揺るがぬREIT人気の陰で、じわり進む“資金逃避”―6月推計資金流出入
<国際債券型、為替ヘッジ付きの純資金流入額が3年4カ月ぶり高水準>
6月は、英国のEU(欧州連合)離脱(いわゆる「Brexit」)の是非を問う国民投票で予想に反して離脱派が勝利し、マーケットに“激震”が走ったにもかかわらず、モーニングスターの独自推計によると国内追加型株式投信(ETF除く)は2683億円の純資金流入となった。これで19カ月連続の流入超過となり、大分類別では「国際REIT型」が2232億円の純資金流入と、4カ月連続のトップを維持した。高利回りを求めた資金が海外REIT(不動産投資信託)に流入し続けている格好で、こうした動きだけを見ると、投資家がリスク回避の姿勢を強めているようには見えない。
しかし、Brexitの影響でマーケットの先行き不透明感がいっそう高まるなか、投信の資金動向においても一部ではリスクの低い資産に資金を逃避させる動きがじわり進行している。例えば、外国為替市場での急激な円高進行を受けて、為替ヘッジ付きファンドに投資する動きが出てきた。6月には、大分類の「国際債券型」に属するファンドのうち、「ヘッジあり」のファンドは418億円の純資金流入と、2カ月連続で流入超過となり、3年4カ月ぶりの高水準を記録した。「ヘッジなし」のファンドが同月に1075億円の純資金流出となったのとは対照的だ。
なお、「国際債券型」の「ヘッジあり」ファンドのうち、個別の純資金流入額上位では6月の新規設定ファンド「SBI−PIMCO ジャパン・ベターインカム・ファンド」が109億円、「東京海上・ニッポン世界債券F(H有)」が101億円、「UBS 世界公共インフラ債券円(毎月)」が98億円などとなった。Brexitの影響で米追加利上げの時期が後ずれする公算が高まっており、引き続きドル安・円高圧力がかかると見られることから、今後も為替ヘッジ付きファンドの人気が高まると予想される。
<「ヘッジファンド」に旺盛な資金流入も、ファンド選びは吟味が必要>
もう1つ、投資家によるリスク回避の動きとして興味深いのがヘッジファンド戦略を用いるファンドへの資金流入だ。こうしたファンドが分類されるモーニングスターカテゴリー「ヘッジファンド」は6月に546億円の純資金流入となり、全カテゴリーのうち「国際REIT・特定地域(為替ヘッジなし)」に次ぎ第2位となった。「ヘッジファンド」が500億円以上の純資金流入額を月次で記録したのは5年1カ月ぶり。6月は同カテゴリーの純資金流入額のうち、新規設定ファンドである「マクロ・トータル・リターン・ファンド」が481億円の純資金流入と大半を占めることから、ヘッジファンド全体に資金が流入しているとはまだ言えないものの、今回の新規設定に対する需要の強さは注目に値する。
もっとも、ヘッジファンドの特徴の1つは、市場環境にかかわらずプラスのリターン確保を目指す「絶対収益型」の戦略を用いることだが、必ずしも投資家の期待通りのパフォーマンスを達成しているわけではない点は注意したい。参考までに、2016年5月末までの主要資産の過去1年間のトータルリターンを見ると、「ヘッジファンド」はマイナス9.06%と、「国際債券」のマイナス10.04%をわずかに上回る程度で、「国内債券」の5.02%を大きく下回っている。
国内追加型株式投信(ETF除く)のカテゴリー別の信託報酬等(税込み)平均を見ても、5月末時点では「ヘッジファンド」が1.70%と、「国内債券・中長期債」の0.41%に比べてかなり割高だ。ヘッジファンドへの投資を検討する際は過去のパフォーマンス、特に相場変動時の実績を考慮し、コストに見合った運用成績を達成しているか吟味することが重要となろう。
提供:モーニングスター社
6月は、英国のEU(欧州連合)離脱(いわゆる「Brexit」)の是非を問う国民投票で予想に反して離脱派が勝利し、マーケットに“激震”が走ったにもかかわらず、モーニングスターの独自推計によると国内追加型株式投信(ETF除く)は2683億円の純資金流入となった。これで19カ月連続の流入超過となり、大分類別では「国際REIT型」が2232億円の純資金流入と、4カ月連続のトップを維持した。高利回りを求めた資金が海外REIT(不動産投資信託)に流入し続けている格好で、こうした動きだけを見ると、投資家がリスク回避の姿勢を強めているようには見えない。
しかし、Brexitの影響でマーケットの先行き不透明感がいっそう高まるなか、投信の資金動向においても一部ではリスクの低い資産に資金を逃避させる動きがじわり進行している。例えば、外国為替市場での急激な円高進行を受けて、為替ヘッジ付きファンドに投資する動きが出てきた。6月には、大分類の「国際債券型」に属するファンドのうち、「ヘッジあり」のファンドは418億円の純資金流入と、2カ月連続で流入超過となり、3年4カ月ぶりの高水準を記録した。「ヘッジなし」のファンドが同月に1075億円の純資金流出となったのとは対照的だ。
なお、「国際債券型」の「ヘッジあり」ファンドのうち、個別の純資金流入額上位では6月の新規設定ファンド「SBI−PIMCO ジャパン・ベターインカム・ファンド」が109億円、「東京海上・ニッポン世界債券F(H有)」が101億円、「UBS 世界公共インフラ債券円(毎月)」が98億円などとなった。Brexitの影響で米追加利上げの時期が後ずれする公算が高まっており、引き続きドル安・円高圧力がかかると見られることから、今後も為替ヘッジ付きファンドの人気が高まると予想される。
<「ヘッジファンド」に旺盛な資金流入も、ファンド選びは吟味が必要>
もう1つ、投資家によるリスク回避の動きとして興味深いのがヘッジファンド戦略を用いるファンドへの資金流入だ。こうしたファンドが分類されるモーニングスターカテゴリー「ヘッジファンド」は6月に546億円の純資金流入となり、全カテゴリーのうち「国際REIT・特定地域(為替ヘッジなし)」に次ぎ第2位となった。「ヘッジファンド」が500億円以上の純資金流入額を月次で記録したのは5年1カ月ぶり。6月は同カテゴリーの純資金流入額のうち、新規設定ファンドである「マクロ・トータル・リターン・ファンド」が481億円の純資金流入と大半を占めることから、ヘッジファンド全体に資金が流入しているとはまだ言えないものの、今回の新規設定に対する需要の強さは注目に値する。
もっとも、ヘッジファンドの特徴の1つは、市場環境にかかわらずプラスのリターン確保を目指す「絶対収益型」の戦略を用いることだが、必ずしも投資家の期待通りのパフォーマンスを達成しているわけではない点は注意したい。参考までに、2016年5月末までの主要資産の過去1年間のトータルリターンを見ると、「ヘッジファンド」はマイナス9.06%と、「国際債券」のマイナス10.04%をわずかに上回る程度で、「国内債券」の5.02%を大きく下回っている。
国内追加型株式投信(ETF除く)のカテゴリー別の信託報酬等(税込み)平均を見ても、5月末時点では「ヘッジファンド」が1.70%と、「国内債券・中長期債」の0.41%に比べてかなり割高だ。ヘッジファンドへの投資を検討する際は過去のパフォーマンス、特に相場変動時の実績を考慮し、コストに見合った運用成績を達成しているか吟味することが重要となろう。
提供:モーニングスター社