AIの活用でパフォーマンス向上、進化するゴールドマン・サックスの「ビッグデータ・ストラテジー」

 ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントは12月19日、AI(人工知能)を活用したビッグデータ解析を組み入れ銘柄選定に活用する新ファンド「GSビッグデータ・ストラテジー(外国株式)」を設定する。販売はSBI証券。同ファンドの特徴について、同社の計量運用部長、内山雅浩氏に聞いた。

 ――ビッグデータを活用した運用とは?

 当社の計量投資戦略グループは、1989年からクオンツ運用(数量的な分析に基づく運用)を開始し、2008年に会計、経済数値以外の大量の情報も含めたビッグデータを活用した運用モデルを導入した。

 クオンツ運用開始から約30年、ビッグデータやAIの活用開始から10年間にわたって、新しい投資アイデアの発掘・検証・採用などを不断に行ってきた。計量投資戦略グループは、2017年9月末現在で27名のポートフォリオ・マネジャー、19名のストラテジスト、43名のIT技術者を抱える技術者集団の側面も持っている。

 新しいアイデアは常に30−40が検証され、明確な有効性が実証されたアイデアのみが取り入れられている。ビッグデータを取り入れはじめてからも進化し続け、2008年当時の運用モデルと現在のモデルは、大きく違うものになっている。

 ――運用モデルの改良の目標は?

 モデルの陳腐化を防ぐとともに、前のモデルよりもリスク調整後リターンを向上させる。ベンチマーク(MSCIコクサイ、日本を除く先進国株式)に対し、より高いリターン、または、よりリスクを抑える効果がある新しい投資アイデアを追加している。

 投資アイデアは、グローバルで使うことを念頭に考えるものと、特定の国や地域専用に開発するものがある。各国市場の特性、また、得られる情報の種類や量によってモデルの有効性に地域差があることが分かっている。国や地域に合わせて、もっとも優れた効果を発揮するモデルで運用していることが特徴のひとつだ。

 同じ運用手法でMSCIコクサイをベンチマークに機関投資家向けに提供しているファンドは、2002年9月から運用実績があるが、2012年頃にビッグデータやAIを本格的に導入して以来、ベンチマークを明瞭にアウトパフォームし始め、2017年9月末現在で過去5年の騰落率はベンチマークが151%に対し、当ファンドは203%だ。

 ――具体的な投資プロセスは?

 先進国株式(日本を除く)について、日々最新のビッグデータや市場・業績データに基づいて、独自のMVP(モメンタム/バリュー/収益性)モデルを適用して投資魅力度を判定している。

 たとえば、「モメンタム」基準のひとつである「アナリストレポートの分析」は、年間120万本以上のレポートについて自然言語処理技術を利用してリサーチ・レポートの文章の変化からアナリストの意図をくみ取り、将来のレーティング変更を先取りするようなことができる。

 あるいは、「企業ウェブサイトの閲覧ページ数」など従来は投資判断の材料として使われていなかったデータも、そのトレンドと企業収益との関係の分析によって、投資判断材料のひとつになった。

 大量の企業に対して合計数百もの評価基準一つひとつからみたスコアを付け、全スコアの加重平均によって総合的な魅力度を判定。リターン予測、リスク推定、取引コスト推定によるポートフォリオの最適化を行っている。

 ただし、100%システム任せにせず、最終的にはポートフォリオ・マネジャーの判断を活かす余地を残している。Brexit(英国のEU離脱)決定や米大統領選挙などの当日は、人の判断によって、どちらの結果にも中立になるようなポジションを取った。

 ――どのような投資目的で使えば良い?

 リスクを抑えてベンチマークを安定的に上回ることをめざし、ジワジワと超過収益を積み重ねていく運用イメージだ。インデックスファンドは、手数料(信託報酬)分はインデックスに負けるが、計量投資戦略モデル運用はインデックスを上回る運用成績を残している。リスク水準は、より抑えているので、インデックス投資に代わる選択肢の一つに考えていただけると思う。

 ビッグデータやAIを活用した運用は、ビッグデータの処理に適した大規模なテクノロジー・インフラ、膨大なデータの購入、また、優れたIT専門人材の処遇など、通常のファンド運用とは異なるコストを負担しなければならない。一方、スケール・メリットを享受できるため、ファンドの信託報酬は税抜年率1.23%に設定している。ビッグデータ活用の運用経験と合わせて強力な競争優位性になっていると思う。
提供:モーニングスター社
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