが、この1年で22本もの新規設定があった」としている。

 ●欧州の景気悪化を材料にリターン得られるETF

 「今着目している投資機会のほとんどがショートだ」――。米モーニングスターがこのほどインタビューした米資産運用会社TCWのアダム・コッパースミス氏はこう指摘した。コッパースミス氏はTCWの「アセット・アロケーション」というファンドシリーズの運用マネジャーの1人だ。同ファンドはロング・ショートのカテゴリーに属するファンドではないが、下落相場への対策としてショートポジションを構築している。

 コッパースミス氏は欧州諸国の経済成長の鈍化を見込んでおり、欧州の景気悪化を材料にリターンが得られるようにETF(上場投資信託)に投資。同氏が運用にかかわる一部ファンドの4月30日時点の保有比率上位をみると、「プロシェアーズ・ウルトラショート・ユーロ」というETFが組み込まれている。同ETFはユーロが対ドルで下落するほど利益が出る商品で、為替レートの変動の2倍のリターンを得られる。

 ●新興国と先進国の株式は「デカップリングせず」

 コッパースミス氏と同じくアセット・アロケーションファンドの運用マネジャーであるTCWのチーフ・グローバル・ストラテジスト、コマル・スリ‐クマール氏はモーニングスターのインタビューで、「新興国株式は先進国株式とデカップリング(非連動)しないと数カ月前から考えていた」と話した。さらに、クマール氏は中国やインドの株式は当局の金融引き締め懸念などから調整が避けられないと予想。新興国株式のショートポジションを構築し、非常に良好なパフォーマンスを達成できたとしている。

 同氏はS&P500の下値メドを900ポイント、NYダウの下値メドを9000ドルとみており、「米国株式がこれらの水準に達し、オバマ政権が医療保険や環境よりも経済の問題を重視すべきであることを心底理解した姿勢をみせれば、そのときにわれわれは米国株式に非常に強気に転じる」という。

 ●医療関連株を買い持ち

 クマール氏は目先のリスクはインフレではなくデフレとみて、米国やEU(欧州連合)各国では今後6カ月から9カ月はデフレが重要な問題になると想定。現在は金価格の下落により利益が得られる運用をしている。買い持ちしている株式に関しては消費関連株をあまり組み入れず、ディフェンシブ銘柄である医療関連株に重きを置いている。(坂本浩明)
提供:モーニングスター社
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