ボラタイルな市場にも有効な、長期で分散したポートフォリオ運用=バンガードの運用統括責任者に聞く(上)

 バンガード・インベストメンツ・ジャパンは2016年2月16日、バンガード・アジアパシフィックの運用部門統括責任者 プリンシパルのロドニー・コメジス氏が来日した機会に、日本の機関投資家を対象としたセミナーを開催した。コメジス氏は、2013年にバンガード社がベンチマークをMSCIから、FTSEとCRSP(シカゴ大学証券価格調査センター)に変更するプロジェクトを主導し、同社ファンドの運用コスト低減に大きく貢献したことでも知られる。コメジス氏に、現在の市場環境と有効な投資戦略について聞いた。

 ――2016年の世界市場は、大変値動きの大きな市場になっています。投資家の多くは、この値動きに不安を感じていると思いますが、この大きな価格変動の理由について、どのように考えますか?

 市場の変動要因を特定することは難しいのですが、今回の変動に関係するいくつかの要素をあげることはできると思います。たとえば、中国経済が期待ほど伸びていない懸念、原油価格の下落、また、グローバルな金融政策の行方が不明確であることなどです。さまざまな不透明要素が出て、投資家の間に気迷い感が強まり、それが大きな価格変動となって表れているのでしょう。

 ここで注意したいのは、金融危機後の7年間は、世界市場は緩やかに上昇を続けていたという事実です。この間、価格変動率が大きくない相場が続きました。今年になってからの変動率は、歴史を振り返ってみても、それほど大きいわけではありません。過去7年間が穏やかな値動きだったために、フレが大きいと感じている部分があるということです。

 この不安定な状況が落ち着くためには、現在の不透明な状況が明確になってくることが必要です。主要国の金融政策がはっきりすること、また、中国経済が消費やサービス業主導の経済に転換していくことの確認などが必要だと思います。

 ――日本では2月16日から日銀による「マイナス金利」政策が実施に移されました。日本では初めての経験ですが、すでに先行してヨーロッパではマイナス金利が導入されています。マイナス金利政策を受けて、どのような変化が現れるのでしょう? その中で投資家に必要な備えとは?

 マイナス金利を導入したのは日本が初めてではありませんが、中央銀行の意図していることは、銀行に滞留している資金を投資に向かわせ、投資資金によって経済を活性化させようということです。

 ただ、中央銀行の政策判断と投資家の投資行動を、関連付けする必要はないと思います。

 たとえば、十分に分散されたグローバル債券のポートフォリオを保有している場合、マイナス金利の国々は、ポートフォリオ全体の一部に過ぎません。また、マイナス金利になっても、そこから一段と金利が低くなる可能性はありますから、金利低下(債券価格の上昇)がキャピタルゲインのチャンスになるという状況は、従来と何ら変わっていません。したがって、マイナス金利の導入が、ポートフォリオの組み替えなど、従来の判断を変更する直接のきっかけにはならないと思います。

 また、今回の日銀のマイナス金利は、日銀当座預金のごくわずかな部分に導入されたもので、マイナス金利の影響は限定的です。それでも株式市場などが大きく反応したのは、予測されなかったサプライズだったためです。

(下)へつづく
提供:モーニングスター社
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