フィデリティの外債ファンド「ストラテA」が好調、債券分散投資と為替ヘッジで欧州危機に対応

 欧州債務危機が深刻化するなか、4つの異なる種類の債券に分散投資するフィデリティ投信の「フィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド Aコース(為替ヘッジ付き)」(以下、ストラテA)<1998093005>のパフォーマンスが好調だ。年初来のトータルリターン(10月31日時点)は4.38%とカテゴリー平均の2.57%を大きく上回る。トータルリターンは09年、10年と連続してカテゴリー内で3位となるなど、リーマン・ショック以降に特に好成績を達成。「モーニングスター ファンド・オブ・ザ・イヤー2010」では国際債券型部門で「優秀ファンド賞」を受賞した。フィデリティ投信 商品マーケティング部長の太田創氏にストラテの特徴や戦略を聞いた。

<米国では定着した「マルチ・セクター・ボンド」、米国および先進国債券とハイ・イールド債などの分散投資効果が長期にわたり奏功>

 ストラテは、米国債と政府機関債(基本資産配分30%)、米国高利回り社債(ハイ・イールド債)(同40%)、先進国債券(除く米国)(同15%)、エマージング債券(同15%)を投資対象とする。リーマン・ショックを経て、09年、10年と投資家のリスク許容度が改善する局面では、「ハイ・イールド債とエマージング債券の価格上昇がパフォーマンス改善に大きく寄与した」(太田氏)。

 同じ国際債券型のファンドでも、先進国債券のみに投資するファンドは、こうした債券に対する売り圧力が強まると「逃げ場」がなくなるが、ストラテはハイ・イールド債やエマージング債券にも分散投資しており、これによりリターンの安定と成長の双方を図っている。

 様々な種類の債券を組み合わせるファンドは、米国では「マルチ・セクター・ボンド」と呼ばれ、1つのファンドカテゴリーとして確立されている。ストラテと同様の運用方針に基づいてフィデリティが米国で運用する2本のファンドは、リーマン・ショック以降に純資産残高が合計でほぼ倍増し、1兆5000億円弱まで成長した。

 太田氏は、「リスクに敏感な米国の投資家が弱気になった際、次の投資行動として何をするかと言えば、米国債を購入する。こうした傾向はこれまでも実際に見られており、米国債とハイ・イールド債やエマージング債券の相関が低いことが確認されている」と説明。米国の投資家はいち早く債券分散投資の有効性に着目していたとされる。

 一方、日本ではまだ債券分散投資は定着していないのが実情だ。「これまで投信業界にはホットなテーマがあり続けた」と太田氏。中国株やインド株といった新興国株式に始まり、ブラジル・オーストラリアといった単一国投資、通貨選択型ファンドに至るまでブームとなる商品が続々登場したが、「ここにきて欧州債務問題でマーケットが混乱し、投資先について明確な方向感が見出せなくなっている」(同)。投資家が積極的にリスクを取りにくい状況が続くなか、今後は長期・分散投資の重要性を見直す「原点回帰」が予想されるという。そこで、債券に分散投資するリスクが抑えられたファンドが注目される可能性があるとしている。

<「超円高」で「為替ヘッジあり」に脚光、日米金利差縮小でヘッジコストはほぼゼロ%>

 フィデリティのストラテAがここ数年、堅調なパフォーマンスを継続している背景には、為替ヘッジにより円高の影響を受けていないこともある。今年に入ってからのマーケット環境は、欧州債務危機の拡大や米国債の格下げなどで「プロでもリスク管理が難しい状況になっている」(太田氏)。特に円が対ドルで何度も戦後最高値を更新するなど円高の進行になかなか歯止めが掛からないことから、「為替リスクを取りながら運用するのが難しい局面」(同)という。

 注目されるのは、為替ヘッジのコスト(日米短期金利差ベース)がかつては4−5%だったものが、日米金利差の縮小により現在はほぼ0%に近い水準となっているため、当面はヘッジコストによりパフォーマンスを低下させることを心配せずに投資できる点だ。FRB(米連邦準備制度理事会)と日銀は超低金利政策を当面継続することが見込まれているため、少なくともその間は為替ヘッジのコストをほとんどかけずに投資することができる。

 「一般的にはあまり認知されてないが、為替ヘッジ付き外債ファンドには着実に資金が流入している」と太田氏は語る。実際に、10年11月から11年10月までの1年間の追加型投資信託の純資金流出入を見ると、同期間に資金の流入超を毎月記録したファンドカテゴリー(モーニングスターの分類に基づく)は「国際債券型(ヘッジあり)」のみとなる。「超円高」が続くなか、堅実な投資家が為替ヘッジ付き外債ファンドのメリットにすでに気づいている証拠と言える。
提供:モーニングスター社
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