ファースト イーグルの一貫した投資哲学、調査責任者のマット・ランフィア氏に聞く

 米国で「伝説」と形容されるほど、長期にわたり優れた運用実績を残す「ファースト・イーグル・グローバル・ファンド」。約37年の運用実績があり、年率リターンは13.43%(米ドルベース)。米モーニングスター格付けで米ドル建て運用成績が★★★★★(最高格付け)と高い評価を得ている。その運用の核心ともいえるファースト イーグル インベストメント マネジメントのリサーチ部門を率いる調査責任者、マット・ランフィア氏に銘柄選定のポイントについて聞いた。

 ――「ファースト・イーグル・グローバル・ファンド」は、バリュー投資に徹し、企業の本源的価値(現実的なリターンを期待し、ある程度知識のある投資家が、今日、そのビジネスを現金で買収する時に支払う金額)よりも十分に割安にある銘柄に長期投資をしている。「本源的価値」を判断する上で、重視している指標は?

 企業の本源的価値を測るための指標は一つではなく、さまざまな指標を組み合わせて割安度を判定している。たとえば、EV/EBIT(営業利益倍率)という指標のEV(企業価値)は、「株式時価総額+純負債(有利子負債−現預金)」という公式で表され、事業を行うために企業が持っているすべての資金を意味している。

 EBIT(支払金利前税引き前利益)は税引き前での本業の利益を表すので、営業利益と言い換えられる。すなわち、営業利益を稼ぎ出すために、企業がどの程度の資金を使っているかを示す指標で、全業種の平均は10−12倍といわれている。当ファンドでは6−8倍の銘柄を選んでいる。

 本源的価値を判断する指標は、業種によって重視する指標が異なる。また、事業の質によって、どの程度の水準が適正であるかも判断している。たとえば、EV/EBIT(営業利益倍率)はクオリティーが高くないビジネスであれば6倍が適正ともいえるし、グローバルに長期にわたって収益を伸ばしている企業では15倍が適正といえる場合もある。

 企業価値を測る指標の適正な水準は、企業によって異なる。「安全マージン(予期せぬ事態が生じても、回復不可能な損失を回避できるよう、十分に割安な水準で投資を行うこと)を重視し、本源的価値を上回ったら売却する」が大切だ。このことに例外を設けない投資を貫いている。

 ――長期に投資する企業の見分け方は?

 基本的に5−10年の期間で投資するため、少なくとも5年以上は安定的な業績が期待できる企業を選んでいる。ただ、投資した企業が必ずしも成長し続けなければならないというわけではない。たとえば、アメリカの防衛関係の会社は、防衛予算に限度があるため、決して成長企業ではない。しかし、向こう5−10年の間に安定したキャッシュフローを生み出すことができ、生み出したキャッシュフローを投資家に還元するという考え方を持っている。成長しなくても、キャッシュフローを着実に生み出す企業には投資する価値があると考える。

 もちろん、5−10年にわたって成長が期待できる企業にも投資しているが、企業成長が投資判断のすべてではない。一見魅力のない企業でも、割安でキャッシュフローをたくさん生み出す企業であればリサーチし、5年以上にわたってキャッシュフローが期待できると判断すれば、投資対象になる。

 ただし、負債が大きい企業は基本的に投資しない。また、経営陣が信頼できない、ディスクロージャーが不十分で事業内容が分からない企業にも投資しない。「理解できない会社には投資しない」ということは徹底している。

 ――バリュー投資は忍耐力が必要な投資手法といえるが、なぜ耐えられる?

 たとえば、1980年代後半、日本のバブル時代には日本株に投資しなかった。1990年代後半のITバブル時代にもIT関連に投資しなかった。そして、2006年をピークとする金融バブルの時にも、高レバレッジ化、財務諸表の複雑化が進んだ銀行・証券会社には一切投資しなかった。このため、その後のバブル崩壊の悪影響を避けることができた。このような経験の積み重ねが、投資哲学への信頼を深め、信念になっている。

 ――現在の投資環境は、バリュー投資家にとってどのような環境?

 一言でいうと、世界中の中央銀行が金融緩和、低金利策をとっている現状は、ほとんどの株式が割高になっているため、バリュー投資家にとって難しい環境といえる。ただ、部分的に割安な市場もある。現在の環境は、どのようなスタイルで運用していても、決して簡単な市場ではないが、引き続き一貫した投資スタイルでチャンスに備えたいと考えている。
提供:モーニングスター社
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