日米経済、米中貿易戦争の先行きを占う=インベスコ グローバル・マクロ・セミナー(2)

(1)からつづく

 インベスコ・リミテッドのチーフ・エコノミストであるジョン・グリーンウッド氏、同社チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジストのクリスティーナ・フーパー氏の講演に続いて、「今後の世界と日本の経済動向、そして金融市場を占う」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストは講演を行った両氏のほか、JPモルガン証券・株式調査部チーフ株式ストラテジストの阪上亮太氏を招き、インベスコ・アセット・マネジメント取締役運用本部長兼CIOの小澤大二氏がモデレーターを務めた。

 まず、阪上氏が今後の世界経済について、「2019年は景気拡大の状態を維持するものの、2020年は景気後退のリスクがある」との見通しを示し、その根拠として、米国のイールドカーブが逆イールドとなった後は景気が後退する確率が高いという経験則がある中で、逆イールドに近づいていることなどを挙げた。

 さらに、日本について、2019年10月に予定されている消費税率引き上げにより「2019年に世界に先んじて景気後退に入るリスクがある」と指摘した。阪上氏は、税率の引き上げ幅が2%と小幅であるほか軽減税率の適用があることなどから、消費税率引き上げ自体が日本経済に及ぼすインパクトは限定的との見方を示した。一方、1997年の消費税率引き上げを例に出し、今回と同様に税率引き上げ幅が小幅で大きな影響がないと予想されていたにもかかわらず、その後、世界的な景気減速が重なったことから、結果的に消費増税が景気後退の入り口となったとし、「消費増税のタイミングと2019、2020年の世界経済を考えると、同様の事態に陥るリスクは十分にある」との見方を示した。

 続いて、先の講演で「米国の景気拡大は今後2−3年間は続く」との見通しを示したグリーンウッド氏が発言し、「(景気後退のきっかけとなる)中央銀行の引き締めによる信用の縮小や、リーマンショックのような出来事による信用市場の混乱が起こる可能性が現在は見られない」ほか、「インフレ率も想定を下回っている」として、「(米国経済は)成長を続ける」との見方を改めて示した。

 その後、テーマは米国との貿易戦争を含めた中国経済に移り、小澤氏から「どういう形で終息するのか」という質問がパネリストに向けられた。

 フーパー氏は、「貿易戦争は2国間協定により解決しようとするとかなり時間がかかるものだが、現状は米国の政治状況に大きく関わっている」として、「長くとも米トランプ政権の時期まで」との見方を示した。グリーンウッド氏も「継続している限りは米中にマイナスの影響をもたらすのは確かだが、米中の関税問題は短期的な問題」との見方を示し、さらに、1970年代の日米貿易摩擦が日本の技術水準の向上と高付加価値製品への移行をもたらしたとして、米中貿易戦争により、中国製品の高付加価値化が加速するとの見方を示した。

 阪上氏は、米中の関税の応酬について、「互いの経済が疲弊するので、ともに取り下げる可能性は十分にある」としつつも、「米中問題は覇権争いの側面が強い。米国は保護貿易を志向しているわけではなく、中国に圧力をかける手段の一つとして関税を使っている」として、「あくまでも一時休戦で、根本的な終息には相当時間がかかる」との見方を示した。さらに、中国経済については、「高度成長から安定成長の段階へ入り、成長率がスローダウンしやすい中で、対外的なプレッシャーがかかり、思わぬ混乱が起こるリスクがある」と指摘した。

 最後に、今後資金を資産に振り向ける際の考え方に関する質問がなされた。フーパー氏は、「現在はサポーティブなマーケット」であり、「今後ボラティリティが上がり、アクティブ運用に対してチャンスが出てくる」として、株式、債券ともに様々な選択肢があるとの見方を示した。阪上氏は、景気後退が意識される中で「株価全体が上昇する局面は終わりに近づいている」と予想。加えて、金融緩和の状態も終わりに近づいていることから「これまで資金が向かっていたところは危ない」と指摘し、指数全体の拡大局面が終わる中で、「来年はアクティブ運用の腕の見せ所」との見方を示した。

 グリーンウッド氏は通貨の見通しを聞かれ、「ドル高は今後も続く。投資家が米国の利上げが終わると見るまでは続くので、今後1年は続く。先進国通貨に対しても新興国通貨に対しても続く」としたほか、新興国通貨については、「韓国、台湾などの製造国や東欧のハンガリーなどはバランスシートもしっかりしており、先進国通貨に対して売られることはない。半面、経常赤字の大きな国や資源国は通貨安になりやすい」との見方を示した。
提供:モーニングスター社
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