野村グループ「東日本復興支援債券ファンド」、元本+αの運用成果で満期償還し寄付金は総額3億円以上に

 野村証券が東日本大震災の被災地の復興支援を目的として11年5月に設定した単位型投資信託「東日本復興支援債券ファンド1105」が、5年間の運用を経て16年5月9日に満期償還を迎えた。販売にあたった野村証券、運用する野村アセットマネジメント、受託会社の野村信託銀行が、決算ごとに受け取った信託報酬の一部を被災地に寄付し、寄付金の総額は約3億2500万円になった。同ファンドを通じた取り組みについて野村証券営業企画部長の日比野勇志氏、商品企画部投信企画課長の山崎将宏氏に聞いた。

 「東日本復興支援債券ファンド1105」は、11年3月11日の大震災発生から間もない4月8日に届け出て募集開始。5月17日に約518億円で設定・運用開始した。年2回の決算(5月と11月)ごとにファンドの純資産総額の0.2%(年率)に相当する金額を被災地に寄付した。そして、満期償還の償還価額は1万22.50円、分配金は1口あたり累計115円(税前)、償還額は約208.1億円だった。同ファンドに投資した投資家の資金は元本+αの運用成果となり、寄付金が被災地の復興支援にも役立った。参加した全ての対象者が満足感を得る理想的な着地といえる結果になった。

 ファンド設立当時の商品企画部長であった日比野氏は、「未曾有(みぞう)の大震災を目の当たりにし、日本国中が被災地のために何かできないかと考えていました。当社でも本業を通じて貢献できることを考えた結果、ファンドの募集を通じて被災地に資金を供給する、そしてファンドの報酬を被災地に寄付するというスキームができました。ファンドの投資対象は随分議論したのですが、被災地への復興支援という投資家の善意にこたえるには、元本割れリスクを極力抑えた商品にすべきだという判断を優先しました」と振り返った。

 「福島県や東北電力など被災地域の自治体や企業が発行した債券に投資することで、被災地に復興資金を届けたい。そして、ファンドの信託報酬の一部を寄付金として被災地で使っていただく。このファンドの趣旨を説明したのは、購入された4万5000人の数倍規模になります。すでに個人的に寄付をしたということでファンドを購入いただけなかった場合や、野村証券とはこれまで取引はなかったのですが復興支援ということでご賛同いただけたお客様もいらっしゃいました。担当者は大震災からの復興に貢献したいという思いに突き動かされたのだと思います。株式市場は依然として不安定だったのですが、500億円を超える資金が集まり感動しました」(日比野氏)という。

 また、ファンドというスキームで行ったことで、販売・運用・受託業務がグループ3社で分担され、「販売はお客さまに役立つ商品であるかを客観的に判断し、運用は野村アセットマネジメントが投資判断する。受託者責任を全うできる体制で取り組むことができたと思います」と投信企画課長の山崎氏は評価している。

 「『東日本復興支援債券ファンド』の取り組みは、投資家の皆さまの資金を集め、資金を必要としている先に供給するという証券業の社会的な使命を、改めて社員の1人ひとりが確認できる取り組みでした。その手応えが12年に始まった宮城県での『さくらプロジェクト』にもつながり、全国の社員がボランティアとして取り組む桜の植樹活動として現在でも継続しています。また、ネパールや熊本の地震では、社員募金と同額または一定額を野村グループが拠出する、マッチングギフトを採用しておりますが、社員の参加意欲は驚くほど高いです」(日比野氏)と、ファンド募集の取り組みが社員の意識を変える効果もあったという。

 そして、「仙台や地域の支店で行ったさまざまな支援活動は、転勤による社員の入れ替えを経てノウハウが引き継がれ、また、全国に広がっています。熊本での震災直後に、近隣の支店から熊本支店に支援物資が集まりました」(日比野氏)と、野村証券の全国ネットワークに社会貢献活動が広まり根付くことを後押ししたとも捉えられている。

 「熊本支店、大分支店では地震からの復興をめざし、地域企業の支援など真剣に取り組んでいます。また、証券業界では、開発途上国の貧困削減および開発支援のためのサステナブル・ディベロップメント・ボンド、地球温暖化問題に苦しむ開発途上国を支援するためのグリーンボンド、アフリカにおける教育支援債・食糧安全保障債の募集など、社会的責任投資が広がっています」(日比野氏)と、野村グループでも引き続き積極的に本業を通じたCSR活動に取り組んでいくと語った。
提供:モーニングスター社
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