株式や為替が不透明でボラタイルになるほど輝きを増す「金」、マイナス金利で国内金融機関にも需要拡大

 英国のEU離脱(Brexit)決定から、世界の株式市場や為替市場が再び不安定になっている。市場は「リスク・オン」(ドル高・円安、株高など)、「リスク・オフ」(ドル安・円高、株安など)を繰り返し、価格変動率も大きくなっているが、その中で金(ゴールド)を中心とした貴金属に注目が高まっている。同じコモディティー(商品)でも原油は世界景気の見通しで価格が左右される側面が強いが、貴金属はその希少性が裏付けとなって、市場の不透明さが高まるほど、その存在が輝きを増すようだ。

 金の需要動向などを調査しているワールド・ゴールド・カウンシルによると、16年第1四半期(16年1−3月)に金ETF(上場信託)への資金流入が363.7トン相当額に達し、09年第1四半期以降で最高を記録した。金ETFへの資金流出入は、13年第1四半期から連続して資金流出の状態が続いていたこととは対照的な動きになっている。16年は年初から中国株価の急落などによって中国経済の先行きが懸念され、原油価格が大きく下落するなど世界経済の先行きに不透明感が高まったことが背景と見られている。4月以降にも金ETFへの需要は欧州を中心に需要が顕著だという。

 日本においても、金関連の投信に資金流入が進んでいる。たとえば、「三菱UFJ純金ファンド(愛称:ファインゴールド)」(三菱UFJ国際投信)<2011020701>(★★★★★=評価基準日:6月30日)は15年12月末に純資産額が約47億円だったが、16年6月末には約59億円に25%以上増加した。同ファンドの実質的な投資先になっている純金上場信託(現物国内保管型)<愛称:「金の果実」><1540.T>は、16年7月4日現在で残高が476億円と、15年1月20日現在の312億円から50%以上増加している。10年7月の上場時20億円からは23倍以上になった。

 「金の果実」の管理会社である三菱UFJ信託銀行の執行役員フロンティア戦略企画部長の星治氏は、「『金の果実』は金庫に金地金を納品するとともにETF証券を発行する手続きをとるが、16年になってから、1回あたりの追加の発行額が10億円を超える日もあり、投資信託やETFを通じた金の購入が活発なことを実感する」という。

 そして、「年初来から内外の不安定なマーケット環境下、金のETFに関して、地域金融機関からの照会が増えてきたうえ、実際に『金の果実』に投資を始めた金融機関も増加している。『金の果実』は円建ての金を裏付け資産にしているため、価格変動率が比較的低い点に注目されている可能性がある。また、金価格は伝統資産の収益率との相関が低い点も、改めて見直されているのではないか。国内債券との相関係数(直近10年)はマイナス0.04、国内株式とは0.15だ。世界の市場でボラティリティー(価格変動率)が高まる中で、保有資産の分散先のひとつとしてのニーズは根強い」と、金ETF需要の高まりを分析している。

 また、貴金属ETFについて星氏は、「2015年以降に純資産残高の伸びが最も大きいETFは、純プラチナ上場信託(現物保管型)<愛称:「プラチナの果実」><1541.T>だ。プラチナは金よりも希少性が高く、価格が高いのが一般的だった。ところが、ディーゼルエンジンの触媒で使用されるプラチナは、ディーゼル自動車の多い欧州の景気の不透明さを反映して、価格が低迷。2015年以降は、プラチナが金よりも割安という事態となった。この点に着目した投資家の方が多いと思われ、『プラチナの果実』の需要が拡大。純資産残高は過去1年間で20億円程度から約5倍の100億円超になった」と、貴金属ETFへの需要は金に限らず伸びていると語っている。
提供:モーニングスター社
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