「NISA」の導入を前に改めて考える、投信選びのポイントとは?(2)
――2014年1月から非課税口座「NISA」が始まり、この10月からは口座開設の手続きも始まっています。「NISA」が投資信託市場に与える影響は?
「NISA」によって、新たに投資信託に投資を始める人が増えれば、投信市場にも少なからぬ影響があるのでしょう。ただ、私は、今回の「NISA」の制度設計に表れている金融庁の意図が、どこまで浸透していくかという点に注目しています。
「NISA」は1人あたり年間100万円までなど、いくつかの制度的な制限があって、そのために使い勝手の悪い制度と酷評されることもあります。しかし、この制限には、今後の投信市場の育成の方向性を示す内容が含まれています。
たとえば、「NISA」の口座は、1年間100万円の枠があるとはいえ、一度投資した金額を益出し(損切り)して再投資することができない仕組みです。これは、過度な短期売買を防ぐとともに、必要以上の「分配金」を抑えようという意図があると思います。「NISA」では分配金の再投資が不利に扱われるため、「NISA」向けの商品では、「無分配型」が用意されてきています。
また、「NISA」の口座を一度ある金融機関に開いたら、実質的に金融機関を変更できない仕組みになっていますが、これも安易な短期売買を抑制する効果があるでしょう。さらに、投資の収益に「非課税」という口座が提供されることによって、投資家の「コスト意識」は一段と高まることが予想され、大手証券やメガバンクなどでも販売手数料や信託報酬が低い商品の品揃えが充実してきています。
このように、低コストの費用で、長期に資産が積み上がるという投資スタイルが、「NISA」が定着させるきっかけになるかもしれません。
――今後の投資信託市場の展望は?
「NISA」口座をはじめ、「確定拠出年金」の口座、そして、一般の口座と、投資信託を購入する窓口は広がっています。ところが、銀行で投信窓販が開始され、「確定拠出年金」がスタートし、また、一般口座に「特定口座」の制度が導入されても、公募投資信託全体の資産残高は60兆円程度で、横ばいが続いてきました。個人金融資産に占める投資信託の割合も4−5%で長年変わりません。
これは、投信を長期で資産を積み上げていくツールとして活用しようという考え方が根付かなかったためだと思います。銀行や証券会社では、やはり、収益重視の姿勢から、高い販売手数料、また、短期の乗り換え提案などが行われてきました。このような状況を脱却し、投資信託市場が一段と成長していくためには、資産運用に対する正しい考え方が広がり、投資家1人ひとりが、自分の考え方をしっかり持って投資に取り組むことが必要でしょう。
「NISA」は、日本の景気回復期待が高まり、日本株が上昇するという良い機会に導入されると思います。これをきっかけに、改めて、投資信託を使った資産運用について、考える方も増えるでしょう。
投信による資産形成というと、若い方の話に聞こえるかもしれませんが、実は、退職した高齢者の方々も、退職後の20年−30年を考えると、退職金を含めて退職までに蓄積した資産を、いかに効率よく取り崩していくかという課題があります。そこでも資産運用の考え方を応用することができます。高齢者の方々も、「NISA」は資産活用のひとつの手段になります。
「NISA」がクロースアップされている今、改めて多くの方々が資産運用について考えるきっかけになれば良いと思います。(編集担当:サーチナ・徳永浩)
提供:モーニングスター社
「NISA」によって、新たに投資信託に投資を始める人が増えれば、投信市場にも少なからぬ影響があるのでしょう。ただ、私は、今回の「NISA」の制度設計に表れている金融庁の意図が、どこまで浸透していくかという点に注目しています。
「NISA」は1人あたり年間100万円までなど、いくつかの制度的な制限があって、そのために使い勝手の悪い制度と酷評されることもあります。しかし、この制限には、今後の投信市場の育成の方向性を示す内容が含まれています。
たとえば、「NISA」の口座は、1年間100万円の枠があるとはいえ、一度投資した金額を益出し(損切り)して再投資することができない仕組みです。これは、過度な短期売買を防ぐとともに、必要以上の「分配金」を抑えようという意図があると思います。「NISA」では分配金の再投資が不利に扱われるため、「NISA」向けの商品では、「無分配型」が用意されてきています。
また、「NISA」の口座を一度ある金融機関に開いたら、実質的に金融機関を変更できない仕組みになっていますが、これも安易な短期売買を抑制する効果があるでしょう。さらに、投資の収益に「非課税」という口座が提供されることによって、投資家の「コスト意識」は一段と高まることが予想され、大手証券やメガバンクなどでも販売手数料や信託報酬が低い商品の品揃えが充実してきています。
このように、低コストの費用で、長期に資産が積み上がるという投資スタイルが、「NISA」が定着させるきっかけになるかもしれません。
――今後の投資信託市場の展望は?
「NISA」口座をはじめ、「確定拠出年金」の口座、そして、一般の口座と、投資信託を購入する窓口は広がっています。ところが、銀行で投信窓販が開始され、「確定拠出年金」がスタートし、また、一般口座に「特定口座」の制度が導入されても、公募投資信託全体の資産残高は60兆円程度で、横ばいが続いてきました。個人金融資産に占める投資信託の割合も4−5%で長年変わりません。
これは、投信を長期で資産を積み上げていくツールとして活用しようという考え方が根付かなかったためだと思います。銀行や証券会社では、やはり、収益重視の姿勢から、高い販売手数料、また、短期の乗り換え提案などが行われてきました。このような状況を脱却し、投資信託市場が一段と成長していくためには、資産運用に対する正しい考え方が広がり、投資家1人ひとりが、自分の考え方をしっかり持って投資に取り組むことが必要でしょう。
「NISA」は、日本の景気回復期待が高まり、日本株が上昇するという良い機会に導入されると思います。これをきっかけに、改めて、投資信託を使った資産運用について、考える方も増えるでしょう。
投信による資産形成というと、若い方の話に聞こえるかもしれませんが、実は、退職した高齢者の方々も、退職後の20年−30年を考えると、退職金を含めて退職までに蓄積した資産を、いかに効率よく取り崩していくかという課題があります。そこでも資産運用の考え方を応用することができます。高齢者の方々も、「NISA」は資産活用のひとつの手段になります。
「NISA」がクロースアップされている今、改めて多くの方々が資産運用について考えるきっかけになれば良いと思います。(編集担当:サーチナ・徳永浩)
提供:モーニングスター社